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説明回です。
難産でした( ̄▽ ̄;)
女冒険者、名をクシフィアと言うのだが、彼女から聞いた話をオレなりに纏めると……
この世界は剣と魔法の世界。ダンジョン以外にも魔獣が跋扈する野蛮な世界だそうだ。
社会制度は中世ヨーロッパのような封建制社会。文明レベルは日本の江戸時代中期並み。ただ、魔法があるので部分的にはオレがいた現代よりも進んでいる。
そりゃ転移門とか有ったら、鉄道や車なんぞ生まれんわな。物流もまるっきり変わるだろう。まぁ、聞いた話だと、どこにでも作れると言うわけでは無いらしいが。
このダンジョンの領有を主張している国の名はザーデルテ王国と言い、国としては小さいらしいのだが、ここ以外にも複数ダンジョンを所有しており、そこから取れる資源で潤っているのだとか。
最近は調子に乗って他国にちょっかいをかけてるらしい。
一通り聞いて、テンプレ通りのよくあるファンタジー世界だと言うことは分かった。
で、クシフィアの事だが、彼女はザーデルテ王国の冒険者ギルドに所属するA級冒険者と言う話しだった。
A級と言うのは冒険者ランクのことで、事実上の最高位とのこと。
Aの上にSと言うランクもあるのだが、こちらは野球の殿堂入りみたいなものらしい。
長年の活躍を認められた者が、ギルドと国の推挙で授与される一種の名誉職で、現役の冒険者にS級はいないそうだ。
で、そのA級冒険者のクシフィアは、国の依頼を受けたギルドの指名依頼で今回の一斉討伐に参加したらしい。何でもスタンピードの恐れがあったとか。
スタンピードと言うのはダンジョンから魔物が溢れ出す現象を指し、数十年に一度起こるらしい。スタンピードが起こると街が壊滅的な被害が出るので、その予防として一斉討伐が計画され実行されたとのこと。
その話を聞いた女王様は首をかしげていたが、まぁ、それは後にしておこう。
クシフィアは最年少なのだが、今回の討伐のリーダーに抜擢された。が、それを妬んだ他のA級冒険者たちの騙し討ちに遭い、後はオレたちが知ってる通り、武器を奪われダンジョンに放置されたんだとか。
「なるほど、だいたいこの世界のイメージは分かった。因みに……魔王とか居たりする?」
オレの質問にクシフィアは怪訝な顔を見せる。
「東の果てに魔王の支配する大陸があると聞いた事はあるが……証拠は何もない。私はおとぎ話の類だと思ってる」
魔王は居ないか……世界の危機とかは無さそうだ。なら、田舎で診療所開いて、のんびりスローライフとか出来るんじゃね?
「ありがとう、じゃあ、約束通り足の腱も治してあげる」
言って、オレはクシフィアの足を治療した。
「これだけで、良いのか? 有力な商人とか、割とマシな方の貴族の紹介も出来るが……」
「大丈夫、関わる気無いし」
「分かった」
「……」
「……」
「? 立ち上がらないの?」
「え?」
クシフィアが訝し気な顔でオレを見た。
どうやら治療が終わってることに気づいてないらしい。
「や、もう治したから立てるはずだけど……?」
クシフィアは驚いて足首を回す。
「ほ、本当だ! 普通に動く!!」
「約束だったからね」
オレがそう言うと、クシフィアは立ち上がって深々と頭を下げてきた。
「本当にありがとう!! あなたたちが居なければ、私は無念を抱えたままこのダンジョンで朽ち果てるところだった。この御恩は必ずお返しします!」
「ああ、うん。君らがモンスターと考えてる相手にも知性を持つ者がいる。そのことを広めておいて」
「分かりました。その話し、必ず浸透させてみせます!」
そう言ってクシフィアは顔を上げた。
「あの……私は、自分の命の恩人の名前を知らないのだが、教えて貰っても構わないだろうか……?」
「ああ、そういや、名乗って無かったっけ? オレの名前は寿埼当分。けど、目立ちたくないから、オレが居ることは内緒でお願いします」
「妾はイオニクリサ。今回は我が番に免じて見逃すが、次は無いと思え!」
あ、女王様、固有名あったのね……てか、番って……
クシフィアはもう一度頭を下げると、踵を返し立ち去って行った。
武器も持ってないはずだけど、無事地上に戻れるのかね?
◇◇◇◇
「女王様的に、クシフィアの話どう思います?」
クシフィアが立ち去った後、再び連れ込まれた産卵室で聞いてみる。
「ふむ。人間の社会のことは知らんし、興味も無い。だが、あのスタンピードとか言う話しは眉唾だの」
「え、そうなんですか?」
「我らメリアスも元々は地上で暮らしていた。その地上でも増やせる数には限界があったというのに、この様な閉鎖環境で野放図に数を増やしたりはせん。溢れ出るなどあり得んわ」
「え!? ダンジョンから自然発生してるんじゃないの!?」
「それなら、妾がお主に子種を求める必要は無いだろう?」
それは……そうだな。いかん、漫画やアニメの知識が混ざって脳がバグる。
「我らがここに居るのは、たまたまここに、我らに都合の良い環境があったからに過ぎん」
「じゃあ、ダンジョンに居る生物は全部外から来たってことですか?」
「そうだの。人間どもが出入り口を占拠してなければ、もっと出入りも自由だった。妾も外に子種を求めに行けのかも知れん……だが、まぁ、そのおかげでお主と番えたから、妾的には悪いことばかりでは無いの」
言って女王が頬擦りしてくる。
可愛いので頭を撫でちゃう。
「それにしても、ダンジョンってなんなんですかね?」
「分らん。だが、妾は魔法生物では無いかと思ってる。地脈の魔力を吸い上げ、植物の育成に都合の良い環境を作る。それを目的にやってくる我らの様な者を捕食する」
「捕食!? ダンジョンに住んでる者はみんなダンジョンの餌ってことですか!?」
「餌と言うか、共生関係にあるという感じだの。このダンジョン内で死んだものは、ダンジョンに吸収される。恐らく養分にされとるのだろう」
なんとなくこの世界のダンジョンと言う物が分かった気がする。
もしダンジョンが生き物なら、共生関係にある存在を溢れ出すようにはしないだろう。むしろ、身体を大きくするなりして、より住みやすい環境を整えようとするはずだ。
「じゃあ、今回のスタンピードの話しは……」
「人間の都合だろうの」
人間の都合……待てよ? クシフィアは国が他国にちょっかいかけてるって言ってたな……そのちょっかいが戦争のことなら……
「女王様、ダンジョンが地脈から魔力を吸って環境を整えるって言ってましたよね? それって、植物だけですか? 鉱物に影響が出たりは……?」
「ダンジョン産の資源は全て魔力を帯びてるの。それどころか、野垂れ死んだ冒険者の装備なんかも百年も経てば魔法の装備になったりするのう……それがどうかしたのかの?」
なるほど、今回の襲撃は戦争用の資源集めが目的だったのかもしれないな。
でも、それだとスタンピードの話にすり替える意味が分からない。
そのまんま資源集めの為にダンジョンを攻略するって言えない事情でもあったんだろうか?
「う~ん……これはオレの想像なんですが、今回の襲撃、戦争の準備……資源集めが目的なんじゃないかと思えて……」
「戦争? 人間同士のか?」
「はい」
「……だとすると、近々、最低でももう一度襲撃があるの」
女王様がオレを抱く手に力を籠める。
「え? どういうことですか?」
「我が子らに被害状況の確認させておるのだが、ダンジョン居住者の被害は甚大だが、資源にはほぼ手を付けられていない。精々、財宝を盗まれた程度だ。恐らく、今回の襲撃は我らの力を削ぐことが目的だったのだろう」
「なるほど……確かに、大量の資源集めが目的なら、冒険者より専門の坑夫の方が良い。戦闘力の無い彼らが安全に作業できるように、第一陣で危険度を下げに来たってことか……どこか避難できる場所は無いんですか?」
「……隠れる場所なら無くは無いが……相手が資源を目的に来るのなら、それは無意味だ。我らはこの森が……この木が無いと生きては行けない」
ああ、そうか。鉱石だけが資源じゃないか……ここも伐採される恐れが……いや、ここまで襲撃されたってことは、確実にここも狙われていると考えた方がいい。
いつか物見遊山に地上へ行くつもりでクシフィアに話を聞いたのだが……なんか飛んでもないことになりそうな予感がしてきた……
女王様の名前はイオニクリサ Ionichrysa ギリシア語風で(黄金紫苑の知恵)を意味しています。
女冒険者のクシフィアは Xiphia ギリシア語風に(剣の乙女)という意味を込めてます。




