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短いです。

 まだ第4層。

 オレたちは上への階段付近を縄張りとしている20人ほどの両生類型の種族に取り囲まれていた。

 この辺りは湿地の様になっていて、知性の無い虫型の魔獣や魚の魔獣、そして知性のあるイモリの様な人型の種族、トリトネリアが生息していた。


 槍を持ちこちらを囲むトリトネリアたち。オレは元より、イオニクリサやクラティア、ゾーイも人化しており人間の冒険者と間違われてる様だった。


「煩わしいですねぇ、手始めにこの者どもから駆逐しますか?」


「やめたげなさい」


 過激なことを言うゾーイを諫めておく。


「わしはクラティア、ここの隣を縄張りとしているアラフネじゃ。誰か話の分かる者はおらぬか?」


「クラティア様!?」

 

 取り囲むトリトネリアの人垣の奥から一人の男が声を上げた。

 顔に大きな傷のある隻眼の大男が前に出てきた。勇猛そうな戦士の風貌をした男だが、その左腕と尻尾は欠けていた。


「おお! ビザリニルトではないか! 生きて負ったか!」


 ビザリニルトと呼ばれた戦士が一礼をする。


「なんとか生き恥をさらしております。クラティア様もよくぞご無事で……」


「こちらの当分殿に救うてもらったのじゃ、この方が居らねば死んでいたじゃろうて」


「っ!? く、クラティア様ほどの使い手でもですか!?」


 驚いてる。このビザリニルトと言う人はクラティアと一戦交えたことがあるもかもしれない。

 第5層でゾーイとの喧嘩を見ているので、三人の女傑どもの強さはよく知っている。

 知ってるので、クラティアと戦って生き残ってるビザリニルトも相当の手練れだと言事が分かった。

 しかし、トリトネリアもかなり手酷くやられたことが、彼らの姿かたちで伺える。

 怪我をしてない者は誰一人おらず、しかも全員どこかしらが欠損していた。

 むしろ、よくこれだけの数が生き残れたものだ。


「多勢に無勢じゃったなぁ……まぁ、それより、当分殿」


 呼ばれるオレ。言われずともやる気はあったので、さっさと取り囲んでいるトリトネリアを治療した。



「おお……まさかこの様な……」


 ビザリニルトは絞り出すように感嘆の声を上げた。顔の傷や隻眼まで治ってしまっているので、厳つさが減りどこか愛嬌まである。


 あとで怒られないだろうか?


「え~と……あ、自分は寿崎当分と言います。ここに来れていない怪我人や病人が居たら案内してください」 



◇◇◇

 祭りの会場。

 質素だが、心のこもったお手製の椅子に座らされてるオレ。

 ビザリニルトの案内で集落を治療して回った結果だった。

 目の前には沢山の料理や酒、トリトネリアたちは地べたに敷物を敷いて思い思いに座っているので、この椅子だけ異常に浮いていた。


「我らが救世主寿崎様に乾杯!!」

 

 ビザリニルトの音頭で一斉に上がる杯。

 なんだかんだで100人くらい治療したので物凄い熱量だった。

 襲撃からそれなりに時間が経っていたのにこれだけの数が生きていたのはトリトネリア種族という種族がもともと高い自然治癒力をもっていたからだった。

 とは言っても、欠損部位で再生するのは尻尾くらいで、手足は欠けたらそのままらしい。

 まぁ、オレの治癒能力でそれらも復活しているが。


 トリトネリアが盛り上がる中、オレも酒を飲み、食べ物を喰らう。

 実は、この世界に来て初めて味わう調理された食べ物だったりする。

 これまではメリアスの蜜だけで過ごしていたのだ。

 まぁ、あれはあれで良い物なのだが、飽食の日本人たるオレには少し物足りなかった。

 

「魚喰うの久しぶりだぁ」


 と塩焼きの魚を口にしたら涙がこぼれた。

 鱒系の川魚の様だが、臭みは無く非常に美味い。

 目の前に並んだ料理は、魚の他に野菜や果物と見るも悍ましい虫、虫、虫。

 虫を食う勇気は無いので、魚に手が伸びるのは必定だろう。

 

「のう、主殿?」


「ん?」

 

 オレの隣に立っていたイオニクリサ話しかけてきた。

 彼女は食性が合わないのか、食事には手を出さず酒だけを飲んでいる。


「子蜂たちや妾の時は欠損部位の再生はその部位が無ければ出来なかったであろう? だが、クラティアやトリトネリアの時は無くても再生出来たのはなぜなのかのう? 主殿は何か知っておるのか?」


 確かに、メリアスの時は欠けた部位が必要だった。

 だが、なぜなのかは知らない。この世界にオレを放り出したあの不親切な連中に聞いてところで教えてくれないだろう……と言うか、あの連中でも分からないんじゃ無かろうか?

 小役人っぽかったし。


「それは部位が現生に残っていたからでは無いでしょうか?」


 返事をしようとしたところへ、背後のゾーイが割り込んできた。


「残ってると再生できない? なんで?」


「当分様の力は神の奇跡の類です。恐らく残った部位からでも再生出来てしまうのではないでしょうか?」


「?」


 ゾーイが何を言ってるのか分からない。いや、言ってる事は分かるが言わんとしてる事が分らない。


「つまり、腕の千切れた人とその千切れた腕に別々に再生をかけたら、両方再生して一人が二人になってしまうかもしれないという事です」


「ああ、なるほど、プラナリアか……それは怖いな。そうならない為の制約か……」


「恐らく」


「それではメリアス特有のことではないということだな?」


 とイオニクリサ。

 どうやら種族的特徴なのかと心配していたらしい。

 まぁ、メリアスだけ欠損部位が要るとなったら不利だしなぁ。


「寿崎様! 今しがたクラティア様に伺ったのですが、これから地上に覇権を唱えると言う話、ぜひ我らトリトネリアも参列することをお許し願いたい!!」


 突然ビザリニルトが目の前に跪いてきた。

 見ると少し顔が赤い。さては酔ってるな?


「あ、いや―――」


「良く言った湖沼の戦士よ!! 我が王は寛大なお方!! 貴様らの忠心にきっと報いるであろう!!」


 我が王?

 クラティアさん、そんな酒瓶片手になに言ってるの?


「「「「感謝します我が王よ!!!」」」」


 怒号の様に鳴り響くトリトネリアの声。



 なにやら引っ込みがつかない事態に追い込まれてるような…… 

  


説明は最低限にしたいのですが、流石にあれこれ説明不足かも( ̄▽ ̄;)

いずれ閑話で補足でもしようかと思います。

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