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コーネリアス曰く、帝国派の人間が手引きしていたらしい。革命後に衛生面の問題から整備された水道管を伝い皇女の操る水が侵入、的確に自身の邪魔になりそうな施設を制圧していったとの事。
対魔術障壁も術士を先に潰され不発に終わる、完全に手の内を読んだ上での首都攻撃だった。
「障壁展開を人に頼るのはナンセンスだ。あらかじめ大規模な魔力を食う仕掛けを組めば良かったのに」
八つに裂けた枝毛を感慨深げに眺め、ぷちっと千切って捨てて、アデルが馬鹿らしいと言いたげに告げる。
早速噛みついたルカを、流石のコーネリアスも呆れた様子で眺める。まーた脱線する、溜め息を吐いた。
「そんなもの誰が組むんだよ。食った魔力はどうするんだ」
「知らん」
「………」
「僕の魔術は感覚。でも蛇と捻れた輪を合わせて六角とその角に水銀の鏡を置けばループ可能」
魔力を流す経路はどうするのか尚も問い詰め、知らんで返す不毛なやりとりが続く。二人が飽きて黙った頃にコーネリアスはやっと話を再開させる。
「首都と同じ手口で周辺も制圧したそうだ。明日の会議ではどのような経路で首都奪回を行うかについてだ」
「向こうは戦術魔術師しかいないんだろ。僕なら適当にぶっぱしても勝てる」
コーネリアスはその話は明日、そうアデルを宥めた。彼は戦略魔術師の天井知らずな基準から述べられる戦の方法を聞いていられる程懐が深い訳でもなかった。
「終わったんなら俺は帰るぞ」
「三階の三○三号室だ。あと明日の会議は朝の九○○○から始まる、遅れるな」
話が終わってせいせいしたと言いたげに立ち上がり、ギョッとした顔をするルカ。アデルと契約したのだろうと笑顔で告げるコーネリアスを暫く睨んだ後、諦めた様に部屋を出て行った。