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放たれた炎球は水たまりのすぐ横に当たり、着地点を中心に相変わらず降り続く雪にじゃれつく犬の如く跳ね回る。
ただのイタズラならここまで精巧なダミーを作り出す理由が分からなかった。今の小さくない騒ぎと、残留魔力を断ち切る為に消費する魔力と、コストパフォーマンスが釣り合わないのだ。
ルカは水たまりを本体と断定し、あくまで威嚇で説明出来る動きをさせる。
「全く、無礼な殿方ですこと」
空から落ちてきた雪が水たまりに波紋を生み出し、小さな波は少しずつ大きくなる。それと連動するかの様に子供と言って差し支えない声が広場一杯に広がる。
「水顕現化」
鈴を転がす様に涼やかな声を発しながら水たまりがある姿を形成する。
十代の幼い顔に腰まで届く長い髪、クラシカルなロングドレスを纏った少女だった。