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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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スバルと共に その1

100mを走り終えて、宮川スバルは両手をひざに置いて息を整える。隣で走っていた同じ部員の友人も息を整えていたが、グランド端に腰かけている男子生徒を見つけて、スバルの腕を突っついた。


「ねえ、スバル、見てよ。今日も来てるわよ」


次に走ってきた別の友人もいつの間にか後ろに来ていて、


「スバルちゃん、うらやましいなあ…あの御曹司に見初められて」


「見初められてなんかいないわ」


スバルはちょっとムッとして言い返したが、友人たちはいつものように自分と元馬をネタにして会話をはずませる。


「スバルったら、チャンスよ。元馬くんと結ばれれば、源グループの総帥夫人よ。セレブな生活が待ってるのに」


「元馬くんだって、熱血で暑苦しいところもあるけれど、女の子には優しいって話だし、顔だって結構いい線いってるし…」


「じゃあ、あなたが付き合えばいいじゃない」


「もう、またあ、スバルは話をはぐらかす。いい加減、返事をしてあげたら?」


「告白されてうれしくないの?スバル?」


そりゃあ、誰だって告白されたらうれしいものだ。スバル自身、初めて男の子に真剣にコクられたのだから悪い気はしない。だが。元馬はこともあろうに、自分は「愛人」として…好きだ!ときたもんだ。


(夏妃さんが一番で、なんで私が2番なの!)


いや、そういうことではない。例え、自分が一番で夏妃が二番でも同じことだ。


(どうして、二人なの?)


本当はアレクサンドラに妹の満天まで侍らしているのだから、(満天は妹だから、あくまでも妹として仲良くしているだけだが)それをスバルが知ったら頭が爆発してしまうかもしれない。


(それにしても…)


元馬は毎日毎日、自分の練習を見学して、終わりがけにスポーツドリンクを差し入れして帰る。実にスマートでかっこいい。付きまとうわけでもないし、自分の友人にも話しかけてごく自然にふるまっている。彼が自分に告白したことは部員には広まっているので、愛しの彼女にアプローチしている健気な男の子を演じている。スバルは告白されたけど、返事はしていないと認識されているらしく、友人たちは不器用なスバルが恥ずかしがって、はっきりしないから、元馬を応援してくっつけようという雰囲気なのである。


練習が終わって部室に戻ろうとすると例のごとく、元馬が話しかけてきた。


「ようスバル、今日は動きにキレがなかったな。スタート時の右足の蹴りがいつもより五センチ少なかったぞ」


ドキッとした。確かに今日は体が重く感じ、タイムもいい数値はでなかった。だが、そんなこと見ていれば分かることだ。但し、相当よく見てないと分からないことだが…。

スバルの顔が赤くなった。


(見てって、何言ってるの私。元馬くんが私ばかり見てるっからって、私は嬉しくない)


「ちょっと、元馬くん。話があるの。来て…」


「おう!」


だが、そんな二人を興味津々で見守る友人、部員一同の視線を感じて、スバルは前言を撤回した。


「いや、今じゃなくて。今日、一緒に帰りましょう」


「えっ?いいのか?」


元馬は思いがけないスバルの一言で、バッと顔に明るさが戻った。


(な…なによ、この男、うれしそうに。私ははっきり断りたいから、話をする機会を設けたいだけで…いや、そうか、一緒に帰るというのはちょっと誤解されるわよね)


スバルは自分の軽率さを反省したが、元馬も周りもこれはいよいよ、スバルも決心したか?と誤解するに違いない。


(いや、今日ではっきりさせる。というより、前回告白されたときに、ぶっ飛ばしたからあれが返事なのだが、この男は言葉で言わないと分からないのだ。あんたなんかと誰が付き合うもんですか!この浮気者!最低男!バカ!)


心の中で何度も罵りながら、スバルは帰り道、どうやって切り出そうか思案していた。それを知ってか知らないでか、元馬も黙って隣を歩く。駅について電車に乗る。元馬は帰るアパートは全然違う方向なのだが、スバルの話を聞くために彼女に付き合っているのだ。


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