カミラちゃんの悪巧み その5
「ちょっと、いいかしら…」
聞きなれた高い声が俺を現実に引き戻した。口を放して恐る恐る目を開けるとそこには両手を腰に当てたお説教体制の立松寺華子が立っていた。
「新しい側室を作ったのは置いておいて、それを私に隠そうなんて、しかもリィと今晩会う約束して、しかもそんなキスするなんて!」
(ヤバい…目が三角になっている)
「こ、これは、そのいずれ話すつもりであって…」
「あ、そう。今晩、リィのマンションへ行くから…って聞こえたんですけど。マンションへ行ってどうするのかな~」
立松寺が俺の胸に人差し指で「の」の字を書く。
「いや、マンションで、そう、ゲーム、ゲームをやるんだ。なあ、リィ、あの格闘ゲーム」
「ああ、そうだ。魔王様。あの格闘ゲームだよな。激しいバトルが楽しみだなあ」
リィがフォローを入れてくれるが、傷口は広がるばかり。
「さぞかし、楽しい、激しい格闘ゲームをなさるのね。私も混ぜて欲しいなあ」
と言って、俺の胸をぎゅっと指でつねった。
「いてて…」
「とにかく、この状況を私に話しなさい!」
「は、はい。立松寺様」
俺はヨメに敬礼する。魔王なのに完全に尻に敷かれているのだが、これも惚れた弱みか。
とりあえず、一部始終を話した。カミラに襲われたこと、意識がなくなったこと。リィとの約束はすべて聞かれていたので話す必要はなかったが。
「分かりました。これであなたは、リィにファナにカミラと3人も愛人がいらっしゃるということですね。おめでとうございます」
「いや、だから、これは戦力の増強という観点から考えてくれればいいわけで」
「何の戦力?夜の戦力じゃあないでしょうね?」
「いや、俺は純粋に戦力として彼女たちが必要なわけで」
「ふん。どうだか…魔界の女ばかり侍らせて。自分は未だに力の覚醒がないのに。これじゃあ、イレギュラーの魔王どころか、種馬の魔王様だわ」
「種馬の魔王って、そりゃないよ」
リィがクスクスと笑っている。
(ちくしょう!俺はお前のせいで責められているんだぞ)
「まあ、魔界出身者だから大目に見てあげるわ。でもね、土緒くん。人間出身者は私一人で十分だからね。もし、人間出身者を側室にしたら…」
俺は立松寺の手を取った。
「バカ言うなよ。人間は立松寺だけ。誓って立松寺だけ!」
「まあ、信じておくわ。でも、あなたの下半身は信用ならないからなあ」
(か…下半身って…)
俺は黙って下を向く。確かにこの下半身は信用がならない。
「華子ちゃん…」
リィが声をかける。リィは俺の第一側室なので、正室たる立松寺華子に仕える身分であるが、プライベートでは「華子ちゃん」と呼んでいる。これは立松寺が望んだことだ。正式な場ではリィは「妃殿下」と呼んでいるが、俺を巡っての三角関係の割には仲がいい。
「華子ちゃん、そろそろ、戦いが始まります」
「そうね」
(戦い?)
俺は何の戦いだろうかと考えた。そうこうするうちに、周りの時が止まり、バトルエリアが展開された。学校の中でバトルが始まる。
「おい、誰が戦うんだ?」
「天智の魔王様(隆介)から、ドミトル伯の抹殺命令が出ました。資格のある側室、正室、魔王は戦いに参加するべしと」
リィが話す。元々、それを俺に伝えるためにここへ来たのだが、思わぬ出来事に遭遇して脱線をしてしまった。
「招集されたのは、宗治先輩、元馬君、夏妃さんに私。リィにファナにカテルさん。それに桃花先生」
「桃花先生?」
「彼女、魔界のお姫さまで、エセル・バールってのが本名よ」
「ふ~ん。誰が覚醒させたんだ?」
「隆介君ってことだけど、彼、意外にやるわね」
(ちくしょう…隆介の奴。あの桃花先生とやったのか?)
立松寺が指先で俺の胸をツンツンと突っついた。
「土緒君、まさか、うらやましいとか思ってないでしょうね?」
(す…するどい…俺のヨメ)
「いや、それじゃあ、俺はとりあえず招集されていないから関係なしと…」
慌てて話題をそらす。確かに自分が行っても何の役にも立てないだろう。
「そうしたほうが私もよいと思うぞ。魔王様。カミラ嬢のこんな姿を見たら、ドミトルの奴、魔王様を八つ裂きにするかもしれないからなあ…」
恐ろしいことを言うリィ。それはマジにリアルだ。
だから、俺は祈った。ドミトルには悪いが、ここは素直に死んでくれ!と。奴はアンデットだから、死ぬという表現はおかしいが…。それに祈る必要もないだろう。招集されたメンバーを見れば、ドミトルの奴が生き残れる可能性はゼロだ。




