夏妃と側室戦争~中編~満天の闘い
ついに男夏も魔王様に昇格。でも、その力は未知数。ヨメさんの立松寺ちゃんの方が戦力になります。この章は元馬の妹の満天ちゃんが大活躍します。人間出身では最強の力の片鱗、見せますよ。
ということをすべて立松寺の前で白状したわけだが、
(無論、濡れ場は相当省いてごまかしたが・・)
立松寺華子が、ワナワナ・・と震えているのが分かった。怒り爆発・・・ぶち殺されるか??俺はグッと目をつむった。だからといって、俺から別れるつもりはない。
立松寺が好きなことに変わりはないからだ。
(男の都合のいい発想だが)
だが、立松寺に平手で叩かれる(最低は・・)と思っていたが、立松寺の両手が頬をはさんだ。目を開けると立松寺がきりっとした目で見つめている。
「私の目を見て!土緒くん」
「は・・はい・・」
「私というものがありながら、2号サンを作るとは!」
「ご・・ごめんなさい・・すみません・・もうしません・・」
「しかも私とキャラのかぶるツンデレとは・・あなた趣味偏ってるわよ!」
そして、次に出た言葉は1%も予想していない言葉であった。
「罰として、私をお嫁さんにもらってもらいます」
「えっ?」
そういうと立松寺が背伸びをした。あの初デートの時の記憶が蘇る。俺と立松寺の体が光に包まれる。
新魔王と正室の誕生である。
女夏は魔王として覚醒し、眠りに入った元馬から体を離した。服を整え、ミニヴァンのドアを開けた。裸足の足にひんやりとした大理石の床が心地よい。火照った体も冷やされていくようだ。元馬は赤いオーラに包まれて数時間は目を覚まさないだろう。眠る元馬をもう一度見て、振り返ると女の子が立っているのを見た。自分よりも背が低く、まだ幼い感じである。(まさか・・敵?)女夏は身構えた。敵だとしても自分でどうこうできるわけではないが・・。
「夏様ですね」
その少女はそういった。夏の学校の中等部のセーラー服に白いベレー帽をかぶっている少女。どことなくランジェとファッションがかぶる。その娘はバスタオルを差し出すと、
夏に向ってこう言った。
「夏様・・いや、お義姉さまと呼ぶべきでしょうか。奥に従業員用のシャワー室があります。まだ、時間はありますから浴びてきてください」
「はい・・あの・・あなたは?」
「私は源満天、元馬お兄ちゃんの妹です」
「妹さん・・」
女夏はシャワーを浴びながら、満天のことを考えた。妹って、元馬くんに妹がいてもおかしくないけれど、
(でも、今、存在できるって・・)
そう、バトル空間で存在できるのは、魔界か天界の関係者か、魔法の武器を所持した戦闘可能な人間のみである。
(まさかとは思うけれど・・)
夏がシャワーを浴び終わると服が用意されていた。このディーラーの女性用制服であったが。
「お兄様は数時間目を覚まさないことは知っていますわよね。それまでは私がお兄様を守ります。夏様は最後の魔王様候補のところへ向ってください」
「最後の候補って・・それに守るって・・」
「橘隆介、あなたの幼馴染で、あなたの3人目の夫でしょ。私は心配しないで。お義姉様と違って私強いですから」
そう言って右手を差し出すと武器が召喚された。
「グングニル・・魔狼殺しの槍。側室としての私の武器」
右手甲に小さく、03と記された文字が見えた。
「早く行きなさい。あなたの家に向うといいわ。途中のグールはほぼ片付けておいたから、危なくありませんわ。それに敵側室も・・早く・・」
夏を急かせた。彼女が走り去る姿を見て満天は大きな声で店の屋根に向って叫んだ。
「夏お義姉様を追う前にやることがあるでしょう!」
屋根から女性が2人、ストン・・と下りてきた。一人は大きな死神の持つ鎌を持ち、もう一人は柄に草が絡まった槍を携えている。
「側室No.9、マリア・ハミルトンと申します」
大きな鎌を持った女性が丁寧にお辞儀をした。
「わたくしは、No.5 オードリー・アストレーアです。お見知りおきを」
それを聞いた満天はクスっと笑った。そして皮肉たっぷりに、
「No.8のファナが旗頭なのにそれより上位の者が組するとは、情けないですね」
オードリーの顔が怒りで赤くなった。
「小娘に何が分かる。わたくしはファナの考えに賛同しただけ。自分で決めたことだ。強制されてではない」
「私も同様だ。小娘がここで死ぬがいい!我がウェポン、カロンの大鎌、小娘を切り刻め!」
マリアの大鎌が満天を襲う。満天は軽く後ろに下がって切っ先をかわした。
「魔剣、テュールよ。今こそ、力を解放せよ!!」
オードリーの左手に大剣が召喚される。それを体に似合わずブンブン振り回す。
「武器は力なりとはいうけれど、お二方ともかなりお強そう。ですが、満天はお兄様を守らねばなりません。申し訳ありませんが、ここでゲームは終えていただきます」
満天の右手に握られた魔槍グングニルが青く光る。そして満天が消えた。いや、音速の速さでマリアに迫ってきた。
(くっ・・たかが音速、見切れる・・)
地面が削られ移動する高熱で煙が上がる、マリアはそれより速く後ろへ下がるが、さらに満天のスピードが上がる・・
(光速か、だが、まだ私の方が速い・・)
グングニルの切っ先をかわし切ったと思った瞬間、背後から槍を突き刺された。まさに一撃・・
(うそ!光速よりも速いなんて)
「ゆ・・許さないわ!」
オードリーは、テュールの剣で3度斬りつける。切っ先をかわす満天。寸分の差でかわしたはずだが、除け終わった後、右腕、左腕の袖と、左足のハイソックスが切れた。
「ふふふ・・何故だ?という顔だな。小娘」
「小娘じゃないわ。」
「我がウェポン、テュールは斬りつければ必ず当る。抜けば相手を滅ぼし、所有者を勝者とするのだ」
満天は何も言わず、先ほどの光速の速さでグングニルを突き立てた。だが、それより速くオードリーが自分の後ろに回りこむのが見えた。
(さすが、No.5、光速よりも速い、ならば・・)
さらにその外側を回る満天。光速を超える神速。先ほどマリアを葬ったスピードである。だが、グングニルはあと一歩及ばない。ドゴゴゴゴ・・・と両者は地面を削りながら止まった。満天の背中と肩の服が裂け、鮮血が飛び散った。
「ふふふ・・驚いた?側室もシングルナンバーはみんな強いけれど、ベスト5からはさらに別格なの。光速よりも速い神速の動き。そして手にしたウェポンも別格」
(確かに別格。だけど・・あのテュールの剣の特性は分かった。)
切っ先は紙一重でかわしているが、それでも斬られたのはおそらく、切っ先の先端が真空になり、それが体にヒットしたのであろう。要するにカマイタチの原理である。長期戦に持ち込まれると不利である。
(ならば・・)
満天は、グングニルを構えて目をつむった。青いオーラが体を包み、炎となって立ち昇る。
「まだ、名乗っていませんでした。あなたには名乗っても惜しくはないでしょう」
「何を小娘が、もったいぶりよって」
「私は源満天・・・魔王様側室NO.3!」
「No.3だと・・・」
オードリーはもう一度小さく、ナンバー3だと・・とつぶやいた。もし、そうなら、彼女の武器も別格である。グングニルの炎がさらに大きなリ、切っ先が自分に向けられる。
(来る!)
「負けるか!技量は互角!」
光速を超えた神速で近づく満天の動きは見える。テュールの剣は真空波で近づく敵を切り刻むはず・・だが、青い炎はテュールの剣の刃に生じた空気を凍らせた・・絶対零度の炎をまとった魔槍グングニルが剣をはじき、その先端が自分の胸に突き刺さり、空高く跳ね上げられた。オードリーは地面に叩きつけられた。
(息ができない・・負けたのか・・私が・・そんな・・)
ぐっ・・と喉が絞まり呼吸ができなくなった。そのまま気が遠くなった。
「よき敵でした。生まれ変わって幸せに暮らしてくださいませ」
満天はグングニルを地面に立て、そして空を見上げた。白い霧に合間に青い空が少しだけ見えた。
(あと、3人ですか・・。ひかるさん、無理してなきゃいいけれど)