姉と弟
魔王領南部、、、。
それはエルフ王国の北にあり、かつては人族が治めていた土地。この世界の最北にある魔王領から、魔王軍の侵攻に伴い数百年前に滅んだとされている。
長寿とされるエルフの民であっても、かつての姿を知る者もは、わずかしかいないという。
ソイ
「魔王領に進軍してからだいぶ経つが、先に放ってる斥候からの動きはどうなっている?」
俺の隣で馬に乗りながら、器用に地図のマッピングをしている小僧に話しかける、、、。
ゼオン
「ハッ!!まだ斥候からの連絡はありませんが、地図を見る限り予定よりも我が軍は進軍しております。
予想していた魔王軍の反撃も無く、敵はおそらく我らの動きを察知しており、この先の街で我らを迎え撃とうとしていると思われます。」
うんうん!!さすがは天才ゼオン少年!!
どっかの超絶ポンコツエルフさんとは大違いだな!!
二人は本当に姉弟?
ソイ
「流石はゼオンだな!!さて、、、次の問題だ!!
この戦、、、落とし所は?」
流石の天才少年もこの難題はわかるかな?
ゼオンはしばし考えて、、、
ゼオン
「おそらく当初の予定はほぼ達成しているかと、、、
この戦は魔王領の占領では無く、相手を出し抜くことに意味がある、、、。
つまり奴らに侵略をする存在から、侵略される存在だと認識させること、、、ですか?」
うんうん!!やっぱりこの子は天才だわ〜!!
ソイ
「惜しい〜!!もう一声!!」
おいおい、、、そんなすげ〜嫌な顔しないの!!
俺はこれでも代王よ!!この国で一番偉いのよ!!
、、、あっ、!!ここ魔王領だから違うのか?
ゼオン
「代王様、わたしの考察で足りない物はなんでしょうか?」
そうだね!!わかんないよねぇ?聞きたいよねぇ?
ソイ
「ゼオンの考えている通り、奴らに恐怖心を植え付けるのは重要だ!!けれど、国が軍を動かすには金がいる!!
タダじゃないんだ!!
それに俺は性格が悪い!!ちょっと奴らを虐めないと気がすまん!!
と言うわけで、このまま街をスルーしてここに向かうぞ!!」
そう言って小僧の地図に指を指す、、、。
ゼオン
「、、、えっ、、、ここは魔鉱石の鉱山、、、」
おぉ!!ちゃんと勉強してるな!!
ソイ
「偉いぞゼオン!!よく分かったな!!
奴らは俺らがこのまま街を攻めると思っている!!
現にわざとその進路を通っているからな!!
けれど今回の真の目的は奴らの資金源を襲う!!
つまり盗賊行為だ!!」
山だから山賊かな?
まぁ!!予想が外れたからって、そんな悔しそうな顔をするな小僧!!お前の考え方は間違って無かったぞ!!
そんなわけで途中の野営地にて、主だった将校を集めて軍議を開く。
ソイ
「と、言うわけでこれより街を迂回し、敵の資金源と思われる鉱山を襲撃破壊する。これが今回の遠征の目的である。」
俺の言葉に皆がざわめく、、、。
主だった将校たち
「だっ、代王様!!それではこの地を占領しないと言う事ですか?それでは我らは、、、」
、、、まったく、、、これだから領主貴族ってのは、、、
ソイ
「仮にだ、この先の街を占領したとして、魔王軍がそれを取り返しに来ないと思っているのか?」
こいつらはバカだから無駄に土地、領地と言うものにこだわる、、、広大な領地を手にすれば、自分たちは安泰と思い込んでいる。
主だった将校たち
「しかし、、、我らはなんのために派兵を、、、」
まったく、、、バカが直ぐに口にする言葉だ、、、。
ソイ
「よいか!!我らが襲撃するのはただの鉱山ではない!!
ゼオン!!地走りの長をここに!!」
ゼオン
「ハッ、直ちに!!」
ゼオンが俺の言葉に素早く反応して、天幕の外で待機をしていた、斥候隊地走りの長を連れてくる。
地走りの長
「お呼びでございますか代王様、、、」
地走りの長が俺に騎士の礼をする。
ソイ
「俺が探らせた鉱山の詳細を話せ!!」
俺はわざとニヤニヤしながらゼオンを見る!!
ふふっ、、、斥候は街には行ってないのだよ小僧!!
これこれ!!そんな悔しそうな顔をしないの!!
地走りの長
「はっ!!手下の調べですと、大量の魔鉱石が産出されており、また近くの貯蔵庫に、膨大な量が保管されている模様です。」
将校たちがざわめく、、、
そりゃ〜そうなるよねぇ〜!!魔鉱石は高値で売れるからね!!
ソイ
「わかったか!!今回の本当の目的は領地にあらず、、、
奴らの資金源となる魔鉱石だ!!」
これならお前らも文句はないだろ!!
そもそもここの領地を奪っても、いつ奴らが取り返しにくるかもわからん様な場所だ、ここの警備の方が逆に金が掛かるだろ!!
こうしてソイの思わく通りに軍議は終わったのだが、、、
ゼオン
「、、、これでよろしかったのですか?あまり将校にケンカを売ることは、好ましくないと思われますが、、、」
、、、まったく余計なお節介を、賢い小僧も考えものだな、、、
ソイ
「なに、、、多少俺に文句があるぐらいが、ちょうど良い!!それよりも、せっかくグヤーシュ伯爵もいるんだ、俺は良いからお前は親に甘えて来い!!」
なんだなんだ冷たい視線を向けて、、、
子供扱いが気に入らないのか?
ゼオン
「、、、それでは父上に、代王様が姉上をご所望と伝えて来ますね、、、」
、、、おいおい。
ソイ
「おい!!なぜお前がそれを?」
なんでバレた?
ゼオン
「ハァ、、、やはり、、、」
、、、こいつ、、、俺にカマをかけやがったなぁ、、、
ゼオン
「先日、姉上に会いに行ってきました。その際に姉上が口を滑らせて、、、途中でルナさんが制止をしたのですが、今ので全てが繋がりました。」
、、、まったく、、、あのポンコツエルフさんは、、、
本当に可愛いんだから、、、
ソイ
「ゼオン!!これだけは言っておく!!
確かに俺はお前の姉、、、ローネに惚れている!!
けれど、お前を俺の小姓にしたのとは、まったく別の話だ!!
そして俺はローネを欲しているが、グヤーシュ家にローネを差し出せとは決して言わない!!その事しかと覚えておけ!!」
俺はローネが欲しいんじゃない!!
ローネに俺を愛して欲しいんだ!!
ゼオン
「、、、わかっております!!ゆえにわたしを大学に連れて行かず、城に留めさせている事も理解しております。」
本当に賢い子だよ、、、ローネも言っていたなぁ、、、
俺は旅立つ前にローネに会いに行った。
旅立つ当日、、、
大学寮でローネに会いに行くのは初めてだ、、、
ちょっと緊張するなぁ、、、
恐る恐るローネの部屋のドアをノックする。
ルナ
「どちら様ですか?」
ソイ
「わたしです、、、」
なんだなんだ?やけに部屋が慌しいなぁ、、、
ドアが開きルナが顔を見せる、、、
ルナ
「失礼しました、おはようございます。
どうぞお入り下さい。」
ルナさんが俺を名前で呼ばないのはさすがだね!!
周囲にバレるとまずいからね!!
ソイ
「おはようルナさん!!早朝から失礼、、、。」
部屋に入ると、パジャマ姿の眠たい目を擦るローネが、、、
ローネ
「ふぁ〜!!おはようございますソイ様、、、zzz」
、、、寝てる?立ちながら寝てるの?
ルナ
「ソイ様、、、ローネ様のお見苦しい格好をご容赦ください」
、、、ルナさんがすげ〜申し訳ない顔してる、、、
ルナさんは苦労してるんですねぇ、、、
ソイ
「いえいえ、、、わたしが朝早くに押しかけたのです、、、」
ネムネムのバチくそ可愛いローネを見れたから、むしろラッキーだね!!
ルナ
「それでソイ様、本日はどういったご用で御座いましょうか。」
警戒されているか、、、まぁ、そうなるよなぁ、、、
ソイ
「はい、以前ご説明した通りに、本日わたしは旅立ちます。
お二人にはそのご挨拶をと、、、」
おやおや!!ネムネムのローネの目が開いた!!
ローネ
「ソイ様、お気遣いありがとうございます。」
ローネとルナが礼をする、、、。
ソイ
「しばらくお二人の勉強を見れませんが、ご容赦ください。」
そう言って俺も騎士の礼をする、、、。
ソイ
「それと一つお願いが、、、」
ローネを見ながら言うと、一瞬ルナの顔が険しくなる、、、
なにもしないって、、、
ローネ
「、、、お願い、、、ですか?」
ソイ
「はい、、、ローネさんの歌をお聞かせ下さい!!」
、、、意味わかってくれるよねぇ?
おやおや!!ルナさんは平常心を装ってるけど同様しているなぁ、、、まぁ、、、そうなるよねぇ、、、
騎士の世界では戦地に向かう戦士に歌を贈る、、、
これは二人が恋仲を意味する、、、。
けれど、ローネは笑顔で、、、
ローネ
「はい!!喜んで贈らせて頂きます!!」
ローネは深く呼吸をした後、、、
ローネ
「ど〜こへ〜♪行こうとも〜♪見〜渡せば〜かすかに〜♪」
ローネの美声の歌に心が癒される、、、
そしてローネは歌い終わると、、、
ローネ
「ソイ様、、、わたしからも一つお願いが、、、」
、、、?
ソイ
「はい、なんなりと、、、」
ローネ
「此度の遠征に我が弟のゼオンも、グラーシュ伯爵家として末席に同行させて頂きます。そして騎士として戦場で死ぬのもゼオンの本望でしょ、、、
もしその時は、なにかしらの遺品の持ち帰りをお願い致します。」
覚悟のある強い眼差しだ、、、
さすがは伯爵令嬢って言うところかな、、、
ソイ
「残念ながらその件は受け入れられません。
お話しておりませんでしたが、ゼオンはわたしの大事な小姓です。
此度の戦で、ゼオンを死なせるわけにはなりません。
よってご安心下さい!!きっと彼は戻って来ますよ!!
当然!!俺もね!!」
ローネはクスクスと笑いながら、、、
ローネ
「そうですかぁ、、、あの子ソイ様の小姓を、、、
さすがはゼオンです。
あの子、、、ゼオンはとても賢い子です。
きっとソイ様のお役に立ちますよ!!」
ローネが深々と礼をして、、、
ローネ
「ゼオンをよろしくお願いします。」
俺は静かにうなずき、、、
ソイ
「それではわたしはこれで!!ローネさんルナさん!!
朝早くに失礼しました!!」
ローネ
「ソイ様、、、きっと帰って来て下さいね!!」
ルナ
「どうかご武運を!!」
ソイ
「ふふっ、、、はい!!きっと帰って来ます!!」
そんな事があったわけですよ!!わっはは!!
こりゃ〜!!意地でも俺と小僧は帰らないとね!!
さてさて!!その前にひと暴れしますかな!!
話は少し戻り、ソイがローネの部屋から帰った後、、、
ルナ
「ふふっ、、、ソイ様らしいですねぇ、、、」
ローネ
「、、、えぇ、、、きっと帰って来る、、、
なんだか暖かい言葉です、、、」
ローネは自室の窓に向かい、、、
ローネ
「本当はまだ〜♪寂しいんだよ〜♪」
朝焼けの街を眺めながら歌っていた、、、。




