祭りの日に
術師が掛けた半永続式の風魔法により紙吹雪が尽きない通りの端を出店が、中央を人が埋め尽くしていた。首都の大通りであるから狭い訳ではなくカルス国のあちこちから人がやって来た結果である。
アーデルハイドの日と名付けられた彼の誕生日では各地で圧政を破壊した英雄を称える祭りが行われ、首都であるここハーレニアの盛り上がりは異様なものすらあった。午前中にあった現在の首相のスピーチではアーデルハイドを出せ、そんな野次を飛ばすのが通例となっていたのだ。
今は丁度昼食の時間で各地の名物料理の出店が並ぶ大通りを、ルカとリーザはぐれないように手を繋いで回っていた。
「いつもの酒場でいいんだが、」
「閉まってたね」
「浮かれすぎだ。やっぱりうまい」
「グチか褒めるかどっちかにしなよぉ」
南の名物料理のキャベツとベーコンの炒めパスタを仲良く食べる二人は傍目には恋人同士に見えたかもしれない。実際の所は営業しない代わりに食事スペースとして開放された食堂でわざわざ向かい合って座る程度に親しい、ただの友人だった。
塩味の効いた安っぽい味付けはお祭り定番で洒落た食堂の内装と合わないのも一つの醍醐味だろう。ルカの焼きパスタ二人前がリーゼの一人前のものと同じ速さで無くなってゆくのは、ちゃんとした朝食を食べていないからだろう。
ルカの不摂生を咎めるように眉間に皺が寄るものの元が可愛らしいせいで迫力に欠け、もちろんルカは相手にしない。自分が押しかけて手料理を渡したら解決するかも。確実に誤解される解決法を思いついたリーゼの顔に誇らしげな笑顔が浮かぶ。今の所彼女は唯一にして最大の問題に気付く様子はない。
「………その顔は何を伝えたい顔なんだ」
「特にないよ。それより午後はお城の方に行きたいんだけど、いいかな」
「構わないが」
「やった」
瓶詰めの水を飲み干すとルカはリーゼの分の木皿も返却に向かう。長身で身体を鍛えているルカも何か事件が起きた時の様に強引に動く訳に行かず人、リーゼの元へ戻るまでどれ位かと考えるのであった。