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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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カルタゴの戦い 後編 その1

「立松寺さんの容態はどうなんだ?」


天智の魔王たる隆介が俺に尋ねる。後ろには彼のブレーンである序列13位の三ツ矢加奈子と序列15位の中村杏子が控えている。


「命に別状はない。だが、しばらく静養が必要だ」


俺はそう答えた。リィの軍と合流し、なんとか立松寺の軍団の秩序を回復し、後方に下がった俺は、商業都市チュニスを攻略し、そこを本拠地に暴虐の魔王討伐にやってきた、橘隆介、源元馬の両魔王軍の陣に報告にやってきたのだ。


「妃殿下元帥が戦場に出られないのは、少々誤算でした。ですが、我が方が有利なことには変わりがありません」


そう中村杏子が告げる。


確かにこの地には天智の魔王自らが2万、序列第7位のメグル・インドラ・ハヌマーンの8千、加奈子の4千、杏子の3千の合わせて3万5千。激熱の魔王の元馬が、2万人、序列3位の満天が1万、序列12位の宮川スバルの5千で合わせて3万5千。


そして俺ことイレギュラーの魔王は30人だが、リィの1万5千、ランジェの1万2千、美国ちゃんの800人と2万7千8百3十人…の軍団だ。立松寺華子がチュニスに下がったところで、一柳宗治の軍勢の2倍以上の戦力があった。


「妃殿下元帥は、敵の3側室に大ダメージを与えましたが、あちらには御台様がいらしゃいますから、あまり関係はないでしょう。ただ、3側室の軍はかなり損傷していますから、敵はせいぜい4万というところでしょうか」


自分の偵察隊からの報告で、加奈子はそう隆介に告げる。彼女の諜報活動はかなりのもので、すでにカルタゴの町に秘かにスパイを何人も入れているから、敵の状況が手に取るように分かる。


「カオスもしばらくはおとなしくしているはず。ここはあえて持久戦に持ち込んで、一柳先輩の戦力を徐々に削っていくことが必勝の策でしょうか」


そう杏子も言う。彼女は魔界軍の補給から作戦立案までをこなす参謀だ。


「杏子さんのことだから、すでに手筈は整っているのだよな」


「はい。一応、兵糧基地をカルタゴ南の村、グールモンに建設中です。このチュニスからでは遠すぎますので、そこを基地にじっくり攻める体制を作るのがよいと思います」


「そうだな。宗治先輩は強いからな。できれば、まともには戦いたくない。万全な体制でみんなで戦うのがベストだろうなあ」


そう元馬も言う。確かに暴虐の魔王と一対一では戦いたくはない。だが、これはそうさせたくない一柳宗治を誘い込む罠でもあったのだが。


「グールモンには誰を向かわせる?」


そう隆介は目の前の地図の駒の配置を確認しながら、杏子に意見を求める。


「メグルさんがよろしいかと。あと私もそこに出向きます。ロジステックは現地で行いませんと」


「では、先鋒はリィ・アスモデウス、エトランジェ・キリン・マシニッサ、夏と愉快な仲間たち(美国ちゃんのことか?)第2陣に元馬、お前が行ってくれるか?」


そう隆介が元馬に尋ねた。


「いいのか?隆介。俺が宗治先輩を撃破して、カルタゴ市内に突入したら、迷わず夏妃を探し出してモノにするかもしれないぞ?」


「ふん。お前がそんなに浅ましい奴じゃないことは知っている」


「ちっ…俺は浅ましい男になりたいんだがな」


そう冗談を言いながらも、宗治先輩はこの状況でも夏妃には手を出していないことを2人は分かっていった。たぶん、あの先輩は夏妃が本当に受け入れてくれるまで、自分からは手を出さないだろう。夏妃が宗治を選べないでいるのは、単純に自分たちがいるからで、もし、2人とも宗治先輩に殺されれば、夏妃は宗治先輩の手に落ちる。


殺されると言っても人間界出身の隆介と元馬は単に人間界に戻るだけだから、宗治先輩は容赦しないだろう。だが、それは2人にとっても同じだ。


夏妃が宗治先輩を選んでいないのは、彼女自身が戦場に出てこないことからも明白であった。もし、彼女が出てきたら…いくらこちらが数で勝っていても、勝てる可能性は0になる。


宗治は夏妃の力を借りて、3側室のケガを回復させ、大打撃を食った軍の再編成をしていた。兵力は4万程度しかなかった。自分の軍の一部を貸し与え、宗治は先鋒をカテルとし、そのサポート役にカルマ、その後ろに自分の2万を配置した。


敵の中央に兵力を集中し、中央突破して2魔王を直接対決で葬る作戦だ。


「蝶子…」

「はい、宗治様」


暴虐の魔王は序列第11位側室藤野蝶子を呼び寄せた。立松寺にひん死のダメージを与えられた藤野蝶子も夏妃の絶対回復で万全な体調であった。


「お前に兵3000を貸し与える。このカルタゴより出撃して敵の補給基地、グールモンを奇襲せよ。兵糧がなくなれば、敵は退却するしかないだろう」


「その通りです。宗治様」


藤野蝶子は今回は汚名返上だと心に誓っていた。夏妃がいなければ、自分は完全に戦線離脱を余儀なくされていた。ライバルに助けられた屈辱とこの重要任務を宗治が自分に命じてくれた信頼に応えようと心に誓っていた。


蝶子の部隊は夜の闇にまぎれてきた門より出撃し、大きく迂回して魔界軍の補給基地グールモンへの向かった。


先鋒のカテルは自軍の残存兵力5千と宗治から付けられた3千の合わせて8千を指揮していた。まずは魔界軍の先鋒、リィ・アスモデウスとの対決だ。これを打ち破り、暴虐の魔王の本軍を突入させることが任務であった。勝つことよりも進路を開くことと、できるだけ時間を稼ぐという任務であった。


「あの女と再び対決か…」


カテルはリィとの再戦に胸が高鳴った。彼女は戦う度に強くなっている。人間界に居る時は、旧側室の10位台にも勝てなかったのに、イレギュラーの魔王の側室になって以来、側室としては最大の兵力を持ち、一騎打ち能力も高まっている。


まだ、経験の差から、5位の自分とさほど変わらないが、そのうち抜かれることは確実だろう。名実と共に1位の真価を発揮することは間違いない。


主人たるイレギュラーの魔王の力だろうか…。


(側室は魔王様の愛によって強くも弱くもなると言うが…)


正直なところ、前魔王の側室であったカテルは、現魔王、カテルの場合は暴虐の魔王、一柳宗治であるが、彼を愛しているという気持ちはなかった。お互いの利害関係が一致しただけで、覚醒するためのキスを最初にしただけで、一度も愛されたことがない。


これは、蝶子もカルマも同じであったが、一柳宗治の愛情は、土緒夏妃ただ一人に向けられている。

愛されたことがないために、カテルの能力は基本スペックのみであった。イレギュラーの魔王に可愛がられて、満たされているリィにいつかは抜かれることは分かっていた。


「だが、私も宗治様についていくことを決めた身。この戦場で散ろうと悔いはない」


カテルは兵に命じて、予定地点まで進軍していった。


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