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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
覚醒モード
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夏妃と側室戦争~後編~魔王参戦

いよいよ、側室戦争も後編。敵側室の本拠地、乙女林高校に向かったひかるちゃんですが、そこには序列が上の2人の側室さんたちが待ち構えていました。

その戦場にぞくぞくと魔王候補たちが集まってきます。

戦いの行方はどうなるのでしょうか?

その頃、ひかるは学校で一か八かの勝負に出ていた。学校でセブンのクリスタルを守っているのが側室No.7のアレクサンドラ・ド・バレリウスと側室No.2のカテル・ディートリッヒであった。彼女の考えでは戦いの最中にあわよくばクリスタルを破壊し、セブンの儀式魔法で展開したバトルエリアを無効化する手に出たのだ。バトルエリアがなくなれば、このバカげた戦いは終わる。側室戦争は魔界の内輪もめであり、魔界の過激派に付け入る隙を与えてはならないのだ。ひかるの大好きな女夏(夏妃)先輩の安全も保障できない。


「お二人とももはやこれまででしょう。おとなしく、降伏しなさい。もうすぐ、魔王様もここにやってくるわ。そうなったら、万事休すです」


ひかるはクリスタルの前に立ちはだかる2人の側室を説得しようと試みた。だが、カテルはずっと目をつむったまま、スーパーモデル並みの肢体をただ立たせているだけだし、アレクサンドラは高々と笑い声をあげて、


「ふん。魔王様だと。私の魔王様は前魔王様のみ。新しい魔王など汚らわしい。我々二人で葬ってくれるわ」


といい、両手にウェポンを召還した。アレクサンドラの武器は両手、両脚を覆ったガントレットとブーツ。


「ギャラハットと呼ばれし、我がウェポンは打撃系の武器では最強を誇る。そして、このガントレットとブーツはいかなる武器でも破壊はできぬ」


目にも止まらぬ高速の蹴りとパンチがひかるに襲い掛かる…。ひかるは自らのウェポンであるハルパーを召還して斬りつけるが、アレクサンドラのガントレットに弾かれる。


「無駄だ…このギャラハットのガントレットとブーツはいかなる武器も砕くことはできない。そして我が拳と蹴りを一発でも受ければ、ほぼ勝負は決まる」


(確かに…このパンチと蹴りを一撃でも食らえば大ダメージは必至。だが、両腕、両足がダメなら、狙うは胴体か頭!)


ひかるは避けながら攻撃に転じた。必殺の高速移動からの一撃。スレイプニルである。

ハルパーの切っ先は確かにアレクサンドラのキュッと締まった胴体にヒットしたかに見えた。だが、胴体に食い込んだと思った切っ先は折り曲げたアレクサンドラの右肘に阻まれた。ガチッ…ハルパーの刃が弾かれる。その瞬間、強烈なアレクサンドラの左脚がひかるの後頭部を直撃した。強烈な延髄蹴りである。巻き込むように蹴り飛ばされたひかるは、20m吹き飛んだ。意識が遠のく。


(一撃で…大ダメージとは…予想していたけれど、これほどとは…)


「わ…わたしは負けない。夏お姉さまを…ま…守らなきゃ…」


ひかるは、両腕を立てて体を持ち上げようとしたが、そこまでであった。頭の中で何かが切れてどっっと、うつ伏せに倒れこんだ。(動け!動け!)と意識の中でひかるは叫んだが、体が言うことを聞かない。


「所詮、8位は7位には勝てぬか。私の出番は遠のいたようだな…。アレクサンドラ…、そいつはまだこと切れていない。とどめを刺せ」


カテルが目を閉じたまま、そうアレクサンドラに穏やかに語りかける。


「ふん。そうはいくか。こいつはメディアとカイとクリュシュナを殺した奴だ。そう簡単にとどめを刺したら、3人も浮かばれまい。こういう幸せそうな奴は徹底的に苦しめてからあの世へ送る」


そういうとひかるの左手のひらをブーツで踏みつける。骨の折れる音がして、ひかるの悲鳴が鳴り響いた。そして、さらに右手を踏もうと左足を上げた時、こともあろうに足首をギュッと掴まれたではないか。


(バカな…気配を感じなかった!)


アレクサンドラは自分の足首をがっちりと掴み、さらに高々と持ち上げた人物の顔を見た。

男である。いや、人間の男ではない。右手の甲に爛々と光る∞マークは魔王の印である。


「新しい魔王様が登場というわけか…」


アレクサンドラは右足で地面を蹴り、振り上げると左足首を持つ男の右手を蹴りあげ、体を回転させ、着地とともに後方へ10m程下がって身構えた。


「お兄様、まだ覚醒してから時間がたっていません。ここは私が出ます」


男の背後から中学部の制服とベレー帽をかぶった小柄な少女が似合わない大きな槍を持って現れた。グングニルを持つ、側室No.3 となった源満天である。だが、男…魔王となった源元馬は彼女の肩をそっと持ち、自分が戦うという意思を示した。


「魔王自らとは光栄だ」


アレクサンドラは自分のウェポンであるギャラハットの籠手をつけた両拳を合わせ、舌をペロッと出した。だが、元馬は両手にはめたトールの手袋でファイティングポーズを取った。


「俺は黒のパンツは好みではない。履くなら白にしてくれ」

「こ、この!私の下着を見るとは、なんと破廉恥な」

「見たんじゃない。見せられたんだ。夏のパンツならともかく、お前のパンツを見たところで得した気分にはなれないから安心しろ!」

「ば…ばかにするな!それがレディに対する言葉か!殺してやる、絶対、殺してやる!」


アレクサンドラは、高速のパンチとキックを繰り出す。だが、すべて元馬の手で受け流される。


「この、この、この…」


すべてを受け流されて焦るアレクサンドラ。いくら当たれば大ダメージを与えられても当たらなければ意味がない。


元馬は手袋にはめられた5つの宝石のうちの緑のエメラルドとルビーをカチリ…と押し込むと強烈な2連撃をアレクサンドラに浴びせた。


「無敵の魔王の拳…風王拳!!」


アレクサンドラはその拳の直接打撃はかわしたが、この拳は交わしたことは何の意味もないことを理解した。強烈な突風が鎌鼬となり、アレクサンドラのドレスを切りとばし、両腕と両足のギャラハットのウェポンと先ほど元馬にガン見された黒のパンツとブラジャーだけになった自分に気づいた。


「きゃああああああ…」


いくら前魔王の側室でアダルトな状況にも経験豊富なアレクサンドラもこの格好は恥ずかしすぎた。その場で生娘のようにうずくまる。


「アレクサンドラ、代われ!おまえのウェポンでは魔王は倒せぬ」


先ほどまで目を閉じていたカテル・ディートリッヒが目を閉じたまま、右手にウェポンを召還した。その剣は一見、普通の剣に見えるが、抜かれた刀身から血がしたたり落ち、その血は刀から次々にじみ出ているのだ。


「魔王を殺せる4つのウェポンの1つ。フルティングの剣。これにて魔王は抹殺するべし」


強烈な一撃を繰り出す。それを右手の拳で受ける元馬。だが、カテルはにやりと笑った。


「受けたな、魔王!」


フルティングの剣から血しぶきが吹き出し、元馬のトールの手袋を溶かし、皮膚に刃が食い込んだ。元馬の拳から血がしたたり落ちる。


「ちっ・・」


元馬は剣を振り払うと後ろへ飛んだ。トールの手袋は自動修復し始めているものの、カテルの武器が自分には非常に相性が悪いことを察知していた。


「魔王よ、我は流血のカテル。これまでに倒せし敵の血によって呪われた我が剣は、武器を溶かし、その攻撃力を削ぐことができる。おまえのような直接打撃系の武器の魔王は、我が剣が天敵と化す」

「お兄様…ここは私が出ます」


満天がグングニルの槍を構えて再び、元馬の前に立とうとしたが、元馬がそれを制した。


「妹に守られたとあっては、兄貴のプライドが壊れる。それに大切な妹が傷つくのは見たくない」

「お兄様…」

「くっ、妹が側室とは汚らわしい…なんという、インモラルで破廉恥な!いくら魔王とはいえ、そのようなことは許さぬ!」


カテルは剣を振りかざし、さらに元馬に突進する。が、元馬も突進する。カテルの一撃を左肘で受け止め、血しぶきが上がるのもお構いなしに強烈な右手の一撃をカテルの腹にぶち込んだ。同時にすさまじい電撃がカテルの全身を襲う。


「魔王の弐の拳、雷王拳」


フルチングの剣を受けた左手をだらりと下げて、元馬はフィニッシュブローを決めている。

だが、カテルもだてにNO.2ではなかった。全身に高圧電流を受けて倒れたものの、剣を地面に突き立てて、気力で立ち上がる。


「一撃で私の体力を奪うとは…さすがは魔王。だが、貴様の左手は死んだ。私が次の一撃を出せば、お前は死ぬ」

「出せるか?」


元馬が言う。後ろに控えていた満天がグングニルを握りしめて歩いてくる。どう考えてもカテルは負けたと思った。最後の力を振り絞って、魔王と刺し違えることは可能だが、それにはこのNo.3の新側室を倒さねばならない。


(負けるのか?私が…。ファナの誘いに手を貸したこと自体が間違いだったか?)


いや、そうでなくても所詮、自分の役目は終わっていた。何もしなければ引退。魔界出身のカテルは残りの長い一生を過去の栄光を思い出して静かに暮らす。それこそ、長い時間である。そんな人生を過ごすなら、ここで討たれて生まれ変わるのもまた一つの選択であろう。


(だが、それでよいのか?私は…私は…)




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