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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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許嫁と復讐と…その4

 カルマは夏妃の手を引いて校門に向かう。すでに携帯電話で次の運転手を呼んである。

ほどなく、今度は後ろ座席が快適なメルセデスのセダンが止まった。運転してきた大会社の御曹司にドアを開けさせ、夏妃と共に乗り込む。


「私の家に行きなさい」


そうカルマは命じた。家に夏妃を連れて行って、どれだけ自分が宗治と関わりが深く、家同士公認の中だと見せつけてやるのだ。


「カルマ、家に向かうのはいいけど、今度はいつデートしてくれる?」


運転しながらボンクラ御曹司が後ろ席をバックミラーでちらりと見ながら尋ねた。


「カルマさんの彼氏ですか?」


夏妃が訪ねる。魔王の正妃であるのにどこか抜けている。カルマはいらいらして、前座席を蹴った。


「彼氏ですって!こいつが!こいつは私の運転手。お金があって、顔がいいだけ!のボンボンよ。デートなんて当分お預けよ!」


「ひどいなあ…カルマ。それなら、そちらのカワイ子ちゃん紹介してくれよ」


またちらりと今度は夏妃の方を見て、この運転手のお坊ちゃんはそう言った。制服姿の女子高生というだけで興味があるのに、夏妃はかなり清楚な美人だ。お坊ちゃんの関心がつれないカルマから夏妃に移っても仕方がない。


「私、土緒夏妃と言います。本日はカルマさんの家まで送ってくださり、ありがとうございます」

丁寧にあいさつをする夏妃。お坊ちゃんは完全に心を奪われてしまった。


(この子のこの雰囲気…これよ。何だか、周りを魅了する不思議な感覚)


しゃべり方のトーン、間合い、そして仕草…それが一体となることで好印象を与える。カルマは夏妃のこの不思議な力に宗治が惹かれたのではないか…と思い始めていた。



 

「イセルお姉様…今度の戦いは厳しいと聞きます。無理はなさらないで…」


「エセル…この戦いは今の魔王様の御代の最後となりましょう。あなたが戦場に出ることがないように全力を尽くすわ。大丈夫、魔王様も妃殿下様も戦場にお出ましになります。魔界と天界の主力軍が連合して戦うのです。負けるはずがありませんわ」


「そうよね。お姉様は魔界軍の至宝と言われているのですもの。今回もカオスの奴らをやっつけてくれるわよね」


イセルはまだ大人になりきれていない妹の顔にそっと手をやり、


「エセル。公爵令嬢が奴ら…なんて言葉に気を付けないといけないわ」


「ご…ごめんなさい。お姉様」


「じゃあ、言ってくるね」


イセルが出ていくと大きな扉がゆっくりと閉った。日の光がイセルを包み込み、シルエットだけがエセルの目に焼き付いた。


それが大切な姉の最後の姿だった。


v魔剣ダインスレイフを振りかざし、魔王の第1側室として1万5千の魔界軍を率いた姉は、カオス軍を幾度となく破り魔界軍の至宝と言われていた。だが、このカオスとの激戦で勝利と引き換えに返ってこなかった。姉の活躍でカオスは散々破れて、魔界軍の大勝利であった。


だが、そのカオスも痛手を解消し、またもや侵攻の気配がある。大切な姉が身を犠牲にしてまで得た平和が破られようとしている。

エセルはベッドからそっと起き上がった。隣で寝ている隆介…天智の魔王の側室となった証を体で感じてエセルはきゅっと唇をかんだ。右胸に浮かんだ9の数字にそっと左手を当てた。


「お姉様…カオスの奴らをギタギタにしてこの世から抹殺してやります」


生まれながらの貴婦人らしからぬセリフを吐いた。


(それにしても…)


魔王である隆介の寝顔を見てクスッと笑った。


「わたくしの陛下の寝顔…かわいい」


姉のイセルは前魔王が人間界にいる時にその護衛と正室の教育係を引き受けていた。今回でいうところのリィの役目であるが、エセルもその役を今回引き受けられるように行動したものの、カオスに対する憎しみが障るという理由で外されてしまった。そこで、独自に人間界に潜入して魔王の側室になろうと画策したのであるが、今回はその魔王が4人という前代未聞の出来事に出くわしたのだ。


(第1の魔王、一柳宗治…通称「暴虐の魔王」クールで冷静だが、戦いになった途端にすさまじい攻撃性を発揮する。第2の魔王、源元馬…通称「激熱の魔王」正義感が強く、曲がったことが大嫌いな熱血男)


当初、エセルはこの2人のどちらかを自分の夫にしようと思っていた。カオスとの戦いには両者のような圧倒的な攻撃力を持つ方が、エセルの目的を達成するには好都合だと思ったからだ。未だにその力が未知数である第4の魔王「イレギュラーの魔王」は最初から除外していたが、この第3の魔王の橘隆介には、前者たちのように有無を言わさず敵をねじ伏せる圧倒的な力があるわけではない。だが、「天智の魔王」の名の通り、知略に富み、部下を的確な指示で動かし勝利する。自分の能力を100%以上引き出した上でカオスに勝利するには、この人の方が良いように思えたのだ。そして何より…


(この顔が私の好み…本当にかわいい。そして、優しいし、決断力もある。頼れる人なのだ。お姉様…お姉様もこんな気持ちで魔王様を愛していらっしゃったのですか?)


エセルはそっと窓に寄り、外を眺めた。大きな月が煌々と部屋を照らしている。ふと後ろに気配を感じた。


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