はじまりは夢オチ?~覚醒モード~
魔王様と16人のヨメ物語お読みいただき、ありがとうございます。
この物語、魔王とその正室や側室の女の子が覚醒する「覚醒モード」
と本格的に魔王様が動き出す「胎動モード」、勢ぞろいした魔王様と16人のヨメが戦う「激闘モード」の3部作です。長編になりますが、気長に気軽に読んでくださいませ…。
赤い衣の女、リィ・アスモデウスは、勝ち誇ったように相手に指を突き出し、2本の牙が少しだけのぞく色っぽい唇を開き言い放った。
「さあ、魔王様、今こそ、そのお力を開放する時です!」
「えっ?」
俺は我に返った。(魔王って誰?それにこのダイナマイトボディのお姉ちゃんは?)
この女がリィ・アスモデウスという名前であることは、なぜか脳裏にある。だが、自分は
ただの男子高校生に過ぎない。そしてこのリィという女が何者かも分からない。
「力を開放って?」
「バカか、お前は!」
俺が問い返した瞬間に白い衣の女・・というか、見てくれは小学生の女の子だが、気品と威厳で力強さを感じるエトランジェ・キリン・マニシッサに殴られた。この小さな女も名前は脳裏に浮かぶが、よく分からない。
「土緒君…いや、私の魔王様…。あなたにはすごい力があるのよ。今、それを使うのがあなたの使命よ」
聞きなれた声に振り向くと、後ろには、付き合っている彼女の立松寺華子がスレンダーな学校の制服姿で立っている。
「た…立松寺」
俺は思わず彼女の両手を握りしめた。彼女のぬくもりが伝わってくる。
(そうだ!これは夢だ!夢に違いない。ならば、夢の中でも立松寺にいいところを見せなきゃいけない。それで立松寺も俺にさらに惚れるに違いない。そうじゃなくても、彼女は俺にぞっこんなんじゃ。ふっふふ…)
「あ~ん…すきすきすき、大好き土緒君。華子、あなたに全部あげちゃう!」
なんて言う立松寺の姿を脳裏に想像して、俺は正面を振り返った。
(敵とやらを軽くやっつけて、ハッピーエンドの夢)
だが、目の前にいるのは、強大なドラゴン!!高層ビルのでかさのドラゴン!
(えっ?うそ?いくら夢でもこれは違うでしょ?ゲームの夢か何か??)
「ゲームじゃない!本当の闘いだ」
俺の心の声が聞こえたとしか言えないリィの怒鳴り声。だが、俺には彼女の頭の上にHP250、MP120なんて数字が見える。ランジェも立松寺3ケタの数字が浮かんでいる。俺の数字はHP15でMP8…明らかにゲーム夢だ。しかもできそこないのクソゲーだ。
(ゲームもクソゲーなら、俺もクソキャラじゃないか?どこが魔王様なんじゃ?いきなり、ボスキャラ?ストーリーは?ゲームバランスは?俺の職業って魔王??)
ちなみに対する巨大なドランゴン様はHPは3000!!(マジ、死ぬ!)
しかも、そのドラゴン様が大きな口を開けて、炎のブレスを発射しようとしているではないか!(こちらのターン、終わっていないんですけど…)
これは悪い夢に違いない。思わず目を閉じる俺。
「こんな夢オチ嫌じゃあ…」と大声で叫ぶ。
「目を覚ましたかい?ハニー」
俺はベッドに横たわっていた。なぜか男が傍らに寝ている。何だか知っているような雰囲気の男。だが、光で顔がよく見えない。そいつらが俺の顔を撫で回し、いや顔どころか、胸や足を撫でまわす!!
「ちょ・・・ちょっと待て!気持ち悪いことするな…というか、わたしの体に触るな!」
(えっ?わたしって…今、言ったのか?)
自問自答する俺。こんな夢ならさっきのバトルモードの方がずっといい。少なくとも美少女に囲まれた主人公の方がずっとましだ。こんなボーイズラブの典型的なシチュエーションなんてまっぴらごめんだ。だが、顔のよく見えない男は衝撃的なセリフを言いやがった。
「何を言ってるんだい、ハニー。君は魔王たる私のヨメだよ。さあ、昨晩のように愛し合おうではないか」
「よ…ヨメ???」
俺はベッドから転げ落ちると、部屋にあった大きな鏡に自分を映す。そこには全裸で立つ美少女が…すらっとした細い脚、小さなお尻にきゅっと引き締まった腰、そしてチッパイとはいえない大きさのなかなか形のよいバストがツンと上を向いている。
(お…俺って…美しい?いや、そうじゃなくて、俺って女だったの?)
「何を言ってるんだい、ハニー。君は美しい女性。この魔界で、いや、人間界でも稀にみる美貌の持ち主。気高き精神と慈悲深き心で魔界を総べる女王。そして私の妻」
「えっ?ええええええええええ!」
なすすべもなくひょいと抱えられて、ベッドに投げられるわたし。
「えっ?ちょっと、なに、何するの?」
魔王と自称する男は、シャツを脱ぐとたくましい上半身を露出し、パンツまで脱いで後ろへ投げ捨てる。たくましい下半身は残念ながら?というか、見たくもないので光で見えないのは幸いだったが、夢にしては冗談が過ぎる。
「ヨメの重要なお勤めじゃないか?夜のお勤め」
そういって飛びかかってくる自称魔王。ちょっと待て!っと心で叫んだが、男の愛撫は絶妙で思わず声が出てしまう…
「あ…あん…」
うおおおおおおおっ!夢から覚めろよ、俺。でないとこれはピンチだ。