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 ヴヴ……ヴヴヴヴ……


 森の中の開けた広場。

 そこには夥しい数の死体が転がっていた。


「うわぁ、マジか……この音は死体に群がる蠅の羽音か……?」


 しかし、音源の蠅らしき姿は見当たらない。


「ん? あれ? この死体……子供……いや、なんだこれ!?」


 重なり合ってて分かり辛かったが、一体一体が妙に小さく、体型もずんぐりしていて最初は子供の様に見えた。

 だが、人間とは明らかに違う特徴がある。4本の腕と裏が透けるくらいの薄い羽根。


「これは人型の蜂か……や、蜂型の人かもしれない」


 蜂人間(?)の身体以外に散乱しているのは小さなバケツやらスコップとひしゃくの中間の様な見たことも無い道具。

 何かの作業をしてる最中に襲撃されたのだろうか?


 屈んで詳しく遺体を確認する。

 

 頭部にはふさふさの髪。額からは櫛の様な触覚が生えている。複眼は無く、人と同じような……や、人よりも遥かに愛らしい顔立ち。ここだけ見るとまるで妖精の様だ。

 首にはふさふさの毛が生え、絹のような手触りのチュニックを着ている。

 脚は人との違いは見られず、五本の指があり編み上げのサンダルを履いてた。

 特徴的なのは、腰から生えた袋……蜂でいう所の腹部。

 その先っぽは尖っていたが、蜂だったらある針は見当たらず、僅かに臍の緒の様な管がはみ出していた。


「……ミツバチは一度刺すと死んでしまうんだっけか……可愛そうに」


 見た目が愛らしい分、同情が湧いてしまう。


ヴヴヴ……ヴヴ……


 不意に近くから例の羽音が聞こえた。


 音に振り向くと、死体の山の中から一人(一匹?)の蜂人間がこちらを睨むように見ている。


「!? まだ生きてるのもいるのか!」


 オレは音を立てた蜂人間に近寄り、重なっている遺体を脇に置いて、生きてる個体を持ち上げた。


ヴヴヴ! ヴヴヴヴヴヴ!!


 蜂人間が威嚇する様に羽音を大きくする。

 すると、死体の山のあちこちから同じように羽音が鳴りだした。


 どうやら他にも生きてる個体が残ってそうだった。


 取り合えずオレは抱き上げた蜂人間を観察する。

 片方の触覚は折れかろうじてぶら下がっている状態。

 腕は一本しか残っておらず、足もひざ下から無くなっている。

 無残な状態だが……オレのギフトなら治せるかもしれない!


「なぁ、これからお前を治療しようと思う。初めて使う力なんで上手くいくか分からないが、失敗しても恨まないでくれよ」


 オレは刺激しない様に、勤めて優しく話かけた。こんなところを従妹に見られたら爆笑されていただろう。


 蜂人間は怯えたようにこちらを睨んでいる。


 オレはそっと蜂人間を地面に寝かせ、一緒に落ちていた足も近くに並べた。

 そして身体の前に手をかざし――――――


「治療!!」

 

 すると蜂人間の折れた触覚が逆再生する様に元に戻り、失っている手の傷が塞がり、千切れていた足は、傷一つ残さず接合された。

 

 蜂人間はキョトンとこちらを見上げ、それからゆっくりと飛び上がり自分の身体を確認し、ふたたびオレの方見た。

 そんな蜂人間に微笑んで見せ、すぐさま治療個所の確認をする。


 怪我してた部分は完璧に治っており、接合した足も問題無く動いてる様に見える。

 ただ、欠損してた三本の腕はそのままだった。


「ごめん、欠損再生は出来ないみたいだ。足はくっついたみたいだから、お前の手が見つかれば同じようにくっ付けられるかもしれないけど……」


「………」


 無表情でじっとオレを見つめていた蜂人間だったが、不意に踵を返し、飛び去って行く。

 家(巣?)にでも帰るのかと思ったら死体の山の上で止まり、ホバリングしながらこちらを見た。


「?」


 何を望んでるのか分からなかったが、見てても埒が明かないので近づいてみた。

 すると、足元にはまだ生きている蜂人間の別個体。


「こいつも治せってか? いいぜ、どうせ生きてる個体は全部助けるつもりだったからな」


 しかし、一体一体を治療して回るのは億劫だな……この死体の山全体に治癒の力を使ってみるか……

 

 オレは死体全体が見回せる位置まで下がり手をかざして祈った。


「治れ!!」


 特に何かが光ったりとかすることも無かったが、あちこちから羽音が響き始め、死体の山から何体かの蜂人間が這い出てきた。

 羽根の無事な者は飛び上がり、先に治療が済んでいた個体の方に集まりだす。

 羽根が千切れている者も歩いて集合する。

 治療できたのは凡そ10数体。思ったよりも生きてたが全体の20分の1にも満たない数だった……


 蜂人間たちは寄り添って触覚をつつき合わせている。声を出してるわけでは無いが、恐らく何らかのコミュニケーションを取っているのだろう。

 そんな蜂人間をぼんやり眺めてたら、不意に急激な眠気に襲われ、座る間もなく意識を手放してしまった。


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