書き換える リィVSカテル
カルマさんの次にあの怖いカテルさんまで…宗治先輩の女を盗りまくり?ちょっと、終盤に近づいて暴走気味の俺
実はチュニスに戻った時にリィ宛にカルタゴの大賢者オージンから、イレギュラーの魔王の隠された能力について記述した手紙が届いていた。魔王にはいくつかの特殊な能力があると思われるが、そのうち、2つは今回で解放されるとのこと。一つは「強化」自分の側室を愛撫するとその側室の力が強化され、特殊能力が付与される。
もう一つは「書き換え」
他の魔王の側室のおっぱいに吸い付くとなんと覚醒がリセットされ、すかさずキスをすると自分のモノになるというある意味「凶悪」というか、なんというか…。そもそも、自分自身の攻撃力は皆無であるので、おっぱいに吸い付くなど無理な話だが、チャンスがあれば可能にしてしまうというだけで、他の魔王には驚異的な能力ではある。
「まさに種馬の魔王ならではの能力アルな…」
呆れ顔のランジェに気を失ったカルマさんを預けて、俺は美国ちゃんと大激戦を繰り広げているリィとカテルさんのところへと向かった。
(次のターゲットは…カテルさん…マジですか?あのまじめで超怖いお姉さんをモノにする?立松寺さん…本気で俺にやれって言うのですか?)
「カテル・ディートリッヒ。もはや、負けを認めて降伏せよ!」
リィは自分の大軍に挟撃され、壊滅しつつある中、孤軍奮闘するカテルを見つけ、そう叫んだ。宗治の本軍を通すためにリィの軍を分断したものの、逆に左右から挟撃されることとなったが、それは初めから分かっていたことだ。暴虐の魔王の本軍が目標の激熱の魔王の軍に肉薄した時に、カテルの軍は孤立無援の捨て石であった。
「いや、お前を倒せば、我が兵士も生き残るチャンスがある。リィ・アスモデウス…いざ、勝負せよ」
カテルはフルティングの剣を抜き放ち、リィに向かって突進してきた。
(奴の技はすべて見切っている…)
リィはカテルのことが気の毒に思った。彼女は暴虐の魔王の愛に包まれていない。最初の基本スペックのままだ。基本スペックが高かったので、今まで自分も苦戦したが、イレギュラーの魔王に愛されて、進化してきた自分はもはや、カテルよりも上になったと実感してきた。最近、力が目覚めた魔王の「強化」により、リィのウェポンである魔槍「フィン・マークル」は凶悪な力を付与されていた。カテルが進化していないなら、勝敗は明らかであった。
カテルの必勝パターンは、剣の特殊攻撃であるブラッディクロスでリィの防御苦力を奪い、あとは剣戟で圧倒する方法だが、リィはそれよりも早く自分の攻撃に移る。
「フィン・マークルの特殊能力解放!ミラー21発動」
魔槍を振り回し、地面に柄を突くと、カテルの周りに21枚の大きな鏡が現れる。
「な…なんだ、これは…」
鏡であるのに映ってるのはカテルではなく、リィである。外側にいるリィが映るはずがないのに…。
「こんな子供だましで私の動きが止まるものか。ブラッディ・クロス!」
血しぶきで作られた十字架が正面の鏡に直撃する。だが、鏡は瞬時にリィからカテルに映像を変換…ブラッディ・クロスの防御破壊がなんとカテル自身に降りかかった。
「きゃあああ…」
防具が溶かされ、ダメージを受けたカテルはその場に片膝をつく。
「カテル、これまでだ」
リィが魔槍フィン・マークルを突きだすと、21本の槍がカテルを四方八方から突き刺した。
「ミラー21の攻撃は物理攻撃ではない。鏡は虚構、攻撃は対象物の精神に作用する。だが、槍に突き刺されたという事実で精神は破壊されてしまうのだ」
つまり、体のダメージはないが精神ではダメージを受けたという記憶は残るのだ。心が死んだと思えば、精神は死を迎え、重傷を負ったと思えば、そのような精神状態になる。カテルはその場に崩れて身動き一つできなくなった。
倒れて全身が痙攣をしているカテルにリィが一歩一歩近づいていく。せめてもの情けで、槍で突き、肉体的な死で楽にしてやろうと思っていた。仕える魔王は違えど、同じ魔界の側室として名誉ある最後を与えたかった。
「カテル…これで楽にしてあげるわ!」
リィがフィン・マークルを大きく振り上げた時、大きな声がリィに向かって放たれた。
「待て!リィ!ストップ!」
俺はまさにカテルさんがリィによって殺される瞬間に割って入った。1秒遅れたらカテルさ
んはあの世行きであった。
「なんだ、夏くんか」
リィが俺を見つけてそう間の抜けた返答をした。
「とにかく、その槍はしまいなさい」
「いや、このままではカテルがカワイそうだ。トドメをさしてやるのが女の矜持だ」
「カテルさんは、仲間にする。これはお前の主人たるイレギュラーの魔王の命令だ」
命令だという強い口調にリィがびくっと反応する。俺はリィの右手を掴んで振り上げた槍を降ろさせる。それが強引だったのでリィは驚いて俺を見た。
「殿下にしては強引だな。私を力づくでは止められないのだろう」
「ああ。止められない。だが、そうしたらお前のこと嫌いになるからな!」
「バ…バカ!そんなこと言ったら、私は夏くんに逆らえなくなるじゃない…でも、今さらカテルを救ったところで、彼女は絶対に仲間になんかならないわ。彼女は暴虐の魔王の側室なのよ」
「確かに彼女は宗治先輩に縛られている。だから、俺がそれを開放してやるんだ」
「開放って?」
リィは怪訝な顔をする。このお姉さん、開放するために行うことがきっといかがわしいことだと予想している。さすがは序列第1位である。そしてそのいかがわしい予想は見事なまでに当たってしまった。
カテルさんのブラッディクロスで破壊された戦闘ドレスのから、ぽろっと出た○○に吸い付いて「書き換え」を発動する。カテルさんも全身が光り、5の数字が消えていく。
痙攣を起こしていたカテルさんの体も治まり、穏やかな表情に変わる。カテルさんは元々目を閉じているのだが、俺が顔を近づけるとその目がパッと開いた。
カテルさんの開けた目を見たことはあまりなかったので印象がなかったが、右と左の瞳の色が違う金銀妖瞳である。俺は驚いてその行為を中断した。カテルさんは右手の甲を唇に当てて、拒否の体制を取った。
「お願いです。あなたの側室にするのは待ってください」
「なぜ?とは聞かないよ。宗治先輩のことが忘れられないの?」
「イレギュラーの魔王様にお仕えすれば、あの方と戦うことになります。それだけはできません。魔界のためにこのカテル、命はいつでも捨てるつもりですが、今だけは…堪忍してください」
こう言われては鬼畜でない俺は中断するしかなかった。リィにカテルさんを預け、戦いの行く末を見守るしかない。