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願いの為に人は生きる  作者: 銅線
三章-2
24/43

「アーデルハイド、あの鹿を始末しろ」


 ルカの後方でガラスが砕けるように鋭い音が鳴る。続いて鹿の勝ち誇ったような鳴き声もする。


「了解した」


 子鹿の血と土埃で汚れたアーデルハイドの顔が笑いに歪む。ルカは彼の瞳の奥で渦巻く魔力を感じ、それに引きずられて笑う。

 座り込んだまま魔力を引き出してばらまいて、アーデルハイドが叫ぶ。


「|茨姫の逆恨みは嵐の雷公槌により成され《P・S・S・S・T・H》」


 予備動作もろくな詠唱もない、不発で終わる筈の連続魔術に合わせ、アーデルハイドの狙いと寸分の狂いもなくそれは発生する。

 地面から生えた鋼のようにしなやかで硬い、山吹色の茨が鹿の巨体を角から絡め取る。角を軋ませて暴れ、脱出を試みる鹿にもう一つの魔術が襲いかかる。山吹色をした太い雷が急速に生み出され、鹿目掛けて何本も降り注ぐ。

 茨に生えた剣の様に鋭い棘で裂けた皮から赤い血を流し、感電して痙攣する鹿にアーデルハイドは追い討ちをかける。


残るのは十三階段(C・A・T・S)


 動きを封じていた茨の一本が鹿の首に巻き付き、太い首を真横にへし折った。

 左腕を力無く揺らしアーデルハイドは立ち上がる。自分が作り出した奇妙な鹿のオプジェ、それが発する肉の焼ける臭いに顔をしかめた。


「オレは|アーデルハイド《受肉した純粋で強大な力》だ」

「………|アーデルハイド《人から半精霊へなった男》」


 二人の言葉が重なって、風に混ざった。


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