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願いの為に人は生きる  作者: 銅線
三章-2
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 真珠色の結界の越しに見ると鹿は一層禍々しく見える。角が老樹の結界に触れては弾かれて、耳障りな高い音を立てる。

 ルカが炎と弓で妨害してなんとか捕まらずに済んだが一時凌ぎでないのは明らか。ルカは痛みと疲労で顔を歪めるアーデルハイドに向き直る。額を切ったようで血が流れ込む右目を閉じたまま、アーデルハイドもルカを見上げる。


「で、打開策はあるのか?」

「契約。自分の為に力を振るえと求めるんだ。僕は他者の強い要求がないと魔術を使えないんだ」

「お前、俺はお前の事を瞬間的には殺したいと思う位気に食わない。………そんなのが相手でもか?」

「性別問わず、美人の激情は大好きだから。それが殺意で、自分に向いていても変わらない。さ、他に問題ないなら契約だ」


 生成の服の裾を捲り上げて、心臓の真上を陣取った手の平程もある痣を見せる。人は精霊と契約しなければ魔術師にはなれなず、契約した者にのみ浮かぶ本人の素質と何の精霊かによって形と位置が常に変化する印。

 魔術師の証である精霊との契約印。他の魔術師にはアーデルハイドの契約印は髑髏を閉じ込めた鳥籠と見える筈だ。

 それに倣いルカも自分の契約印を示す。ルカの契約印はは首の後ろ、フクロウの羽根が生えた火蜥蜴だ。

 相手の契約印に触れて、指先に魔力を遣って儀式は始まる。


「名前は」「オルカーニャ・バルディ・エーレンベルグ。貴公は」

「アーデルハイド。貴様は何を求める」

「貴公の力だ。俺の為に力を使え」

「それだけか?」

「ならば、俺に忠誠を誓え」

「それだけか?」

「これだけだ」

「よろしい。貴様に心からの忠誠と私の力を贈ろう」

「その代価は」

「たった一つの事象。探し出し、それを私に与えておくれ」

「受け入れた。俺がその望み、叶えてやる」


 心臓の真上に浮かぶ契約印に新たな模様が刻まれるのを肌で感じ、アーデルハイドは笑った。


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