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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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カルタゴの戦い 後編 その2

「夏妃さん…どうしても宗治のために力を貸してくれないの?」


出陣間際に、城に夏妃を訪ねたカルマは念を押した。夏妃はカオスとの戦いには参戦したものの、魔界軍との戦いには一切加わらないと宣言していた。戦闘終了後、負傷した兵士の回復を敵味方構わず実施し、立松寺華子にやられた自分たちも回復してくれたが、その後、城に籠ってしまったのだ。


「私は先輩と隆介君や元馬君の争いは見たくない…」


夏妃はバルコニーから出立する宗治の軍を見ながらつぶやいた。カルマにはそれが酷く卑怯に聞こえた。少し語気を荒めて、


「夏妃さん、この期に及んで好きな男を決められず、誰も助けないなんて卑怯じゃなくて?」

「卑怯?」


「だってそうでしょう?宗治は今、絶体絶命なのよ。どう見たってこの戦いは負け。兵力差がありすぎるわ。でも、私もカテルさんも蝶子さんも宗治のために負けを承知で戦う。それなのに、唯一、宗治を勝者にできるあなたは、ここで傍観?ふざけないで!」


「カルマさん…」


「私たち3人は命をかけて宗治のために戦うのに、彼の寵愛は一度も受けたことはないのよ。彼の寵愛はすべてあなた…・それなのにあなたは、敵の2魔王にも心を惹かれて傍観者を決め込む。宗治のために力を使わないのだったら、宗治の前から消えて!」


いつも仲が良かったカルマに強い口調で非難されて、自然に夏妃の目から涙があふれてきた。カルマの言うとおり、自分は卑怯だ。結論を出さずに3人を天秤にかけている卑怯な女だ。だが、悩まざるを得ないほど、夏妃の能力は絶大であった。


彼女が加担した方が勝つ…絶対勝利の女神であるからだ。


「少し、厳しいこと言っちゃたけど…私もこれであなたとはお別れかもしれないから、後悔はしていないわ。私もこの戦い後に決断しなきゃいけないと思ってる」


「決断って…」


戦場に向かうカルマの後姿に尋ねようと振り返った夏妃であったが、カルマの後姿を見てすべてを悟った。彼女も苦悩しているのだ。


(宗治先輩と別れるか、別れないか…)


別れる…はイコール、この魔界から消えるということもある。戦場で散ればカルマは人間界に転生する。すべての記憶を失って。それは宗治への思いを失うことだ。


カルマに変わって、一人の騎士が部屋に入ってきた。ドミトル伯であった。


「暴虐の魔王が出陣すれば、この城の警備も手薄になります。もし、私に命じられれば、あなた様を連れて、別の魔王の陣まで護衛することもできます」


「ドミトル伯、その気持ちはありがたく思っています。でも、私はここを動きません。私は運命に身を委ねます」


(この戦いの勝者を夫にするということですか…。暴虐の魔王が勝てばよし。2魔王が勝てばさらに争うことになる)


そうドミトルは思ったが、どちらにせよ、自分はこの女に付き従うと決めていた。人間界では、命を奪おうと画策したこともあったが、今は心底、この女を愛おしいと感じていた。だが、自分のものにしようという気持ちはなく、彼女の幸せのために自分の身を捧げようという気持であった。


 カルタゴの戦いの後半は、序列第5位のカテル・ディートリッヒと序列1位のリィ・アスモデウスの激突から始まった。兵数で勝るリィが有利かと思われていたが、一点突破を目論むカテル隊の突撃にリィ隊は初戦から押されまくる。


「カテルの奴、死ぬ気か?犠牲をものともしない戦い方だ」


リィはカテル隊の狂乱じみた戦いに自軍が次々と押されて後退していくのを歯がゆく見ていた。


「長くは続かないアル。あの戦い方の狙いはただ一つアル」


傍らにいたランジェはリィにそう問いかけた。ランジェの軍はリィの後ろに控えていたが、前線の様子を見に来ていたのだった。


「やはり我らの予想した通り、我らの軍を突破し、暴虐の魔王の軍が直接、激熱の魔王軍と相対するところに勝機を見出すつもりだろう。一騎打ちで魔王を倒せば、形勢は逆転するかもしれぬ」


犠牲をものともしない戦いぶりでは、いくら自分でも突破されてしまう可能性は高い。だが、次陣にはランジェの1万2千が控えているし、激熱の魔王の前衛は序列2位の源満天の1万がいる。カテル一人で突破などできない。


だが、カテル隊の後方から無数の矢が発射されて、正確にリィ隊の兵士の頭に雨あられと降り注いでくる。このため、リィの軍はますます混乱している。


「リィ、まずいアルな。カルマが出てきた。作戦の第2段階を早めるアル。被害が拡大する前に私の軍でカルマを止めるアル」


ランジェは馬を翻すと後方の自分の軍の元へと戻っていく。後方から抜け出てカテル隊の後方で援護をしているカルマ隊の横腹を襲うのだ。


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