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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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許嫁と復讐と…その5

「先生…いや、エセル…と呼べばいいかな」


隆介が一糸まとわぬエセルにそっとガウンをかけた。


「はい。陛下。これより、私は陛下の忠実なる側室。いつでも戦いに出向きますし、陛下の安全に気を配ります。そして、陛下が望めば、いつでもベッドの相手を務めますわ」


ベッドと聞いて、隆介の顔が赤くなった。


「ふふふ…魔王様が年下というのも悪くないわ。まあ、魔界、天界出身者はみんなかなり年上ですが、メグルさんは人間年齢では陛下と同じ。私は陛下よりも6つも上ですから」


「年は関係ないよ」


そう隆介はエセルを抱きしめた。片手はダイナマイトなエセルの左胸を下から持ち上げるように掴んでいる。夏にはリィとファナ、元馬にはアレクサンドラ、宗治にはカテルがすでに側室として侍っているが、隆介には初めての魔界出身の女性だ。どう接してよいのか迷ったが、人間でなくても女性は女性だ。普通に接すればいいだろう。これまで、女には少々ヘタレ気味だったが、メグルに男にしてもらい度胸もついたのか、隆介の行動は別人であった。


「あん…陛下、まだ若いのに女のツボを知っていらっしゃるのね。まだ、なさりたいの?」


「いや、そういうわけじゃ。それに…」


隆介は加奈子のことを思い出した。エナジードレインを受けて死にかけた1つ上の先輩。

犯人はドミトルに違いない。偶然、加奈子が側室候補だったとはいえ、一般人に手を出すとはもはや許せない。様子見で泳がせていたが、ここは成敗するしかないだろう。奴は夏妃を虎視眈々と狙っているのだ。宗治先輩にも元馬にも(ついでに夏にも)、ドミトルにはまだ戦いを挑まないでくれということを伝えていたが、それも解禁だろう。4魔王、正室、側室の全力を挙げてこの魔界に反旗を翻す過激派の幹部を倒す必要がある。


「エセル、ドミトル伯爵を倒したい。君の最初の任務として命じてよいか」


「はい。陛下。私の仇はカオスですが、魔界軍に刃向う過激派も敵です。ドミトル伯爵は私が倒しましょう。それに…」


エセルが言うには、ドミトル伯爵は魔界でも稀有な能力の持ち主で、かれは基本的に不死の能力を持っている。倒すには心臓を魔法の武器で突き刺すしかないが、その心臓は体のどこにあるか定かでない。


「確かにメグルちゃんが槍で胸を刺しても死ななかった」


「奴の心臓は別の空間にあるのです。時空を超え別空間に武器を届かせねば倒せません」


「メグルの武器では無理ということ?」


「そうです。彼を倒せるのは側室でも限られた者のみ。恐れながら、魔王様を滅殺できるウェポンを所持する者だけです」


「ああ。それか。魔王が暴走しないように歯止めとして限られた側室や正室が所持するという武器」


「陛下の側室、メグルさんのウェポン「神槍ズフタフ」は残念ながらそのような力は付与されていません。おそらく、杏子さんのも」


(そういえば、中村杏子のウェポンは何だろう?)


疑問に思ったが杏子はウェポンを召還はしなかった。無論、覚醒することでウェポン償還や力の解放などは自然にできるのだから、敢えて彼女が公開しなかったのであろう。駆け引きに長けた彼女らしい態度だ。


「他の魔王様たちには、魔王殺しのウェポンを所持している者がいます」


「ああ。その辺のところはアスモデウス公爵に聞いた。リィのフィン・マークル、満天ちゃんのグングニル、カテルさんのフルティング、ファナのロジェアール」


「残念ながら、陛下の側室にはありませんでした」


エセルは「それに…」とドミトル討伐の件で言葉を続けた。続けた理由は隆介には分かっていた。


「来たれ!エセル・バールの所持せし、ウェポン…魔剣レーヴァテイン」


エセルの右手に炎に包まれた大剣が現れた。


「魔王様を滅殺できる武器です。私を怒らせると滅殺しちゃいますよ…」


ドキッ…と隆介の心臓が鳴る。


(えっ?側室にそんな武器が付与されるってそういう意味?)


エセルは隆介の胸に人差し指を置いてゆっくりとハートマークを描いた。


「冗談ですわ…陛下。このような武器が与えられた側室は魔王様と絶対的な愛で結ばれている証拠なのですよ。この剣で魔王様を滅殺するイコールそれを行った側室も死ぬことになるのです。まさに運命共同体ですわ」


ぞぞぞ…と隆介の背中に冷たいものが走った。


(おいおい…その方が怖いって!)


隆介は、男女の修羅場で、「あなたを殺してから私も死ぬ!」なんてセリフを吐いて包丁を振り回す安い昼ドラマの場面を思い出した。


(夏なんてリィにファナと2人も心中相手がいるし…)


聞けば、正室は必ずそういうウェポンを所持しているらしい。夏妃はともかく、嫉妬深い立松寺を正妻にしている夏はいつ刺されてもおかしくはない。思わず合唱してしまう隆介。


エセルは魔剣レーヴァテインを鞘に収めると隆介にキスをした。少し長いキスを終えると


「それでは陛下、行ってまいります」


「ああ。無理はするな、エセル。決行は明日。それまで奴を見張っていてくれ。戦う時はみんなで戦う。俺も行くから…」


「陛下、魔界の伯爵一人に陛下がお出ましにならなくても…私一人でも戦えます」


「いや、戦う以上は万全を期して戦う。夏妃や元馬、宗治先輩も動員する」


「ふふふ…魔界の全戦力動員ですか?ドミトル伯爵も光栄ですこと。分かりました。彼を見張っていますが、向こうから仕掛けてくれば私も剣を抜きますわ」


エセルは病室のドアを開けた。そして閉める瞬間、


「エセル…二人だけの時は、陛下はよしてくれ」


「何とお呼びすれば?」


「隆介でいい」


「ふふふ…隆介…行って参ります」


ドアを閉じた音が、夜明け前の薄暗い病棟に響いた。


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