リィの浮気?その4
大賢者オージン…だいたいこういうキャラはジジイなのにエロいというのが定番。
リィ様に向かってセクハラ行為をします。うらやましい…
それを窓ごしに見たイズルはリィの「うそアンアン声」を止めるように言った。リィはベッドで跳ねまわるのを止める。
「クスクス…」
リィは笑った。
「騙すためとはいえ、リィ様にはご無礼をしました」
「いや、いいんだ。久々に魔王様に抱かれることを想像したら、自然とあんな声になってしまった。ちょっとというか、ものすごく恥ずかしい」
リィは先刻までの自分の姿を思い出して顔を真っ赤にした。冷静に考えれば恥ずかしい。
「リィ殿」
イズルはリィの座っているベッドの隣に座った。
「いつか、あなたとそんなアバンチュールをしたいと言ったら、お手打ちにしますか」
イズルの本気の口調に思わず、リィはごくりと喉を鳴らした。
「冗談でしょ…」
「冗談じゃありませんよ。魔王様はあなたのことを愛して愛人となさったが、私は違いますよ。私はあなたを妻に迎えます。ただ一人の愛する女性です。どうです?魅力的な提案ではありませんか」
「フフフ…」
リィは笑った。
「確かに魅力的だが、イズル殿。残念ながら、あなたは私の好きな魔王様ではない。魔王様に愛されれば、私は2番目の女でも構わないのだよ」
(ふう…まあ、この時点では予定通りのお答えでしょうね)
と心の中で思ったイズルであったが、言葉はそれを感じさせない口調であった。
「そうですか。残念です。でも、リィ殿、先は長いです。あなたが振り向いてくれるまで、私は根気に待ちましょう。まあ、それはそれで、リィ様、そろそろ移動しましょうか」
イズルはドアを少しだけ開けて、監視の兵がいないことを確かめると、リィをともなってカルタゴの闇に消えた。
「何?リィ・アスモデウスに似た女がいたと?」
カテル・ディートリッヒは、副官の1日の報告を受けて聞き返した。
「はっ。しかし、再度の確認で別人だったとの報告でしたが」
「チュニスの果物商だと…ひっかかる。チュニスは以前、アスモデウス家の領地だったことがある。市長はリィとも親しいはずだ」
「カテル様、どこへ?」
カテルは戦闘ドレスをひるがえし、部屋を後にする。護衛の兵士が後に続く。
「その宿に確かめに行く。1個小隊を連れて行く。極秘で動くように」
「なにも総司令官のカテル様自身が行かなくてもよいのでは?」
「もし、もし、リィ・アスモデウスであったのなら、私以外に彼女を討ち果たすことはかなわないだろう。魔王陛下御不在の治安を預かる身としては、動くことが正解だと思うが」
「はっ…確かに」
急ぎながら、カテルはなぜリィがこの町に潜り込んだのか、その真意を測りかねていた。だが、近いうちにリィたちとの戦いは避けられない情勢だ。万が一、リィだったら千載一遇のチャンスである。第1側室を討ち果たせば、来る戦では有利になることは間違いない。
その頃、リィとイズルは町はずれの森にある一軒家を訪れていた。ここが大賢者オージンが住むという家だ。なんの変哲もない小屋であるが、煙突から煙が出ていた。まだ、起きているようであった。
トントン…とイズルがノックをする。
「だれじゃ?この夜更けに」
真っ白いひげを生やした小さな老人が顔を出した。頭はつるつるに剥げていたが、妙に血行がいい。ただ、右手にHな格好をした女性の写真集を持っているところがジジイらしさに欠けていた。
「なんだ、お前か。新しいHな本でも差し入れに来たのか?」
「いえ、オージン様。以前にお話ししたご側室様をお連れしました」
「なに?魔王の側室だと」
オージンはイズルの背後にいるリィに目をやった。
「おおおおおおっ…」
オージンは両手を広げて感動の雄たけびを上げる。
「イレギュラーの魔王様の側室序列第1位リィ・アスモデウスです」
リィの挨拶が終わるやいなや、オージンがリィに抱きつき、その爆乳に顔をすりすりする。
「きゃあああああああああ…」
リィは思わず、そのバカ力でオージンを突きはなし、床に叩きつけた。
「ん…きゅう…」
オージンは地面にめり込み気絶してしまう。
「はあはあ…イズル殿、この汚いエロジジイが大賢者オージン様なのか?」
「あいかわらずですが、確かにそうです。とりあえず、中に入りましょう。なに、いつものことです」
イズルはオージンを抱え上げると、手慣れたように小屋の中に入っていく。
小屋に中は魔界のアイドルの女の子の水着写真やら、グラビア写真やらで埋め尽くされていた。とても年寄一人暮らしの部屋とは思えない。