ドミトル討伐作戦 その2
約束の時間にカミラちゃんがいないので、私は心配になって校内を探していた。
(そういえば、カミラちゃん、人気がないところを聞いていたわね)
私は教えていた体育館裏の倉庫に向かったが、そこにもカミラちゃんはいなかった。
「一体、どこへ行ったのかしら?」
校舎に戻ってキョロキョロと探す。あんな変な格好の小さな女の子だ。注目されないわけがないから、聞けば手がかりはあるはずだ。私は廊下を歩く生徒に聞いて歩いたが、誰一人知らないと言った。
ふと見ると、幼馴染みの杉原良輔を見つけた。
(あいつなら、カミラちゃんを知っているし、何か知っているかも…)
「おーい、良輔!」
私は手を振って良輔に駆け寄る。駆け寄られた男の子の方は、何やら勘違いをして真っ赤な顔になる。が、近づいてくる女子はお約束のように足がもつれてバランスを崩した。慌てて手を差し出す良輔。両手に慎ましいものの、プニュリとした感覚があった。
(えっ?)
思わず両手でその物体をもみもみして、感触を確かめる。
「ちょ…ちょっと!どこもんでるの!バカ!」
私は顔を真っ赤になるのを感じて、無我夢中で良輔の頬をひっぱたいた。あこがれの夏先輩にも触らせたことはないのに、というか、ファーストタッチは夏先輩と決めていたのにこの腐れ縁の幼馴染に奪われるとは!
「バカはお前だ!美国、俺はお前がコケるのを助けてやったんじゃないか!」
「じゃあ、すぐその手を退けてよ!」
頬を引っぱたいても良輔は手を退けていない。いくら片手サイズのチッパイだからといって、ただで触ってもらっても困るのだ。
慌てて手を退ける良輔に、カミラちゃんのことを聞く。
「カミラちゃん?あの変な格好の女の子?美国、まだあの変な子と関わっているのか?」
「大きなお世話だわ。知ってるの?知らないの?」
「知らないぜ」
「もう、早く言ってよね」
私はプーッと頬を膨らませて、さっさとその場を後にした。良輔が何やら言っていたが無視である。そうこうするうちに、保健室からそのカミラちゃんを抱きかかえて出てきた人たちと出くわした。憧れの土緒夏先輩とリィ先輩だ。この二人はいつも一緒にいるから、ちょっと気になっている。
(まさか、夏先輩、あんな大きな胸の女の子がイイなんて思っていないでしょうね?)
でも、確か、夏先輩の彼女さんの立松寺先輩はそんなに大きくない。私もまだ勝ち目があると天に向かってグッと拳を突き出した。彼女がいる時点で勝ち目などないということが分かっていないなんて突っ込みはやめてください。
「夏先輩、その子、カミラちゃん、どうしたのですか?」
「あ、いや、その倒れていたのでこれから病院に連れて行こうと…」
「ドミトル先生に頼まれてな」
(夏先輩とリィ先輩、何だか怪しい…)
だが、幸せそうなカミラちゃんの寝顔を見ているとそんなに心配したことはないのかもしれないと思った。次の時間のチャイムが鳴る。
この時の私はこの後に大変な事件?に巻き込まれることをまったく予想していなかった。まさか、リィ先輩と私が夏先輩を巡って熾烈なバトルをするなんて…。