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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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三ツ矢編集長の危機

 カミラがいう遊び…それは!


人生ゲームであった。ただ、普通の人生ゲームではない。ゴールは「魔王」様との結婚。途中に立ちはだかるライバルや敵を排除しつつ、ゴールを目指すサバイバル人生ゲームだ。三ツ矢加奈子は、ゲーム早々に、ドラゴン退治イベントで、なすすべもなくゲームオーバーしてしまった。ゲームの結果はどうでもよかったが、美国とカミラがきゃっきゃいいながらルーレットを回しているのを見て、加奈子はどうやってこの場を去るか考えていた。


だが、加奈子がつまらなそうにしていると、カミラが、


「みくにちゃん、わたし、何だか、喉が渇いたなあ…」


と意味ありげに加奈子の目を見て、そして視線を首筋に移して言う。美国ちゃんは、というと先ほどの危機的な状況を忘れたかのように呑気にカミラとゲームを興じている。


(この子、ある意味、大物だわ…)


状況から考えて、目の前の可愛らしい女の子が人ではないことは確実であるのだ。早く、ここから脱出しないとまずい。三ツ矢加奈子は、左腕の時計をちらりと見た。時刻のデジタル表示は4時32分を回っており、さらに潜入時に押したストップウォッチ表示は、2時間を軽く上回る表示を示していた。加奈子の計画では、30分と決めていた潜入だったが、あの不気味な生き物の大群とこの得体のしれない美少女(見た目はみくにちゃんと同程度。中学生レベル。だが、時折見せる表情は妖しい大人のそれである)のおかげで、計画は完全に破たんしている。だが、部屋の外はあの化け物が徘徊しているし、そろそろ、この館の主であるドミトル伯爵が戻ってくる時間でもある。


「ようし!次のルーレットで4が出れば、私の勝ちだぞ!」


美国ちゃんが腕まくりをした。


「う~!4出るな、4出るな」


カミラが念を送るようなしぐさ…出た数字は、


「4」


カミラにはルーレットを操作する力はなかったのだろう。あっさり、美国ちゃんがゴールを決めた。


「残念…もう少し、遊びたいけれど、もうすぐ、お兄様が帰ってきてしまう時間だし…」


「あっ、じゃあ、そろそろ帰りましょう」


そう話を合わせる三ツ矢加奈子。カミラはそっと、加奈子の耳元に真っ赤な唇を寄せ、みくにちゃんに聞こえないように、


「そうねえ。私は女の子の血は吸わないけれど、お兄様は大好物だからなあ…特に、加奈子はお兄様好みだから…」


三ツ矢加奈子の背筋に冷たいものが走った。当の雪村美国は、カミラが吸血鬼かもしれない?という当初の疑問も忘れたらしく、


「カミラちゃん、のど渇いたって言っていたよね。私、駅前においしいカフェ知ってるよ。今から、一緒に行かない」


カミラのおかげで、やっと屋敷から出られて、門のところまで見送られて、ほっとしているのにそんな鬼編集長の気持ちに気づいていない。


(みくにちゃん…後からたっぷりお仕置きしてあげるからねえ~)


額に怒りの筋を作って、でも顔は笑顔で2人を見る三ツ矢先輩。


カミラは笑顔でぴょんぴょん跳ね、


「カミラうれしい!いいよ、行こう、行こう!」


とみくにちゃんの手を取った。二人して飛び跳ねている。


「じゃあ、私は用事があるから…」


さりげなく三ツ矢加奈子は告げて、別の方向へ歩き出した。少々、ドジな後輩の雪村美国のことが気になったが、たぶん、カミラには危害を加える意思はないだろうと思った。それより、ここを早く離れないと命の危険がある。


三ツ矢加奈子は、屋敷で手に入れた数々の証拠を収めたカバンを抱きしめて走った。まだ、日が高く、明るいことが彼女不安を少しずつ解消していった。だが、人通りの多い駅構内でドミトルが異様に赤い目でこちらを見て立っているのを発見して、その場に凍りついた。体がまったく動かない。ドミトルはゆっくり近づいてきて、加奈子の耳元でささやいた。


「あなたはいずれ気が付いて動き出すとは思っていましたが、予想より早かったですね。高校生にしておくのはもったいない、ジャーナリストの有能な卵ですが、首を突っ込んでよいところとそうでないところの見極めができていないのは、まだ、経験不足ですね。残念ながら、この教訓は生かすことなく、あなたの人生は終わりを告げる」


「えっ?」


三ツ矢加奈子は我に返った。だが、その瞬間、体の力が急速に抜けていくのが分かった。目の前が真っ暗になり意識が遠のく。周りの人々の怒号が遠くに聞こえる。


「女の子が倒れたぞ!」


「えっ?通り魔」


「きゃあ~」


「救急車だ、救急車を呼べ!」


「息をしていない。誰か応急処置ができる人はいないか!」


遠くに救急車のサイレンがかすかに聞こえる。


(私、もうだめなの…)


「三ツ矢先輩?三ツ矢先輩じゃないですか!」


さまざまな声の渦の中で、聞いたことのある声がした。


「橘生徒会長…」


加奈子は完全に意識を失った。


「あんないい女の血を吸えなくて残念だったが、まあ、よい。あと一人いるが、カミラと一緒じゃ、今は手が出せないな。それにどうやら、邪魔も入ったようだし…」


加奈子襲撃の現場を離れて自分の屋敷に向かうドミトルは、仲間からの緊急通信で事態がより複雑になったことを知った。


カオスのエージェント2  侵入  目的 土緒夏妃の拉致



「させるか…夏妃は俺がものにする」


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