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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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カルタゴの戦い 後編 その4

後方で状況を分析していた天智の魔王こと、橘隆介は配下の第13側室三ツ矢加奈子から、宗治の主力が突入してきたという報を受けた。


「杏子ちゃんの予想通り、先輩はあえて罠に足を踏み入れてきたか」


「メグルさんが間もなく到着します。彼女とともに前進なさいますか」


昨日、補給基地グールモンの守備をしていた序列第7位側室メグル・インドラ・ハヌマーンの7千の軍を呼び寄せていたのであった。


「敵の中に藤野蝶子さんがいません。ケガひどくて戦場に出ていないことも考えられますが、おそらく、杏子さんの言っていた通り、グールモンに向かっている可能性もありますが。よかったのでしょうか?」


心配そうに加奈子は年下の魔王にそう言ったが、当の魔王は加奈子の手をぎゅっと握り、


「心配はいらないですよ。先輩。これも杏子ちゃんの作戦の既定路線じゃないですか」


(もう、魔王様ったら、また私のことを先輩と呼んで…)


 ちょっと顔が赤くなる。天智の魔王は夏妃のことが一番好きであることは加奈子も知ってはいるが、夏妃一筋で自分の側室には一切手を出していないと噂される暴虐の魔王とは違って、この魔王は器用に遊んでいる。特にメグルと杏子がグールモンに移動してからは、自分しかいないこともあって

(いつも彼を豊満な肉体で誘惑するエセルはケガ療養中でいないのもあって)、夜のお勤めの相手は自分が一身に受けていた。


(もう、年下のボンボンのくせに夜は魔王様なんだから…)


と加奈子は昨晩の出来事を思って、自分の右手をさりげなく握る隆介の手を左でつねった。


「痛っつ…。何するんですか先輩」


「あなたは調子が良すぎます。それに昨晩は先輩なんて呼び方をしなかったくせに」


「いや、それはその…」


「まあ、よいですわ。この戦いは結局のところ、あなたの本命の彼女を取り戻す戦いですが、あなたを慕う私たちは、命をかけてお仕えしているのですもの。そういった矛盾をあなたは、すべて受け入れてくれんでしょ…」


「ああ。僕の力が及ぶかぎり、君たちの願いはかなえてあげられるよ」


他の魔王の側室の関係は分からないが、天智の魔王の場合は、単なる愛情だけでつながっていないことが特徴でもあった。メグルちゃんは単純に隆介が好きなようだが、杏子は持ち前の才能を軍に生かすことができて、キャリアを認めてもらえることでつながっているし、自分は情報処理能力を買われている。エセルは敵討ちの願いをかなえるために仕えているふしがある。


(まあ、それも愛なのかもしれないけれど…)


加奈子は以前、杏子と話した戦後のことを思い出した。


「宗治先輩はとりあえずの敵ですが、隆介くんの次の敵は誰だと思います?」


「それはカオスなんじゃ…」


「あらあら、情報分析のプロの三ツ矢先輩らしくない答えね」


「夏妃さんを巡ってと考えると元馬くんでしょうが、そんな単純な話ではなさそうね。杏子さんはどうお考えですの」


「イレギュラーの魔王」


そう杏子はつぶやいた。


「夏君?でも、彼は魔王といっても人間ですし…」


「そうかなあ。なんの力もないし、率いる軍団もないに等しい。でも、彼の周りに集まる人材は1級品よ。みんなあの軟派な女好きに心惹かれている。不思議に思わない?」


「それは確かに…」


「しかも側室同士、争うこともなく仲がいいわ。私たちのように利が絡んでのことならともかく、あそこは単純に愛情だけでつながっているんでしょ。魔王様自体にはなんの力もないのですから」


「カリスマですか?」


「あの魔王は女を引き付ける何かがあるのよ。そういった意味ではもっとも魔王様にふさわしいのかもしれませんわ」


「もし隆介くんと夏くんが戦うことになったら…」


「戦力的には私たちの負けだわ。但し、夏妃さんが正式にこちら側に加われば、その心配もないのだけど」


そういうこともあって、イレギュラーの魔王には作戦内容は敢えて伝えず、今回も彼の主力である立松寺、リィ、ランジェを前線に出してその兵力をそぐことをさりげなく行ったのではあるが、それでも戦いを重ねるにつれて、より精鋭になっていくイレギュラーの魔王軍にいつか自分たちが駆逐される日がくるのではないかと2人とも考えていた。


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