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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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夏妃クライシス その2

「ひ、ひかるちゃん」


「夏妃お姉様。少し遅れました、ごめんなさい」


側室ナンバー8の新堂ひかるだ。彼女は4魔王の誰にも従っていない不思議な存在。あえていえば、魔王の正妃である夏妃ラブという危ない側室なのだ。


 ひかるは手にしたウェポン魔剣「ハルパー」を握っていた。それを一閃する。

フラッシュはかろうじてかわしたものの、ハルパーの刃先が頬をかすめ、緑色の血が滲み出た。それを指で撫で歯ぎしりのような不快な音を立てた。


「カオスの住人は人間界では力が発揮できないと聞いています。私に勝てるのかしら?」


「シッシシ…魔王の側室か。チャンスと思ったがやはり護衛は付いていたか。だが、お前までは計算のうちだ」


「ならば、計算外にしてあげる!」


ひかるが一撃必殺のスレイプニルを繰り出す。人間界で力が制限されているフラッシュがこの技をかわすことは不可能。一撃で倒れるはずであった…が、ひかるのハルパーは黒い長刀に阻まれた。


「ラプラス…遅いぞ!」


間一髪で助られたことへの感謝もなくフラッシュは悪態をついた。それは、この側室の攻撃力を侮った自分への怒りでもあった。やはり、人間界で魔王やその側室どもと戦うのは厳しい。だが、カオスの有力な将軍であるラプラスは、見た目にはひかると互角に戦っている。いずれ、圧されるであろうが、今は時間稼ぎとしては有効であった。フラッシュは、無力な夏妃を拉致しようと再び接近を開始したが、またもや計算外の出来事に出くわす。


夏妃と一緒にいた人間の娘が矢を射たのだ。その矢はこともあろうにフラッシュの右足を射抜き、さらに第2に矢が左肩に刺さる。


「ぐあああああ…焼ける…これは、なんだ!ただの矢じゃない」


「森羅万象…魔を滅ぼすために平安の時代から念を込めて作られた弓矢よ」


カルマが次の矢をつがえてそう言い放つ。普通の女子ならこういう状況では、ショックで立ちすくむか、悲鳴を上げて逃げ惑うだけだが、幼少から武道で鍛えられたカルマの精神は強靭であった。しかも古来より魔を退けてきたという一族の末裔で、手に持つ弓は先祖より伝わる武具であった。


「くそ!もはやリミッターがかかった状態では人間の小娘ごときに不覚をとるわ!バトルフィールド展開」


「待て!フラッシュ、バトルフィールドは張るな」


カオスの住人は人間界ではその能力が著しく制限される。だが、バトルフィールドを展開すれば、力は8割方戻る。但し、それをすれば天界や魔界の探索にかかり、わんさかとこの現場に討伐隊が来ることは間違いない。下手をすれば人間界に復活した魔王や側室がやってくる。


だが、フラッシュはラプラスの警告を無視した。あまりの怒りにそんな危険性など頭の片隅から追いやられた。もともと単純で攻撃的なこのカオスの住人に慎重さを求めることが無駄な所業であった。


(こうなったからには、速攻で戦いを終結させ、正室の女を拉致するしかない)


ラプラスは力が上がった自分の戦闘力で目の前の女を倒そうと剣を繰り出すが、ひかるは魔剣ハルパーで受け流す。しかも彼女の剣圧は徐々にラプラスを凌駕していく。


(く…この側室は侮れない。序列はかなり上か?)


ラプラスは一瞬でも気が抜けない状況を理解した。正室は心もとなかったがエージェントのフラッシュに任せるしかなかった。自分よりはるかに劣る輩であったが、さすがに人間相手で負けるとは思わなかった。それにターゲットの正室は攻撃力が皆無。自分が時間を稼げば、任務完了だろう。3分もあれば十分だ。


「お前、強いな。名をなんと言う」


「新堂ひかる…カオスのおじさんは?」


「ラプラス…ひかるといったな。序列は5番以内か」


「ふん。私は序列8位だ。だが、おじさんより強いみたいだね」


高速でラプラスの横を駆け抜ける。スレイプニル…高速で繰り出す一撃の必殺技。ラプラスは来るのが分かっていたが、防御が間に合わなかった。かろうじて体をずらし致命傷を免れるのが精一杯であった。フラッシュがバトルフィールドを展開して力が上がっていなかったらおそらく瞬殺されていただろう。


「ぐふっ…8位でこの力とは…今回の側室はレベルが上がっているのか?」


ラプラスは黒い太刀を地面に突き刺し、かろうじて体を支えている。自分の力が完全状態であったら、激戦必至のよい戦いができただろう。だが、現実はもう一撃食らえば、自分は人間界で滅殺されるだろう。だが、その時、ひかるの視線は別のところにあった。


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