Nocte Adelheid
「居る意味ある? 自分」
「………オルカーニャの役職、小隊のマスコット。とかどうだい?」
「断る。絶対嫌だ」
ソフィア含めても四人の小隊に与えられる広さのブリーフィングルームではない部屋で、到着までぐずぐずと話していた。
この辺りは生産した食品を列車で運ぶの線路が多い為兵の輸送も比較的楽で、爆薬が仕掛けられた形跡もなく、つまりやることがないのだ。
「少佐殿は、子供みたいですね」
マスコットとおちょくった次はルカの頭髪コーンロウ化計画を実行するるアデルと、深緑色の火の粉散らして抵抗するルカ。二人のくだらない位激しい攻防戦を見て、ソフィアがぽつりと呟いた。
「昔は、ああじゃなかったんだがな」
「と、言いますと?」
「彼は世界の全てに怯えていた。だが人としてまだ成り立っていた」
「は、」
「今はあの通り怖いものなし。………どっちが良いのだろうな、私はいくら考えても分からないのだよ」
目を閉じて半ば諦める様に首を振るコーネリアス。だがソフィアは見ていた。
頭を半分ほどコーンロウにされたルカがアデルの右足を両腕で取り、足首を脇腹に押し付けるようにクラッチし、その体勢から自ら内側にきりもみ状態で倒れこもうとする所を。
ソフィアがドラゴンスクリューだと呟いた瞬間、アデルが空いていた左足で反射的に延髄斬りを叩き込んだ。
「今の方が幸せだと思います」
アデルが中途半端な反応で技を返した為、コーネリアスが目を開いた時に見えたものは二人仲良く、プロレスごっこで床に沈んだ姿。おそらく両人とも無事無傷であろう。
「………、お前らふざけるなよ」
その代わり、目を回す二人が聞いたのはドスの効いた声だった。