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歴史ある石畳に腰から引きちぎられた男の死体が染みを刻む。鼻を付く錆臭さと整えられていた男の姿がひどく対照的に見えた。
恐らく城の中に手下が紛れ込んでいた筈だ。彼女の邪魔になる国家元首を早々に葬る為。
二つに切り裂かれた大統領の姿、ルカの激情に火が付いた。
「ふざけるのも大概にしろ。こんな真似をして、頭がイかれてるのか!」
「ふざけてなどいませんわ。本日は挨拶に参っただけ。あなた方と戦うつもりは………」
「炎獄の踊り子」
左手を横へ大きく動かし、先程から跳ね続ける炎球を弾け飛ばす。アトランダムに飛び出す小さな炎はまさしく踊り子。
避けようとも防ごうともしないクラウリーチェのドレスを焼こうとした瞬間、風がルカの炎を全て切り裂いた。
「陛下、お怪我はありませぬか」
「陛下、この者達はやはり斬らねば分かりませぬぞ」
「挨拶をして怪我をする気はないわ」
東方の騎士装束を纏った二人の男が城壁の上から飛び降りて来たのだ。恐らく瞬間移動の魔術を使ったのだろう、大柄な体とは対照的に着地した際の音は異様な程小さい。高い位置で一つに括った黒髪が特徴の、恐らくは双子。
クラウリーチェだけでなく全く同じ顔の二人を相手にするには多数に無勢。来る気配のない応援に苦々しく口を歪める。
「陛下、ドレスに砂が付いておりますぞ」
「陛下、殺したりぬ故許可をくだされ」
「私の話を聞かなかったのですか。用事は済ませたので帰りますわよ」
「は………」
双子の片方を無視して話す辺り、彼女らの付き合いは長いのだろう。
それは兎も角として、堂々と帰るなどと言い放つクラウリーチェをルカはかなり警戒した様子で見つめる。
「それでは皆様方、私はいずれまたここを訪れるでしょう。民から認められた皇帝として」