森の隠者
「………、以上が城門広場で起こった事象です」
白昼堂々、人目をはばからないテロについての会議が城内で開かれていた。取り逃がしてしまった首謀者を直接見た中で最も階級の高い者、ルカは首都自衛団会議で見たこと全てを報告していた。
自称皇帝とその一派の破壊活動による被害は国議員の一部と首相、噴水の石像。首相だけでなく議員もほぼ同時刻に殺された事から、クラウリーチェが偽物でも十分驚異になるとの判断が下されていた。
「クラウリーチェ?」
「そう名乗りました。しかし最後の皇帝の娘と同じ名前ですが年齢が合いません」
「と言うと、つまり」
「彼女は革命の際に十五歳だったと聞いています。しかし先日現れたのは明らかに未成年者でした」
「そんなふざけた話があってたまるか!」
ルカの直属の上司が青い顔で怒鳴り散らす。他の出席者も上司の様に怒鳴りはしなかったが、あまり広くない会議室にどよめきが走る。
肉体の成長を止める魔術を自身に使ったか、その手の呪いか、肉体が成長を放棄する位の鍛錬を積んだか、何にしろイレギュラーである事に変わりはない。
一番奥の議長席に座る自衛団団長は立ったまま怒鳴られていたルカに座るよう指示し、手を叩いて出席者を黙らせる。
「非常事態宣言により首都自衛団が特別遊撃隊として軍に編入された事は皆が知っての通りだ。これまで以上に国民に頼られる立場なのだ、うろたえてどうする」
「し、しかし団長、」
「隊長だ」
「隊長。成長を止めるような化け物をどうやって止めるのですか」
「知らん。上層部に聞け」
殺された議員は次の首相選挙に出馬するだろう有力な者ばかりだ。的確に政治を混乱させる手腕と情報に揺さぶられているのは政治家だけではないようで、編入以降の指示が全く来ていないのだ。
それを踏まえても肝の小さい物言いに軽い目眩を覚え、団長はこれ以上の発展が望めない会議を解散させた。
「ルカ、ちょっと残れ」
上司の不甲斐なさにしかめっ面をするルカを引き止めて。