4
ルカに行く当ては特になかった。車両の連結部分で風に当たる程度、手すりに寄りかかり調子の出ない頭を冷やしていた。先程までいた車両のうるささを考えると、外に出ないと満足に考え事も出来なかっただろう。
アーデルハイドとの契約自体に不満はない。彼は契約に多少色を付けたのか、体に満ちる魔力の質が明らかに違うののだ。魔力ではなくランプオイルの様に燃えやすく、かつ自分の意図しない火を付けない。
契約を交わした精霊が優秀であればある程、精霊と術者の精神が混ざり合う危険性があるのだ。果たして自分はどうなるのか、想像しただけで背筋が凍り付く。
そもそもアーデルハイドも得体のしれぬ精霊と契約しているのだ。生の衝動という、原始的な欲求とだ。手摺りが手汗でじっとりと濡れ、生ぬるい金属が気持ち悪く感じる。
「最悪、何考えてるんだ。考えるな」
頭に浸透する嫌な考えを振り払い前方の車両を見つめる。そろそろ帰ろうか、などと彼は思う。用が済んだら早く契約を完了する為、願いを探らなければと。
「ああ、今日は厄日か」
先頭車両の方から出てきた連中、武装集団を見て一人愚痴を吐いた。