乗り合い馬車
わたしの実家は中流貴族のグヤーシュ伯爵家、中流貴族と言っても、魔王軍とのたび重なる戦による戦費がかさみ、俗に言う貧乏貴族とまで揶揄されるぐらい没落していた。
そんな中、わたしの新魔法開発の功績が認められ、賢者の称号を得ることとなる。それによって王都魔法大学から特待生入学の話が打診された。
王都魔法大学の特待生は授業料及び、生活費が国から支給されるので、大学寮に入れば衣食住の生活には困らない、まさにうちにとって理想的な話だった。
勉強は不得意だけど、得意の魔法で頑張れば、大学卒業後には官職にもつけるかもしれない、そうすれば実家の手助けになるかも、そんな思いで王都魔法大学に入学することにした。
そんな希望を抱いて片田舎から、古都エルミネフトに行くことに、グヤーシュ伯爵家は片田舎の領主であるが、辺境伯ではないので大きな権限も領地もない、あるのは中途半端なプライドだけ、父と母が見栄を張って兵士と従者を引き連れた馬車隊で、王都まで行かせようとしていたが、、、
ローネ
「その必要はありません、、、わたしはルナと乗り合い馬車を使ってお忍びで王都まで参ります。」
と、伯爵令嬢ならぬ移動手段で王都に行くことを決めた。
本来ならこんな移動手段はあり得ないのだが、領地の財政的にもそうは言ってられないので、親としては内心助かったのだと思う。
ローネ
「そばにいるよ〜♪そばにいるよ〜♪」
ルナ
「随分とご機嫌ですね!!」
初めての乗り合い馬車の旅に心が躍ってついつい口ずさむ、、、
ローネ
「ふふっ!!そうね王都ってどんな感じなのかしら!!」
ミネフト聖王国の王都、古都エルミネフトは世界でも3本の指に入る都市で、全ての人種がエルフと言うわけでなく、エルフ種5割、(ハーフエルフ含む)人族3割、獣人族2割の多民族都市だ。
人口数は少ないが、商業、工業、農業のバランスが良く、
経済活動も活気があり、それでいてこの世界では珍しい四季彩りの豊かな自然もある。まさにエルフらしい自然と融和した都市となっている。
ローネの住んでいたグヤーシュ領は、エルフ王国(ミネフト聖王国)より北東にあるので四季はない。
受かれ気分のローネを乗せた乗り合い馬車が、王都まで半分に差し掛かったところで、、、
御者
「まずい、、、あいつらは、、、」
乗り合い馬車の先頭で御者達がざわついている。
それをいち早く察知した従者のルナが、、、
ルナ
「まずいことになりましたね、、、どうやら野党の様です。」
そうローネの耳元で、、、
次第にその事が客同士にも伝わり子供達も怯えている、、、
ローネは怯える子供達に優しく微笑んだ後に、、、
ローネ
「大いなる力により、すべての災いから我らを守りたまえ、、、完全結界!!」
ローネから青白い光が放たれて乗り合い馬車全体が覆われる。
その直後に野党から弓矢と魔法が放たれるが、全てローネが発動した魔法の力で掻き消された。
野党は馬で強引に乗り合い馬車に、乗り込んでこようとするが、従者のルナの細剣で防がれる。
どうにか野党の第一波を防ぐ事が出来たが、御者を含めてまともに戦闘が出来るのはローネとルナのみで、野党の全体像も見えてこない状態では、明らかに不利な状況が続く、ローネが何かよい打開策はないかと考えていると、、、
御者
「おおっ!!前から王国警備隊だ!!助かった〜!!」
王国警備隊の先頭を切る仮面姿の将校と思われる青年が、、、
仮面青年将校
「全隊突撃!!野党を蹴散らせ!!」
と、勇ましく鼓舞し自ら突撃していく。
直ぐに騎馬の王国警備隊と野党の乱戦になり、この乱戦に乗じて、乗り合い馬車はその場を立ち去る事が出来た。
野党たちと十分な距離をとった後、野党から逃れる為に無理をさせた馬達を休ませる為、乗り合い馬車は水辺で休憩となった。
その間、ローネとルナは御者達と客達から先ほどの戦闘で、乗り合い馬車を守ったことで賞賛されることに、特に体を張って乗り合い馬車を守ったルナには、皆が感謝をしていた。
ローネはなんともこそばゆい思いであったが、水辺で楽しそうに遊んでいる子供達を見て、守る事が出来たことにホッとしていた。
程なくすると先ほどの王国警備隊がやってきて、御者に被害状況などを確認していた。
乗り合い馬車に被害がないことを知ると、王国警備隊は再び警備に向かう為に出発することに、ローネは立ち去る王国警備隊の中で唯一仮面を被る、馬上の仮面青年将校と目が合うが直ぐに目を逸らす。
仮面青年将校も乗り合い馬車で唯一頭からローブを羽織るローネを一目見てそのまま去っていった。
ローネ
(なんであの人仮面被っているんだろ、、、
わたしと同じ?)
ローネはこの時に、出会った仮面青年将校が後の最愛の夫となる ソイ モルト ミネフト だとは今は知る由もなかった。




