魔王直属第251小隊 その2 激闘モード
魔王直属第251小隊…通称ハーレム小隊。男にとっては夢のような状況でも戦場に来れば、ただのお荷物。しかも、自分は彼女らどころか、自分の命すら守れない名前だけ「魔王」30万のカオス軍にどう立ち向かえというのじゃ~。
俺たち魔王4人と2人の正妃、16人の側室が魔界に入ったのは1週間前。多くの国民に出迎えられ、魔界の大貴族の面々と天界からの来賓でごった返す中、将帥の儀式なるものを体験した。その儀式に魔王の城デビルパレスに鎮座する破壊神ヴリドラの像に右手を突っ込むと、その主の能力を即時に読み取り、率いる兵力の総数と配属される軍団が像から告げられるのだ。どんな仕組みになっているのか?と疑問に思っていると、まずは第1側室であるリィ・アスモデウスから始まった。
「リィ・アスモデウス様。1万2千!」
「おおおおおおっ…」
と歓声が上がる。側室で1万越えはめったにないらしく、前魔王の側室イセル・バールが同数だったこともあって、リィへの期待に大歓声が起きる。しかも彼女の場合、大貴族アスモデウス家の私兵も加わり、率いる兵数は1万6千人と側室の中では最大規模の軍を動かすことになった。次は第2側室のエトランジェ・キリン・マニシッサ。兵数は1万。これに天界からの義勇兵が加わり、1万4千人。第3側室源満天は9千(彼女の場合は人間出身なのでプラスなし)、第4側室ファナ・マウグリッツ8千。これに以前からファナを慕う義勇兵が加わり1万2千…と次々と発表されていく。
そして16人目の側室が呼ばれた時、俺は凍りついた。
「雪村美国様」
「えっ?」
15位の中村杏子までは俺の知っている人物が次々呼ばれた。確かに雪村美国も知ってはいるが、単なる後輩(俺のことを慕ってはくれているようだが)で、俺は何もしていない。
だが、儀式官吏の容赦ない恐ろしい紹介がデビルパレスに響く。
「美国様はイレギュラーの魔王様の側室でいらっしゃいます!」
「え?えええええええええっ?」
俺は思わず叫び声をあげる。同時に俺の傍らで腕を組んでいた正室の立松寺華子が、左足のヒールのかかとで俺の右足をグイと踏みつける。顔はニコニコしていたが、小声で俺に
「土緒くん、これはどういうこと!」
「いや、俺は何も…」
「リィやファナやカミラはともかく…」
(あいつらは魔界女だから…)
俺は心の中で立松寺のセリフにフォローしたが、人間界の女の子には手を出さないという彼女との約束を破った格好になっている状況に慌てた。だが、俺自身は美国ちゃんについては潔白だ。どう記憶を検索しても彼女とキスしたことはないし、ましてやエッチなことなんてしてない。断言する…といったところで、彼女が側室として紹介された以上、立松寺に誤解を解く方法が見つからない。
当の美国ちゃんは、キョロキョロとあたりを見回し、俺を発見すると可愛く手を振る。
(やめてくれ~)と心で叫んだが右手は反射的に反応した。
立松寺の足に力が入る。
「痛!」
思わずしゃがみこんで足に息を吹きかける。だが、美国ちゃんの一件はまだ災難の序の口であった。魔界に来てからも女難の相が続く。
側室の次は正室。一応、姉貴にあたる土緒夏妃は2000名と正妃にしては異例の少なさであったが、配置された部隊は治癒を担当する衛生兵部隊で彼女の能力からすると好都合であり、俺の正妃立松寺は1万5千の数字を叩きだし、元魔王の正妃を母に持つということもあって、5千の義勇兵が集い、これも破格の大軍を指揮することになった。魔王並みの兵力を有するので、立松寺は魔界の民から妃殿下元帥と呼ばれることになる。そして最後に魔王。隆介と元馬が2万、宗治先輩が3万と告げられたあと、俺が手を突っ込むとヴリドラ像がうめき声をあげた。
「ムムムム・・・」
前代未聞の出来事に参加者一同、あっけにとられる。しばしの沈黙の後、告げられたのは
例のハーレム小隊。ヴリドラ像の指示であったので、特別に後宮から選ばれた美少女で急きょ編成されたが、居並ぶ参加者からは影で笑われ、バカにされているに違いない。立松寺はさすがにバカにはしなかったが、配属された部隊が美少女小隊であったので、一言、
「あなたらしいわね」
といったきり、顔も見ずにこの戦場の出撃している。俺の方から謝るべきか…とも思ったが、美国ちゃんの件は完全に誤解だし、ましてやハーレム小隊については完全に俺の過失は0である。勝手に決められただけで、そんな願望もない。いや、もしかしたら心の底にこんな願望があってそれが具現化したのかもしれないが、それでも魔王の権力を使って決めたわけでもない。わずか30人でしかもか弱き美少女30人で30万もの敵軍と相対するのには割に合わない。
しかも、このハーレム小隊。配属初日から、侍従長のロレックス嬢から、
「魔王様、わたくしたち30人。敬愛なる魔王様に誠心誠意お仕えいたしますが、Hなご命令だけはNGです。妃殿下及び側室様方に非礼にあたりますから…」
と言われて、かなりのご奉仕されても彼女らの乳を掴んだり、お尻を撫でたり、スカートをめくるなんて悪ふざけはできなくなった。もし、やったら即、侍従長から立松寺やリィたちに報告が上がるらしい。これでは蛇の生殺し…状態と言う奴だ。リィは、
「これは夏、お前にとって試練だな」
「試練ってなんだよ」
「女好きのお前に女で失敗しないよう鍛錬を積めと言うことだろう」
「女で失敗って…俺は失敗したのか?」
「ああ、確かに私に対しては失敗してない。いつもわたしを満足させてくれているわ。その点に関しては、修業は十分積んでいるな私の魔王殿は」
そういって自分の爆乳をぐいぐい俺に押し付けてくるリィ。
(くそ!負けるな俺の理性!)
と言い聞かせるが、ハーレム小隊で十分アップ運動済みの俺の体はリィに迫られるとあっという間に臨戦態勢に入ってしまった。
とまあ、話は逸れたが、そういった出来事があって今、カオスとの戦場に来ている。