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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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うさぎの笛 その2

 カミラちゃんのお屋敷は、電車で1駅行ったところにある。駅からもよく見える小高い森の中に屋根が見える古い洋館だ。以前潜入した時には、正面玄関は使わなかったが、今回は大きな鉄製の門でボタンを押し、開いてもらってからたどりついたので、すでにカミラちゃんが玄関扉の前で待っていた。


「みくに~久しぶり!」


そうだ。カミラちゃんとは、以前に彼女が気絶して夏先輩が保健室から運び出して以来である。軽い貧血ということだったが、あれから姿を見なかったし、カミラちゃんの携帯番号を知らなかったこともあって、会うのは久しぶりである。


「カミラちゃん、体の方は大丈夫?」


私は心配そうに彼女を見たが、見る限り、以前よりも健康そうだ。血の気のない白い顔は赤みがまし、何だか生き生きとしている。それより、前は子供っぽい雰囲気がありありだったのに、何だか色っぽい気配がある。


「体は大丈夫よ。それより、私、変わったと思わない?」


そう言って、カミラちゃんはくねくねと体をくねらした。


(う~ん。変わった?と言われれば変わったかもしれないが、どこが…と言われても分からないのが正直なところだ。)


「う~ん。分からないけど…」


そう言って、お茶を濁す私。


「もう、みくにったら!」


怒った風でもなく、カミラちゃんは私を軽くたたく。


「みくに、私ね。女になったの」


(えっ?女?だって、カミラちゃん、元々、女の子じゃ…)


そう思った時に急に(かあーっ)と顔が真っ赤になった。女の子が「女」になったということは、そういうことだ。


「相手はだれ?」


私は興味津々で尋ねる。そりゃそうだ。友達が「経験」したとなると根ほり葉はほり聞くのが友達というもんだ。


「ふふふ…それは…」


カミラちゃんは、思わせぶりなことを言う。だが、ここで私は先ほどのタキシードウサギのことを思い出した。あのライオネル3世とかいう奴は、夏先輩が魔王で、カミラちゃんはその愛人(側室)などと言っていた。その言葉とカミラちゃんの態度が一致する。


「ねえ、カミラちゃん。夏先輩が魔王って本当?リィ先輩やカミラちゃんが愛人というのも本当?」


カミラちゃんの目が急に険しくなり、私の右肩をにらみつける。


「だれかと思えば、ライオネル3世じゃない。みくにに憑りつくのは止めなさい」


私の肩に例のウサギが現れる。


「カミラ様…憑りつくなんて言葉がお悪い」


「だってそうでしょ。せっかくみくにが覚醒してもあんたが守護精霊なんて、能力がたりなくてがっかりだわ」


「カミラ様。私たちの実力を知りませんね」


「知ってるわよ。伝説のウサギの笛から呼び出されるウサギ群でしょ。でも、過去にその所有者の側室はほぼ無能。ただ魔王様に守られるだけで終わった例しかないわ。みくにも大切な魔王様のお役に立てないのはかわいそうよ。あなたが離れれば、みくにもまともなウェポンを召還できるわ」


「と言われても、彼女は我々に選ばれた貴重な側室候補なのです」


カミラちゃんとライオネル3世の会話がよく分からない。分かるのは私が側室候補ということ。ということは、私も夏先輩の「愛人?」ということになる。


カミラちゃんに聞いた話は、とても信じがたい話であった。でも、ライオネル3世みたいな現実にはありえない生き物を見ると信じざるを得ない。タキシードウサギに選ばれたということは私は伝説のウェポン「ウサギの笛」の所有者であり、自動的に魔王の側室になるということらしい。


元々、側室は魔王に選ばれ、愛されることで「覚醒」する。覚醒した側室は、自分専用の特殊な力を秘められた武器ウェポンを持つ。事実、カミラちゃんのウェポンは「ヘルゲの剣」という細身の長剣であった。ところが、魔王に愛されなくても側室になれる方法が一つだけあった。ウェポンの方から選ばれた女の子の場合は、魔王の意志とは無関係に側室となる。


この場合、寵愛を受けないと本来の力は出ないが、選ばれたウェポンが強ければ、側室としての職務(魔界での側室の役割は、単なる愛人ではない。一軍を率いる将軍であり、単騎で敵の将と一騎打ちを行う戦士である。)を果たすことができる。


だが、伝説のウェポンと呼ばれる「ウサギの笛」というのがクセ者であった。それは後日分かることだが、とにかく、私も夏先輩の側室になれるということだ。


 何だかよく分からないが、数日後、私もカミラちゃんと共に魔界へ行くことになる。

夏先輩にとっては、禁断の人間出身の側室…第1号!正室である立松寺先輩の恐怖のお仕置きが待っているなどとは…のんきな私としては考える余裕がなかった。


そう側室として、夏先輩の傍にいられるだけではなく、カオスとの激しい戦いに赴かねばならないことすらも…まったく考慮していなかったのだ。


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