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 ダンジョン最下層。

 一個上がメリアスやアラフネの階層。

 5階層しか無いのか、と正直思ったのだが、その分、一階一階が広いらしい。


 目の前には巨大な竜。どれくらい巨大かと言うと、頭だけで三階建てのビルくらいある。

 竜の呼吸だけで身体が前後に揺れる。くしゃみなんかされた日にゃ、吹き飛ばされ一瞬で壁のシミになるだろう。

 色は基本茶色、所々緑の差し色があるが、基本茶色。地味である。

 ゲームなんかだと地竜とかに分類されてそう。魔王軍四天王とかなら最弱扱いかもしれない。

 まぁ……これが最弱なら、勇者に勝ち目は無いと思うが。知らんけど。


 イオニクリサとクラティアはなにやら竜に話しかけている。

 なにやら、と言うか、上の危機的な状況の説明と魔力寄越せという相談。

 オレは、強いなら助力を頼めば良いとか思ってたが、この竜を見て無理だと思った。

 こんなのに暴れられたら、上の階層が一瞬で消し飛ぶだろう。

 だから二人はその提案をしなかったのかもしれない。

 つか、どうやってこの階層に来れたのか? この竜の身体は、ここへの階段より明らかに大きい。

 頭だけ入れば何とかなるという生き物はいる。例えば猫とか。だが、この竜は無理だろう。

 そもそも頭だけでも階段よりデカい。


 二人……と言うより、ほぼイオニクリサだけが説得を頑張っている。

 クラティアは状況の説明くらいで、積極的とはとても言えない。

 もうちょっと援護してやれよ、と思わなくも無いが、オレ自身、置物の振りをして黙っているのでとやかく言う資格は無いだろう。

 竜がチラチラとこちらを見ている気配は有る。や、チラチラというか、ギョロギョロか? 2メートルの眼でチラチラは無いかもしれない。

 その瞳孔がキュウっと絞らかと思うと今度は目を見開いて固まる。


 そして不意に竜が消えた。

 パッと煙も立てずに突然。

 

 なにごと!? と見ると、70メートルほど向こうに人影が立っていた。


「えーと……」

 

 状況が分らず二人に顔を向けると、イオニクリサはオレと同じようにキョトンとしており、クラティアは目元に手を当て空を見上げていた。


 人影の方に視線を戻すと、銀色のロン毛とドレスの裾を盛大に振り乱しながら駆けてくる女性の姿ががが。

 一心不乱に走るその姿は、その一生懸命さに反比例してかなり遅い。

 15秒ほどして、彼女はおれ達の前に……厳密にはオレの前に立って、ゼェゼェと息を整えていた。


 身長は190センチくらい。輝くプラチナブロンドに緑色の豪奢なドレス。張り出した胸はとても立派で、その威容はそそり立つロケットの様であった。

 イオニクリサやクラティアも相当な美人なのだが、目の前の女性も優るとも劣らない、とてつもない美人だった。


 うん、間違いなく美人だ。だが、なんでこの世界の成人女性はオレより身長が高いんだ?

 オレだって、日本人男性の平均以上の175センチはあった。

 だが、クシフィア含め、今まで会った女性は全てオレよりデカかった。

 そういう世界なのか?


 オレが身長についてもにょってると、目の前の女性は息を整え背筋を伸ばした。


「すみません、久々の人化で出現位置失敗しました。私はドラケリアのネフィロゾーイ。ゾーイと呼んでください」


 ドラケリア? 種族名だろうか……?


「はじめましてゾーイさん。自分は異世界から来た人間の寿崎(すざき)当分(とうふ)と言います。以後宜しくお願いします」


「当分さんはこの世界の困ってる住人を助ける行脚(あんぎゃ)にでているのだとか?」


 どこの水戸黄門だ、それ。


「あ、いえ、成り行きでお手伝いしてるだけで……」


「わ、私もとても困っていますの! 当分さん、私も助けてくださいませんか!?」


「え……ええ、まぁ、自分に出来ることなら(やぶさ)かではありませんが……」


「ありがとうございますぅ!!」


 言ってゾーイさんは屈みこむといきなりキスしてきた。


「んぐ!?」

 

 慌てるのもつかの間、身体から何かが吸われて行く感触。


 ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞーーーーーっ


 吸われるっ、吸われてるぅ~~~~~~~~~~!! オレの何かが身体のどこかからぁ!!


 何かを吸われ続ける感触に、カートゥーンのギャグの様に瘦せ細りミイラになる自分を想像したのだが、実際は何ともない。あるのは柔らかい唇の感触だけ。


 たっぷり10分ほど吸われ続け、オレは解放された。

 目の前には、艶々な肌に金色のオーラを纏わせたゾーイさん。

 何故か目に涙を湛えている。


「は、初めて……」


「はい?」


 感極まっているゾーイさんに思わず聞き返す。


「初めて満腹まで魔力を頂きましたわぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 とオレを抱きしめた。

 どうやら、オレのもう一つのギフト『無限の魔力』が功を成したらしい。

 魔法を使えないオレには無用の長物ギフトだったので役に立ってよかった。顔面で潰れているロケットの感触も素晴らしいし。


 あとは、背後からにじり寄る怖い冷気を誰か何とかしてください…… 




◇◇◇

 あれから一か月後。

 クラティアの部屋のリビングでお茶をしているオレたち4人。


 あの後何があったかを端的に言うと——

 

 アルマゲドンがありました。


 原因はゾーイがオレを抱えて逃亡しようとした為。

 第五層の地形が変わり、危うくダンジョンコア(ダンジョンの心臓部分で、地脈から魔力を吸い上げる大事な器官)を破壊しそうになってた。

 

 手足を失い心臓を貫かれても戦い続ける姿はトラウマものだった。

 や、都度オレが治療してたと言うのもあるが……

 だからって気にせず戦い続けるか、普通? 

 そんな戦いを丸一日続け、それでも終わる気配が無かったので、流石にオレがキレたら三人は戦いを止めた。


 その後は穏やかな話し合いにより、オレは三人の共有物と言うことになった。

 

 人権どこ行った!?


 それからイオニクリサが受胎するまで頑張り、クラティアが受胎するまで頑張り、ゾーイに吸われ続けた結果、今のオレは、子蜂300人と子蜘蛛200人の父親になっていた。


 メリアスは子蜂が面倒を見たので手間は無かったが、子蜘蛛は独り立ちまでの期間、ずっと魔力を供給し続けなければならなかった為、結構大変だった。主にゾーイの機嫌取りで。


 そんなこんなで取り合えずの準備を終えたオレたちは、そろそろ来るであろう襲撃に向けて作戦会議をしているのであった。


「作戦も何も、ネフィロゾーイ一人で十分じゃろ?」


 ティーカップを降ろしながらクラティアが言った。


「そうですね。聞いた話だと、大した戦力でも無さそうですし。腹ペコ状態だったらめんどくさくてやらなかったですけど」


 と、こちらを見て微笑むゾーイ。


「なら、いっそこちらから攻め込むのどうかのう?」


 え? 何を言ってるの女王様?


「それは良いな! 子らのためにも、ダンジョンに攻め込もうなどと考える不埒な輩どもは懲らしめておくのが良いじゃろう!」


 クラティアまで!?


「当分さんはどう思われます?」

 

 とゾーイ。


「どう、言われても……無駄な争いはしないに限るんですが……」


「なら決行ですね」


 え?


「完膚なきまでに叩き潰して、二度とこのダンジョンに来ようなどと思えないようにしましょう」



 そういう事になった。


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