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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
覚醒モード
16/139

夏とアフターデートと小姑

16話登場人物

源満天みなもとまて…13歳 中学1年生 元馬の妹 兄の元馬が大好きのブラコンの妹。兄と夏のデート現場を見て思いきった行動に出るが…

「順調のようだな・・」


 2日目のデートから戻ると待ち構えていたようにリィが部屋で待っていた。無論、無断侵入である。こいつは最近、遠慮がない。まあ、2階の部屋の窓のカギがいつも開いているからそこから勝手に入ってくるのだが、いくら夏が女とはいえ、心の中には男夏もいる。いつものエロい赤いピチピチ革服で現れると、男の方が動揺する。といっても、ふらふら手を出せばやはり地獄の悪魔。それこそ、地獄を見ることになろうが。


「元馬も隆介も完璧、私の魔王様状態。キスすれば発動よ、たぶん」

「そうだな。この鏡にもそう出ている」


例の真実の鏡だ。よく見ると周りの宝石が右回りは赤く、左回りは青く光っている。不思議な感じだ。


「右は魔王様の恋愛度、左はお前の恋愛度を示す。源元馬、赤、100、青95、橘隆介、赤100、青95、一柳宗治赤90、青99。宗治はまだデートしてないから100にはいってないが、後はお前しだいだ。だが、どうもおかしい。3人ともこうまで適合するとは・・今までに聞いたことはない」


今までも魔王候補は複数いたが、正室の行動しだいでだんだん淘汰され、最後の一人に絞られてきたものだが、今回は候補3人とも残った。つまり、夏がキスすれば3人とも魔王に覚醒してもおかしくない。


(3人も同時に魔王様が誕生するなんてありえないが。)


「もう、夏オネエ様・・私というものがいながら、男とデートするなんて不潔よ不潔」

(えっ?)


リィの後ろにひかるちゃんが隠れていた。しかも、玄関から正式に入ってきたらしく、お泊り用カバンを抱えている。


「ひかるちゃん・・今日、泊まるの?」


おそるおそる聞く女夏。いや、心の中で男の俺も聞いていた。なぜなら、そろそろチェンジしそうな気配があるからだ。心が男に戻ったら・・・(ああ!俺の狼を制御できる自信はない!)といっても、体は女だから間違いが起こることはないが、たぶん、悶々として一晩寝られないだろう。


「まあ、許してあげる。でも、その代わり今日は私と添い寝してね。夏ネエ様」

(ああ・・明日は寝不足で宗治先輩とデート決定である。)


 一方、昨日の楽しいデートを終え、今日はその分、がんばったバイトから帰った源元馬は2人の訪問者を出迎えることになった。2人同時ではなく、入れ替わりで現れたわけだが。

一人はずいぶんご無沙汰していた人物だった。源満天みなもと まて、妹である。妹といっても本当の妹ではない。正式には従兄妹であるが、わけあって本家の養女となったので元馬の妹という立場の女の子である。ちなみに中学校1年生。4つ下の妹がいつもの清楚な和服を着て、アパートの扉の前で背もたれして待っていた。


「お兄様、バイトもいいけれど、ちゃんと食べてる?」

「なんだ満天か。父さん、母さんは元気してたか」

「家族はみんな元気よ。相変わらず、忙しくて一緒にいないけど・・」

「そうか。」


金持ちの家は家なりに苦労がある。父はビジネスに忙しく、世界中を跳びまわっているし、母も社会的な慈善団体活動でてんてこ舞いで、家族揃う時がない。元馬が実家にいた時のことを思えば、きっと満天は寂しく家で過ごしているのだろう。


「お兄様のことだから、部屋はすごく汚いと思って、満天、掃除に来ちゃった。ついでに何か作ってあげるよ」


そういってドアを開けさせる。目の前には比較的整頓された部屋が広がった。だいぶ前に徹底的に夏が掃除してから、もしや、また夏が来てくれるかも・・と期待した元馬の行動で保たれた結果であった。


「やっぱり・・・」


この中1ながらマセた妹はそうつぶやいた。そう、兄の浮気を知っている小姑のような表情である。


「お兄様が昨日、見慣れない女性と街中でデートなさっているのを満天は見ました」

「えっ?どこで?」

「橘屋デパートですわ。商売敵のデパートでデートなんて、次期、源グループ総帥としていかがなものかと思いましたわ、私」


(おまえも商売敵のデパートにいたんだろう!)という突っ込みは止めておいた。その10倍言い返されるに決まっているからだ。


「声をかけてくれれば紹介したのに」

「かけましたわ。お兄様ったら、鼻の下を伸ばしてその女性の方ばかり見ているから、私のこと完全に無視でしたわ」

「え?」

「確かにおキレイなお嬢さんでしたわ。でも、お兄様、お忘れじゃなくて!」

「何をだ?」


はっきり言って元馬はこの妹は苦手だ。可愛いが自分を束縛するような口調で迫ってくる。元来、フェミニストの元馬は必然的に言われたい放題である。


「お兄様は、私をお嫁さんにしてくれるっていったわよね」

(また、それか!)


それは満天が養女になった時のことだ。元馬が10歳、満天が6歳。養女となって本家に来た満天が、不安で泣いているときに当時は小さな紳士だった元馬が、


「満天ちゃん、泣かないで。僕のお嫁さんにしてあげるから」


今思えば、小学生じゃなければキモイ発言である。だが、満天はそれで


「お兄様大好き~」


になってしまった。嫁さんのようにいろいろ世話を焼く。しきたりで離れて住むことになった幸いしたが、こう付きまとわれては好きな女の子とデートもできない。(いや、昨日してるし・・)


「もうお兄様、浮気は許さないんだからね」


胸をぽんぽん叩く。ちょっと危ない発言である。元馬は


(俺はロリコンでもシスコンでもないんじゃあ・・・)


と心の中で叫んだ。この妹なら、夏のところに押しかけていってお兄様と別れろ・・と言い出しかねない。まあ、それも将来の義理の妹を紹介できるからいいかなあ・・なんて思っていたら、その締まりのない顔になり、それを見た満天は怒り心頭になった。


「私のこと無視して、彼女のこと考えてるでしょ!」


(お前はエスパーか!)


「もう許さない!これでも食らえ!」


満天が飛びついてキスをしてきた!!


(ちょっと、まて・・満天)


まて、まて・・ってこれは受けるな?なんてちょっと頭を過ぎったが、これはまずい展開になった。だいたい、ファーストキスは夏と!と思っていたのにショックだ。唇を離して満天はにっこり微笑んだ。


「これで許してあげる。彼女とはまだ何でしょ。ふふん・・勝った」

「勝ったって・・おい、満天、ふざけるのはよせ!」

「わーい、怒った怒った、だけど、お兄様のファーストキスの相手はわ・た・し」

「わーっ、待て、満天」


だが、そのとたん、満天の体から光があふれた。まぶしさに目を閉じる元馬。

時間にして5秒くらいであろうか、光がおさまりきょとんとしている満天。


「お兄様、わたし・・帰ります・・」


先ほどの元気がない満天はドアを開けて、元馬が呼び止めるのも聞かずにいなくなってしまった。いったいどこへ行ったのか?しかも、あの光は?

パチパチ・・と手を叩く音に元馬は気がついた。最近、学校に着任した外人の教師である。

名前は確か、ドミトルとか言ったような・・そいつがなぜ、自分のところにいるのか分からないが。


「まあ、妹との一発はカウントしません。私的には・・」

「一発って、キスだろう!」

「キスです。でも、妹です。血を分けた妹ではないとはいえ、少々背徳の臭いがしますね。ああ、彼女は従兄妹でしたね。従兄妹は結婚できますから背徳ではありませんか」


(どうして、こいつが俺の家庭内事情を知っているのだ?)


黙ってにらみつける元馬。こいつはただの教師ではない。


「いやいや、今日参ったのはそのことではありません。これを渡したかったからです」


そういうとドミトルは、一対の手袋を手渡した。


「トールの手袋。かつては雷神トールが武器であるミッショニルというハンマーを使いこなすのに使ったとされる防具です。今は改造してあって、両拳に魔法の宝石がはめてあります。赤いガーネットは炎の力を、黄色のトパーズは雷の力を、ブルーサファイヤは水の力を、緑のエメラルドは大地の力を、そしてダイヤモンドは守りを、ルビーはスピードをそれぞれ司ってます」


そう言って、元馬の手に握らせたグローブ。ずっしりと重い。


「だから、何なんですか?押し売りなら間に合ってます。俺には金がない」


怒鳴った元馬だったが、それより迫力のあるパンチが元馬のこめかみをかすって止まった。


「これを装着して戦えば、あなたの大事な女性を守ることができますよ。約束したのでしょう?君は。守るといった以上、約束は守らなきゃ・・。これを持ってないと約束は守れない。火曜日の午前9時まで必ず、体に身につけておきなさい。そうしないと君は候補からはずれる・・」

「候補って・・それに夏に何かあるのか?」

「まあ、君の場合、先ほど貴重な戦力を作りましたから、まったく彼女の役に立ってはいないとはいえませんが」

「いったい、何を言っている!」


受け取ったグローブに視線を落とし、再びドミトルを見たが、満天と同様にいつの間にかいなくなってしまった。手にしたグローブの異様さだけが残った。


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