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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
119/139

リィの浮気 その5

魔界でのベストセラー写真集「魔王様と美姫16+2」好評発売中。

今なら、リィ様のフィギュア付き(笑)

大賢者オージン様なら、16人コンプリートだったりして

「うううむ…」


オージンが目を覚ました。


「わしはどうしたのじゃ?なんだか体中が痛いが…」


「オージン様、オージン様は外に出られて転ばれて意識を失っていたのです。私が中にお連れしました」


「ふん。お前になど看病されてもうれしくない。それより、そこの美人ちゃんに解放してもらいたいものじゃ」


リィが汲んできた水をオージンに飲ませる。


「改めまして、リィ・アスモデウスです。大賢者オージン様」


「おおっ…お主が序列第1位のリィ・アスモデウスちゃんか!」


オージンは急いでベッドの下のHな本の中から、分厚いグラビア本を探し出した。なんと、魔王の側室グラビアと称する本が出てきた。リィ、ランジェ、ファナ…と隠し撮りしたと思われる写真が満載。驚いたことに16人分揃っているのだ。


「リィちゃんは、民衆の中では1番人気なんじゃ。ここにサインをしてくれんか?」


自分の戦闘ドレス姿の写真を示されて、リィはとまどった。よく見ると私服で町を歩く姿や水着の写真まである。明らかに魔王様とのデート時に撮られた写真だ。


「あ…あの…オージン様。そんなことより、オージン様は封じられた力を開放する術を持っていらっしゃると聞きますが」


リィは本題に戻す。このエロ老人のペースに乗せられては、話が進まない。


「サインをしてくれたら、話してもよいが」


(ちっ…くそじじいが)


リィは大賢者に描いていたイメージが跡形なく崩れていくのを思いながら、サインをする。


「ついでにキスマークも付けてくれるとありがたいが…」


(要求がエスカレートしてないか?)


リィがグラビアのサインの端に軽くキスをする。ルージュによって唇マークが刻印される。


「うひょ~やった。激レア、アイテムに変身だ。リィちゃんのサインだぞ~」


「で、大賢者様、本題に入りたいのだが」


「今度は、そのおっぱいですりすりしてほしいのお~」


ばきっ…とテーブルにリィが拳で一撃を加える。たちまち、粉砕するテーブル。


「オージン様、ご冗談ですよね。オーホホホッ…」


「いや、冗談だとも、ホッホホ…」


オージンはリィのバカ力にビビッているようだった。さすがは第1側室。戦闘力でもひけをとらない。


「それで、だれが封じられているというのじゃ?」


「イレギュラーの魔王様です。魔王として覚醒してからずいぶんたちますが、人間の能力のままなのです」


「ふむ。イレギュラーの魔王はリィ殿を含めて、序列2位のエトランジェ殿、第4位ファナ殿…う~ん…ファナちゃんは前魔王時代から儂はファンなのじゃが…」


オージンは例の側室グラビアをペラペラめくって確認している。


「第14位カミラちゃんに第16側室美国ちゃん…この美国ちゃんは今、静かなブームなんじゃ。ブロマイドの売り上げも急増中なんじゃよ…」


オージンのどうでもよい解説をがまんして聞くリィ。


「こんなカワイ子ちゃんを5人も囲っていて、魔王としての力がないということはありえない。ヴリドラの神託で、魔王陛下はどれだけの軍勢を付与されている?」


「30人」


「な…30人だと…まさか?美少女ばかりの?」


「さすがオージン様。第251小隊を知っておられるのか」


「うらやましいのう…」


がくっ…とリィは体制を崩した。どうもこの老人と話していると調子が狂う。


「ヴリドラは儂が作った魔法のアイテムじゃ。遠い未来を見越して一番適した人数を付与するのだ。30人ということは、それに見合った能力を魔王陛下が秘めているということだろう」


「魔王様の隠された封印を解くことはできるのか」


「儂ならできる。だが、封印が解けないのはそれも何らかの理由があるのだ」


「理由?」


「まあ、それでも一つくらいないと魔王様自身も戦でお困りになろうというもの」


「それでは、魔王様の力を開放してくださるか?」


「いや、儂自身は中立の立場でいたい。もうじき、イレギュラーの魔王と暴虐の魔王が戦うだろう。どちらかに加担することは魔界の歴史を変えることにつながる」


リィは落胆した。この大賢者はちゃっかり中立の立場に身を置きたいことが分かった。確かに、リィたちに力を貸したことが分かれば、暴虐の魔王に処罰されることは間違いない。


「だが、せっかく、こんな遠くまで第1側室様がお出ましになられたのだ。一つだけ、開放する手助けをしてあげよう。リィちゃん、今、履いているパンツを脱いでくだされ」


「はあ?」


またエロ要求か?とリィは怪訝な顔になった。もう一度、ぶん殴るしかない。殺気を感じたのか、オージンは慌てて、


「いや、わしが欲しいとか、そんなのではなくて、アイテムを作るのじゃ」


「アイテム?」


「そうじゃ、魔王様の力を開放するアイテムじゃ」


「私のパンツでそんなことができるのか?」


「第1側室殿のパンツだからこそできるのじゃ」


大真面目に言う大賢者に、リィもそんなものか?と思って、ミニスカートから履いていた紐パンツを脱いで渡した。


「おおっ…このぬくもりがよいのお~」


両手でかざして匂いを嗅ごうとしたが、リィがぶっ殺すぞ!という目でにらんだのでオージンはあわてて、ガラスでできたカプセルにそのパンツを入れて、なにやら薬を1滴ずつ垂らして密封する。


「これを魔王様にかぶせるのです」


「えっ?かぶせる?」


そんな恥ずかしいことをするのか?とリィは思った。だがオージンは真剣な顔である。


「本当だな。大賢者オージン。もし嘘だったら、このリィ。この町を落とした暁には、オージン殿を討つことになるがよろしいか?」


「ああいいとも。その代わり、本当だったら、ランジェちゃんとファナちゃんに会わせてもらおう。あと、リィちゃんの脱ぎたてパンツをもう一枚…」


リィの冷たい目でオージンは要求を止めた。これ以上言うとこの側室に殺されかねない。


「リィ殿、そろそろお暇しましょう。なんだか、町が騒がしいようです」


イズルがリィにそううながした。


「それではオージン様。近いうちに…その時には激しい戦になるでしょうが。お体を大切にしてください」


「ああ、心得ておる」


2人を見送るオージンは、


(30人とな…伝説の力が解放されるとき、すべてが創生される…)


そうつぶやいた。近いうちにこの魔界が大きく変わる時代を迎えることをこの老人は確信していた。


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