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魔王様と16人のヨメ物語  作者: 九重七六八
激闘モード
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デビルパレスにて その2

リィ様と愛を確かめる主人公…でも、強力なライバルが出現!この戦い、カオスとの戦いよりも重要で負けられません。

 憎悪の目でにらんだものの、魔王に向かって乱暴するわけにはいかず、代わりにジークフリートは、建前の外交戦略に打って出た。


「3魔王陛下。ご側室のこの狼藉、これは天界に対する侮辱と同等。どう謝罪なさいますか。我が天界軍は魔界のため、カンネの地で戦い、犠牲を払いながら勝利に貢献したのは明白な事実。その功績を無視し、恥辱で報いるのですか!返答願いたい!」


これには隆介も元馬も答えられない。それを知ってのジークフリートの狡猾な要求。


「謝罪として、第2側室エトランジェ・キリン・マニシッサの身柄を我が天界軍に引き渡してもらいたい。天界と魔界の同盟を記したテンペスト条約違反の罪で、この私自自身が取り調べをする」


「なんだと!」


俺は叫んだ。こんな奴にランジェを引き渡したら、ランジェがどんな目にあわされるか。


「では、イレギュラーの魔王様はどう誠意を見せる。ランジェがだめなら、第1側室リィ殿か、それとも正妃殿を差し出すのか」


 俺の中でプツンと何かが切れた。近くにあったケーキを掴むとジークめがけて投げつける。

だが、ジークフリートはそんな攻撃はなんなく避ける。だが、軽く目を閉じて首を右に傾けて格好つけたためにリィが投げた第2撃はかわせなかった。クリームチーズパイで顔がドロドロになったジークフリートは、激高した。


「なんたる侮辱。これは天界に対する宣戦布告と受け取ってよろしいか!」


「天界じゃない!お前個人に対して宣戦布告だ!」


俺は後先も考えずに啖呵を切った。周りの魔界人たちジークフリートの言動にはブーイングを、俺の言葉には歓声を持って応える。


そこへ会場の雰囲気を一挙に変える声が発せられた。


「両者そこまで!」


 そこに俺が…いや、人間界で生徒会長だった橘隆介を筆頭にみんな知っている人物。そう生徒会書記の朝日イズルがそこにいた。天界軍の高級将校の出で立ちである。そういえば、メグルちゃんも天界からのエージェントで生徒会に潜り込んでいたのだ。こいつも関係者でないはずがなかった。


「天界軍上級査察官、アサヒ・イズルです。魔王様ご一同は初めてではありませんが」


そういうとイズルは眼鏡をちょっとあげて、生徒会に居た時のように事務的にジークフリートに告げる。


「ジークフリート大司教。この度、卿に軍務違反の疑いがかけられている。今より、遠征軍の指揮権をはく奪し、館に謹慎するよう申し上げる」


「バ…バカな。誰の命令だ。この私の指揮権をはく奪だと」


イズルはロウで封印された命令書を広げた。


「元老院による勅命です。卿の軍は代わりの指揮官が来るまで一時この私が引き継ぎます。」


2人の兵士がジークフリートの両側に立つ。このまま、館に連行ということらしい。魔界で仮にあてがわれた宿舎に処分が決まるまで軟禁ということだ。ジークフリートは悔しそうにランジェの方をちらりと見て、観念したのか兵士に従って退室した。


 魔界と天界の同盟が破たんするか…という危機的な状況は、天界の元老院のジークフリートの大司教の更迭というすばやい対応で回避されたが、俺の方の心境は複雑であった。もし、あのままジークフリートと大立ち回りをしていたら…自分には力がないから、おそらく、パイをぶつけたリィとジークフリートが戦闘状態になったに違いない。またしても、大事な自分を慕ってくれる女の子を犠牲にするところであった。


「畜生!俺に力があれば…」


イズルが隆介や元馬に拝謁している最中、俺はバルコニーに出て自分の無力さに自己嫌悪に陥り、テラスの手すりに寄りかかって空を眺めた。分厚い雲で覆われた月が少しだけ顔を出し、月明かりが俺の顔を照らす。


「はあ~」


思わずため息をつく。


「どうしたんだ?私の魔王様は…」


ふいに声をかけてきた女性。聞きなれた声だ。当然ながら顔を見なくても誰だか分かる。


「リィ…さっきはごめん。俺のフォローをさせてしまって」


「ハハハ…あのパイに汚れたジークの奴、傑作だったな」


「なあ、リィ。お前って、俺のどこが好きなんだ?」


まじめなことを聞いてしまった…と自覚して俺の顔が熱くなる。そんなことを聞かれたリィも顔が赤くなる。彼女のこんなところがたまらなくいいのだが…。


「どうしてそんなことを聞くのだ」


「俺は魔王の一人だけど、隆介や元馬と違ってなんの力もない。戦争でも役立たずだ。こんなやつの側室よりも、もっと強い魔王の側室になった方が安全じゃないか」


リィは黙って俺の傍らに来て、テラスの手すりに寄りかかった。


「お前は私やランジェやファナが、天智の魔王や激熱の魔王の愛人になってもいいと思っているのか?」


「いや、それはいやだけど…。俺ではみんなの命を守れないなら…」


「バカ!」


リィは俺を抱きしめる。リィの爆乳が俺の顔を埋める。


「私はお前が魔王だから好きじゃないんだ。それはファナもランジェもカミラも美国もそうだ。華子ちゃんだってそうだろう」


「・・・・・・」


「魔王としての力はなくても、お前は優しい。お前はかわいい。そしてお前は非力と分かっていてもいざとなったら、駆けつけてくれる私の王子様だ。そんなお前…ううん…私は夏くんが好きで好きでたまらないんだ」


「リィ…おまえって…」


かあ~っというセリフがリィの顔付近に書かれているかのように真っ赤になるリィの顔。


「恥ずかしがるリィの顔って、超かわいい~」


「バ…バカ~」


リィの張り手が俺の頬を直撃する。思わず吹き飛ぶ俺。この悪魔姉さん、時折、手加減を忘れてしまうことがある。




「ううううう…リィ…俺、ここで死んでしまうのか?」


ひんやりとした感触で意識を取り戻した俺は、冷たいタオルで顔を冷やされ、リィの太ももで膝枕状態の自分に気が付いた。


「な…夏くんがバカなことを言うからこうなったんじゃない」


最近分かって来たことだが、リィは二人きりの時でデレの時は「夏くん」と俺のことを呼ぶ。ツンの時は「お前」だから分かりやすい。まあ、公式の場では「殿下」とか「魔王様」だが。「夏くん」という時は多少のお触り行為は許容してくれるのがリィだ。俺は手を伸ばしてリィの顔をはさむとグッと引き寄せた。


「もう、みんなが見てるかもしれないのに…」


「大丈夫…みんな中だよ…。それに魔王と側室の行為に誰も邪魔できないよ」


「もう…バカ…」


甘い甘い口づけ。耳元にやわかい感触が覆いかぶさる。


(あ~やっぱり…リィはかわいい。初めて出会った時は超生意気な上から目線お姉さんだったが、こんなに可愛くなるとは…)


俺の脳裏にそんなことが浮かんだ時にふいに声をかけられた。慌てて顔を放す。


「リィ・アスモデウス様にイレギュラーの魔王様、アサヒ・イズルです。ごあいさつに伺いました」


隆介や元馬とあいさつしたのだから、この天界の客人としては当然ながら、まだ挨拶していないイレギュラーの魔王こと俺と序列第1位の側室リィ・アスモデウスのところにくるに決まっている。


「ああ、イズルか。お前は姉貴と一緒に生徒会やっていたんだよな」


「はい。元老院の命令で潜入していました。ランジェ様やメグル様には秘密の任務でしたので、お二人も私が天界人だとは気が付かなかったようです」


確かにこの男、超影が薄かった。女だった時の記憶でも黙々仕事をこなす姿しか思い出せない。


「ところで、リィ様。折り入ってお話があるのですが…」


「私に話?」


イズルは急に小声になって何やらリィにこそこそと話すとリィは俺を残して、さっさとイズルと一緒に出て行ってしまった。


(おいおい…これからいいところだったのに…)


イズルがこなければ、今晩はリィの部屋に直行か、彼女が俺の部屋に忍んでくる流れだったのに残念だ。だからといって、正妻の立松寺は未だにHなことはご法度だし、ファナとカミラは療養中だし、ランジェは今日のことがあるから駄目だろうし…まさか…美国ちゃんと…(それは、ないない)


「今日はおとなしく寝るしかないよなあ。だけど…イズルの奴、リィに話があるって」


俺は何だか嫌な予感がした。


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