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願いの為に人は生きる  作者: 銅線
三章-2
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一体どれくらい無言で向かい合っていただろうか。アーデルハイドはルカが誤魔化した言葉を待ち望む様に静かにしている。

 覆い被さったまま動かないアーデルハイドに向け、ルカは口を動かして。


「お前のことをぶっ殺してやる」


 だがそれはアーデルハイドに届かなかっただろう。壁を突き破り突如として現れた何かの角に跳ね飛ばされ、痩せた長身が宙を舞ったのだから。

 アーデルハイドが壁に当たり床に叩き付けられる音を聞きながら乱入してきた物体を観察する。前方に突き出した捻れ角を持つ鹿、ただし大きさは規格外である。角が上を向いていたら小屋の天井を抉っていただろう。

 凶暴化した鹿は僅かに褐色を帯びた目で動かないアーデルハイドを映し、まだ気が済んだ訳ではないと言わんばかりに吼える。鹿は全身の皮膚からどす黒い魔力を放つ。

 圧倒され寝転がったまま鹿を見上げていたルカも漸く正気に戻りアーデルハイドの元へ駆け寄る。左腕が半ばからあらぬ方向へ曲がっているがひとまずは無事の様だ。


「立てるか?」

「当たり前だ。………使え。弓が魔を払うのは知っているだろ」


 自分と同じく吹き飛ばされた狩猟用の弓を回収し、ルカに手渡す。短く礼を述べてシンプルな弓の弦を弾く。

 魔力を引き出せる状態への儀式をしていない為本来なら効果のない行為だ。しかし目の前の鹿は身に纏う魔力が不穏に揺れ、確実に効いている事が見て取れた。ルカはほっとすると同時に、どれだけの魔が集まっているかと考えると、目の前の危機は変わらなかった。


「“我はサラマンダーの友人、オルカーニャ・バルディ・エーレンベルグ”―――守護炎(ファイアウォール)


 弓を持った左手を突き出して鹿を炎の円で囲う。怒り狂う鹿も緑色の炎に突撃する気はまだ起こらないらしく、頭を振って角を振り回す。


「もっと奥にとても古い木がある。精霊が宿って魔を寄せ付けない結界を作る位の」

「それより戦え! お前魔術師だろ」

「今は違う、無理。こっちだ!」


 話を聞かず駆け出したアーデルハイドを追い掛けてルカも走り出す。獣道すらない木々を間を二人は行く。


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