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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
胎動モード
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みくにちゃんの大冒険PART2~潜入~

これがホントの大冒険編?みくにちゃんが、ドミトル先生の屋敷に侵入します。やめた方がいいと思うのだけど…

私は決心した。


(ドミトル先生の秘密を探って、週刊乙女林の敏腕記者になる!)


「みくにちゃん、すごい」


「一大スクープだよ!これは!」


編集部のみんなが私を褒めちぎる。そして、三ツ矢編集長が、


「みくにちゃん、よくやったわ。あなたを入部させて正解だったわ」


そう言って、頭をなでなでしてくれる…


はずだったのに…


「みくにちゃ~ん!あれほど、この件に関わるな!っていったのに!」


現実は三ツ矢編集長に頭をぐりぐりされてお仕置きされている。



状況は非常にピンチだ。

この状況の15分前。私は学校を休んでドミトル先生の家に潜入を試みた。先生の家は郊外の古い洋館だった。まるで吸血鬼が出そうな大きな家。門が閉じてあったので、登って超えたら柵に半ズボンが引っかかってお尻が破れてしまうし、落ちたところが茂みで抜け出した時には、靴が片方なくなっちゃうし、かぶってきた帽子もどこかにいっちゃった。


かろうじて持ってきたディバックは無事だったけれど、いざという時に使うはずの無断で借りてきたお兄ちゃんの木刀(修学旅行のおみやげ)は柵の外に忘れてきたし…潜入は最初から難航を極めた。

一応、1階の空いていた窓から侵入。大きなお屋敷なのに不用心。泥棒に、


「いっらしゃいませ!」


って言っていますよ、このお屋敷。でも、なんで不用心なのかは、何分かしてよくわかった。屋敷の中には黒いどろっとした人型の怪物がうろうろしていたのだ。私はそいつを初めて見た時、あまりの恐怖で


「きゃあ~ば…ばけもの~」


と館中に響く声で叫び、1階から階段を駆け上って、廊下をでたらめに走った。無我夢中で、どこをどう行ったか分からないけれど、たくさん絵が飾られているがらんとした廊下に出た。すると前方にも黒い化け物、後ろからも黒い化け物、挟み撃ちにされてしまった。


絶体絶命の私。


いつものように気を失いそうになった時に、急に右側の大きな絵がぐるりと回転して私の腕を引っ張って引き込んだ。


「ぎゃあ…食べないで、私はちっちゃくてあんまり食べがいがないですから、許してくださ~い。それにちょっと、ほんのちょっとですけど、ちびっちゃたから、臭いですよ!」


言わなくてもよいことまで口走った口をぎゅっと押えられる。


「しっ、静かにして!」


「ムムム・・・・」


「あいつらは目が見えないの。物音を立てなければやり過ごせるわ」


絵の隙間から外を伺う人物。それはよく知っている人物だった。


「へ…へ…編集長!」


 そこにいたのは三ツ矢編集長だった。私は学校を行くふりしてドミトル先生の家に向かったのだが、乗る電車を間違えたり、途中でお腹がすいたからお弁当を食べたりで、結局、着いたのは昼過ぎ。三ツ矢先輩は午前の授業に出てから、ドミトル先生が午後の講義がいっぱいだということを確かめてからやってきたらしい。


考えてみれば、もし、ドミトル先生が学校に来ていなかったら、この屋敷で鉢合わせした可能性もあったわけで、三ツ矢先輩はさすがである。


(それに比べて、わたしったらなんてドジ!)


黒い化け物は、絵画の廊下にいっぱい集まってきて動く気配がない。そして編集長と隠れている絵画の裏の小部屋はちょっとした物置スペースでしかない。完全に閉じ込められたというわけだ。中は暗いが三ツ矢編集長の懐中電灯で電燈のスイッチを探して付ける。

部屋の中は絵画が入っていたらしい木箱やじゅうたん、壺なんかが無造作に置かれている。


それで先ほどの頭グリグリのシーンに戻るわけだ。


「困ったわね。何時間かすればあの化け物もいなくなるかもしれないけど。それだとドミトル伯爵が戻ってきてしまう」


「ドミトル伯爵?先生じゃなくて?」


「調べたの。まだ、謎はあるけど、どうやら先生は別世界の貴族。私たちとは違う人よ」


「じゃあ、やっぱり吸血鬼ってこと?」


私はおそるおそる尋ねる。


(先ほどの黒い化け物は手下?)


 三ツ矢編集長の出で立ちはかっこいい。黒い全身レオタードに皮手袋、革ブーツ。ブーツのそこには音がしないようにスポンジが張り付けてある。上半身にはポケットがたくさんある黒いベストで、黒いニット帽をかぶっている。これは伸ばせば顔まで隠せる覆面仕様ということだ。(完全に女スパイだ)

三ツ矢加奈子は、ドジだが何故だか憎めない後輩の顔を見ながら、


(だいたい、潜入捜査にはこういう格好で忍び込んで、今まで一度も失敗はなかったのに…このドジな後輩を助けるためにピンチになってしまった)


そう思うとちょっと意地悪をしたくなった。見てはいないウソを教える。


「吸血鬼かどうか分からないけれど、部屋で大きな棺桶を見たわ」


「えええっ…」


私はぶるぶる震える。そういえばさっき、ちょっとちびってしまったので冷えた?


いや、ちびったことを笑わないで!女の子はチビリやすいの!


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