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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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ファナの生い立ち その2

明後日の10時。俺はファナと約束した駅前の花時計の前にいた。腕時計を眺めてみたが、秒針が12時を超えてもファナはいない。だが、それが2の数字を超えた時にかすかに自分を呼ぶ声が聞こえてくる。


「殿下~…」


声のする方を見るとファナが駆けてくる。両手を軽く握って胸のところでリズミカルに交互に振る。いわゆるお嬢様走りで頑張って走っている割にはちっとも近づかない。


(こいつ、最初にあった時は超高速移動で現れたのに、わざとか…)


わざとやっていると思ったがファナの容姿でこれをやられるとドキッとしない男はいないだろう。それにファナときたら来ている服が乙女林高校の制服だ。おそらくリィあたりから借りてきたのだろう。パツンパツンのリィより幾分余裕で着こなしている。リィは違和感ある制服姿だが、意外にもファナはよく似合う。以前現れた戦闘ドレスが背伸びをしていたようで、21歳でも十分に女子高生に見える。


「ファナ、その制服、どうしたのだ?」


「ああ、ちょっと妃殿下からお借りした」


「えっ?」


「だから、妃殿下からお借りしたといったのだ」


ファナの奴、よりにもよって立松寺のところに泊まってしかも今日の服を借りたらしい。立松寺が私服じゃなく、はっきりと分かる制服(なんと胸に立松寺というネームプレートがあるではないか!)を貸した意味を理解した。


ファナの背後に立松寺華子の幻影を見る。


「ふーん。そう。楽しそうね、土緒くん。ファナとデートしてさぞかし仲良くなるんでしょうね!せいぜい楽しんでちょうだい。だけど、報告はしてもらうわよ。もし、あとでファナに聞いたことと違っていたら…」


三角の目で俺をにらむ立松寺に俺は土下座をする。


(ごめんなさい、ごめんなさい…包み隠さず話します!)


「殿下?何してるのですか」


ファナがきょとんと俺を見る。俺はファナを見上げる。短いスカート(ファナの方が立松寺より背が高いから、当然ミニスカートになる)から、パンツがちらり…なんと!


(し…しまパン?)


いつものアダルティなファナの下着ではない。心臓がドキドキして俺の顔が赤くなる。


(ヤバい…どうしたんだ俺。ファナにときめいてどうするんだ)


「ふふふ。秋のアドバイスは効果覿面だな」


「効果覿面って?」


ファナは形のよい人差し指をすっと立てた。


「男を虜にするデート術、第1条。待ち合わせには少し遅れるべし!男は少し待たせた方が期待感を抱く。でも、待たせすぎは上級者レベル。初級者は男の到着後、10秒がベストだよ!」


「そして第2条。初めてのデートの勝負パンツは白パン、縞パンがベスト!」


(秋のアドバイスって?秋の奴、猫になんてことを教えるんだ!)


「どうしたのだ?殿下」


はあ~っとため息をついた俺にファナが心配そうに顔をのぞく。そういえば、周りの視線が痛い。そりゃそうだ。結構な制服美少女が息を切らして(殿下~)と同じ年くらい男の子を呼べば注目を浴びることは間違いない。


「あのな、ファナ。2人きりの時は「殿下」は止めてくれないか?」


「どうしてなのだ?魔王様には敬称で呼ぶのがマナーであろう」


「いや、今日のデート中に「殿下」では、周りが驚くだろう」


「そうか、デートの時は呼び方を変えるのがマナーというわけか」


「いや、そういうことではないが、男女は親しくなると呼び方が変わることはある」


「ほほう…。ファナは殿下と親しくなったから呼び方を変えろとの命令だな」


「命令じゃなくて…」


「では、ダーリン!」


「却下」


「ハニー?」


「却下」


「旦那様?」


「却下」


「じゃあ、ご主人様?」


「それなら殿下のがマシじゃ。夏でいい」


「夏?殿下を呼び捨てになどできない。せめて」


ファナは顔を赤らめ、両手を後ろに組んでモジモジと視線を下から上へと上げた。


「な・つ・く・ん」


ドキューン!俺のハートが撃ちぬかれた。これは反則だ。ちょっと年上のお姉さんからこんなシチュエーションで呼ばれたら17歳男子は一撃でメロメロになるだろう。


(かわえええ…かわいすぎるぞ!ファナ・マウグリッツ!)


俺は照れ隠しで咳を1つした。


「じゃあ、行くぞ、ファナ」


「はい。夏くん」


ファナが俺の左手に絡まってきた。


(待てよ…このことも立松寺に報告しなくてはならないのか?)


ゴゴゴ…と立松寺の幻影が頭に浮かんでくる。


(ふーん。な・つ・く・ん…か。私も呼んであげようか?夏くん)


(こええええ…)


背筋に冷たいものが走るが普段のファナとは違う新鮮さがその恐怖を打ち消した。まあ、今は可愛い女の子とのデートを楽しむことにしよう。


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