魔導列車の魔術屍
顔をすっぽりと隠すフードの付いた、全身を覆う長いローブ。顔を見られ騒がれると面倒なアーデルハイドを隠す為先程ルカが与えた服だ。ルカが持っていた鞄の殆どを占領する、かなりかさばる一品だったりする。
体型だけを見たら女ともとれる格好。顔の殆どを隠した中、唯一見える口元に付いたマヨネーズの子供っぽさが色々なものを破壊する。
「―――、?」
「理解できる言葉を話してくれ」
「――――――。………――――――っ!」
口一杯にエッグサンドを頬張ったままアーデルハイドは満面の笑みを浮かれたようだ。コンパーメントの中だが顔を隠させているので確定はできないが。
溜息を吐いてルカは窓の外へ視線をやる。夕日に染まる海は穏やかで、それすら恨めしくてまた溜息を吐く。どうしてこんな男と一緒に田舎の鈍行列車に乗っているのかと、何度目か分からない後悔に襲われる。
「で、聞きたいことって何?」
「お前左手折れたんじゃないのか」
エッグサンドを飲み込んだらしく、隣から掠れた声が聞こえてきた。話に出てきた左手は食料の入った紙袋を探り、クルミパンを引き当てていた。回復術を使った訳でもないだろうに。
「形状維持術が掛かってるからな。きれいにポキッといったせいもあってすぐにくっついた」
「形状維持?」
「外傷に病気に老化、肉体に関した急激な変化をなくす術だ。ただ筋肉は衰える」
「はあ、」
理解していない返事なのだがアーデルハイドは気にしないで、話したいよう話している。
並大抵の傷では死なない事、病気もろくに起こらない事、小さな切り傷は残る事、そして。
「一生若いまま。いわゆる、不老半不死」
「いわゆる、な訳あってたまるか」