幕間 男の秘密談義 その2
男2人の女の子の話はどうしてもエロ系に走りそうですが、根は真面目な2人のことですから、あくまでも魔界の平和のため。でも、あと8人も探すのは厳しい?
書くのも厳しい…
「もう!男二人で何いやらしい話してるの?これだから、男は!絶対、あなたたちには夏妃先輩は渡さないからね」
新堂ひかるが割り込んできた。こういう話に女の子が入ってくると一気に冷めるもんだ。こいつもちょっと前まではこういう話に食いついてきた男の子だったくせに、こんなに可愛らしい女の子に覚醒するとわ。ただ、完全に夏妃にユリ状態で、どの魔王にも属さない不思議な立場の側室である。
2人は話題を変えた。隆介がパソコンでデータを開く。この学校で側室候補となりうる女の子のデータだ。全学校の女の子のデータを分類して特異な能力を持つ娘、容姿、好感度など側室としての要素をまとめたものだ。さらに体のどこかに番号らしき跡があるかまで調査してあるのだ。(数字は覚醒しないとはっきりしないのであくまでもらしき跡である)
画面に名前と写真が現れる。
エトランジェ・キリン・マシニッサ
楠井真里菜
中村杏子
宮川スバル
三ツ矢加奈子
北条玲奈
安藤広恵
横地多恵
三輪桃花
「みんなカワイ子ちゃんぞろいだが、本当にこの中に候補がいるのか?」
元馬は怪訝そうに尋ねる。元馬は熱血体育会系らしく、女の子の容姿はさほど気にしないと思っている。容姿じゃなくてハートだ!という信念だが、本命の夏妃は美少女だし、
妹の満天も美少女、アレクサンドラも美女だから、面食いと言われても仕方ない。ただ、望んでいないのに美人に囲まれているのだから、責められるのはお門違いだ。
「エトランジェちゃんなんかは、天界の住人で流れ的に間違いないけど、年は俺たちよりも上なのに容
姿が童女じゃなあ…おまえ、満天ちゃんもいることだし、引き受けたらどうだ。」
「かんべんしてくれ。俺はあの子は苦手だ。あれは夏の担当だろう。何となく、リィとセットのような気がするんだが」
「そうだな」
2人で納得する。その他の名前はみんな人間で、容姿端麗で特技を持っている子となっている。元馬は写真を見ながらつぶやく。
「宮川スバルは知っている。2年陸上部の弾丸娘だろ。100m走らせたら国体級らしいな」
確かに宮川スバルという娘は、乙女林陸上部が誇る短距離走のエース。県代表選手である。陸上部女子に似合わず、結構な巨乳で走るたびにブルンブルン揺れるので、男子生徒からは「走るおっぱい」だとか「揺れる新記録」だとか秘かに言われているが、本人はショートカットの似合う運動系女子。
性格もさっぱりとして男女問わず人気が高い。無論、無駄なおっぱいの脂肪がなく、Aカップの貧乳だったらオリンピック級の選手になれると誰もが思っていたが、本人に言うものは誰もいなかった。
「三ツ矢加奈子は、さっきいた先輩だな。隆介、もうモーションをかけているのか」
「違う。これは夏妃を侮辱した記事を書きやがったからで、魔界だったら完全に発禁処分にしてやるところだ」
「まあ、興奮するな。確かにあの先輩の情報収集能力はすごい。あらゆる世界で情報は勝利を得るためには必修だもんな」
「そうだ。カオスとの戦争では力だけが勝負を決するわけじゃない。戦争は情報と補給などの兵站で決まると言っていい。戦闘だけでなく、そういった業務を担当できる子も必要だ」
「なるほどね。それでこの娘、中村杏子もいるわけだ」
「若干高校2年生にして、簿記1級、税理士資格もFPも学歴や年齢制限さえなければ確実に取得できるスーパー経理ガール。大学に行く前に俺の会社で確保したいと思える人材だ。この生徒会に招きたいと以前から思っていたが、財政規模が彼女のスケールに合わないからなあ」
「未来の魔界、財務大臣、もしくは魔界軍の後方支援司令官ってとこか。歴史で言えば、漢の劉邦の右腕、蕭何ということか。隆介、お前、ほんとうに魔王だな」
「ああ。降りるなら今のうちだぞ」
「冗談、俺を降ろして夏妃とよろしくやろうなんて許さないからな!」
パソコンの画面が最後のページを示す。
「最後は三輪桃花。先生まで候補とはな」
「彼女の場合、人間かどうかも怪しい」
「どういうことだ?」
「どんなに調べても出自が分からないんだよ。それなのにこの乙女林高校の教師に潜り込んでいる。それに最近、ひかるちゃんが盗撮してきたこの写真」
パソコンの画面の写真はほとんど、女子の立場を利用した新堂ひかるの手によるものだが、最近、隠し撮りした三輪桃花先生のパンチラ写真が画面に映った。
「おいおい、隆介、お前、これ、お宝映像か?」
元馬の声が小さくなる。こんな画面見ているところを夏妃に見つかったら、それこそ、冷たい視線を浴びせられることだろう。
「バカ言え!ここだ、ここを見ろ!」
ぐぐぐ…と画面を中止する元馬。ベージュの大人っぽいパンツの割れ目…ではなく、右上に紋章のようなものが見える。そういえば、リィ・アスモデウスの服にもカテル・ディートリッヒの服にも、最近ではアレクサンドラ・ド・バレリウスの服にも似たような紋章を見たことがある。彼女らに共通するのはそう…
(魔界のお姫様だ)
3人とも違うデザインであるが、魔界の貴族の紋章に違いない。大貴族のリィのアスモデウス家はより複雑な紋章で格式を感じるが、中級貴族のディートリッヒ家とバレリウス家でもそれなりの重みを感じる。桃花先生の紋章はリィに匹敵するぐらい複雑である。
「それにここに数字らしき染みがある」
真っ白で染みひとつないといっていい桃花先生の左ももの付け根にわずかにほくろみたいな黒い染みがある。見ようによっては「9」に見えなくもない。
「かなり確率が高いが、俺はパスな。年上はアレクサンドラで十分だ」
「じゃあ、お前は宮川を当たれ。俺は中村と先生、三ツ矢先輩は保留だ」
候補のうち、ひかるちゃんが撮ってきた写真を見る限り、体に数字らしき跡が確認できたのは、宮川スバル(左胸の上)、中村杏子(右首筋)、三輪桃花(左もも付け根)だけだったので、当面、この3人にアプローチすることにする。桃花先生の紋章については、リィかアレクサンドラに確認すればいいだろう。
「宗治先輩は、側室など探さなくてもいいと言って全然動かないし、ひかるちゃんはともかく、新しい女探しを夏妃や他の子にさせるわけにいかないからなあ」
「夏妃のため…と信じてがんばるしかないか」
2人はそういって画面を閉じた。チャイムが鳴って、午後の授業が始まる。