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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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許嫁と復讐と…

 物部ものべカルマは友人が手に入れたという雑誌を見て凍りついた。ここは、裕福な家の令嬢が通う聖レガリア女子大学。キャンパスのオープンカフェで優雅にブランチをしていたところに友人が慌てて腰かけ、ブランドもののバックからその問題の雑誌を見せたのだ。


学園アイドル、土緒夏妃 3人の男と乱れた関係?


見出しはカルマにとってはどうでもよかった。市販の雑誌でなく、週刊乙女林という高校の同人雑誌にしてはかなりお金がかかった仕様なのでそれには感心したが、多用された写真の中にある人物を見つけて目を見開いた。


「そ…宗治…うそ!」


一柳宗治がバイクに女の子を乗せている写真。


 友人はカルマと一柳宗治の関係をよく知っていて、心配して雑誌を届けてくれたのであるが(友人の弟が持っていたらしい)カルマにとっては一大事であった。これまでにも、宗治に彼女ができたとか、できないとかうわさは聞いたことはある。少し前も藤野蝶子という宗治と同じ学校に通う小娘がちょっかいを出していると聞いて、少し心配になり、見に行ったが、2人の様子を見て安心したものだった。


(私の宗治は、あんな女なんか好きになるわけがない)


そう確信したので気にならなかった。宗治には私がいる。同じ高校の小娘ごとき一柳宗治という男が心をとらわれるわけがない。そうプライドの高いカルマは思った。


 物部カルマは、日本古来から伝わる弓道の物部流総本家の長女で、物部流の師範代を務めている武道家であった。そして宗治の一柳家とは武道を通じて先々代から仲が良く、ついには孫の代で縁を深めようということになって、生まれた時から二人の結婚が約束されていた。カルマの方が一つ上であったが、宗治は昔から大人びたところがあり、年上のお姉さんらしい対応は一度もできなかったが、この小さい時からクールな許嫁にカルマは小さい時から惚れていた。


(だから、分かる…)


写真を見てこれは危険だと本能が感じていた。写真を見ただけで分かる。この土緒夏妃という女の子。宗治の好みがこういうタイプであることに安心したことも事実だ。長い黒い髪に整った顔立ち。すらりとした長い手足。スレンダー系だが出るところは出ている理想的な落ち着いた美少女。夏妃という娘のルックスは自分と重なるところがある。但し、カルマは武道の家柄にもかかわらず、今どきの女子大生らしく髪を茶髪に染めていたが。


あとカルマが少しだけ心配していたこと。宗治は女の子には興味ない…というストイックな態度を貫いていたから、もしかしたら、男に興味が?などという気持ちもあったが、彼は正常でちゃんと女の子が好きなようで、そういう面からも宗治の新しい一面を見たような気がした。


 カルマは携帯電話を取り出すと、召使いと名付けたファルダを開くとリストに載っている何人かの候補から、一人を選び出すとボタンを押した。ツーツー…


「おっ、カルマ、めずらしいね。君の方から電話をかけてくるなんて」


「用があるから電話しただけ」


「それで用は?」


「今すぐ、迎えに来て」


「分かったけど、デートのお誘い?」


「私とデートを望むなんて、どういう神経をしていらっしゃるのかしら?」


「はいはい、分かりましたお嬢様」


「10分以内よ。それ以上待たせるなら、他の男の子にするから」


「今、向かうよ。レガリアの校門でいいか」


「いつものポルシェで来てよ。安い国産車で来たら乗らないから」


「分かってるよ」


 カルマにはいつでも呼び出せば、彼女に奉仕してくれる男を何人もキープしていた。もちろん、本命は宗治だから、こいつらはすべて都合のよい男ども。運転手や買い物の荷物持ち、食事の時の話し相手など本当に都合よくこき使っていた。そして、ご褒美はたまにデートしてやるだけ。体を許すところか、キスさえ許さない。強引に迫ってきても武道家のカルマに普通の男ではまったく歯が立たない。こう書くと非常に嫌な女であるが、気品と絶世の容姿が男どもを魅了して止まないのだ。

 

 きっかり10分後。約束通り、ポルシェ911GT3でやってきた、ボンボンの医大生に送らせてカルマは乙女林高等学校に現れた。手には弓の入った袋を握っている。


(土緒夏妃という小娘。直に会って確かめるわ)


 カルマの目は爛々と燃えていた。あのクールな宗治の心に火をつけたという女。


(いったいどうやって?あの鉄のような男を垂らし込んだのだ?)


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