二人目
アリスにはうさぎが言った言葉を受け入れることができませんでした。それはそのはずです。突然デスゲームが始まってしまったのですから。そんなアリスを見かねてか、ある提案をしました。
「せっかくですから、この国を御案内いたします。」
うさぎは歩きだした。アリスは仕方がなくうさぎについて行きました。
「この庭には沢山の白いバラが咲いています。」
そこには沢山の赤いバラが所せましと咲いていました。
「白いバラ?ここに咲いているのは赤いバラよ。」
「いいえ、このバラは物語の中で赤く塗られただけで元は白いバラなのです。」
うさぎはバラを一本摘むと、バラを近くの川に沈めました。すると、さっきまで真っ赤だったバラの色が落ち、白くなっていました。
「ほんとね。このバラ貰っても?」
「はい、大丈夫ですよ」
アリスは嬉しそうにバラを空に掲げました。その時、後ろから何者かに襲いかかりました。
「ちょ、なに!?」
アリスはあっという間に何者かに押し倒されてしまいました。
「説明が省けて良かったです。こちらの方が貴方の倒すべき『アリス』様のお一人になります。」
「久しぶりだね。アリスちゃん。ねぇ、なんで私をおいて行ったの?」
アリスの目の前にはあの時の女の子がいました。女の子はアリスにナイフを突き付けながらこう言いました。
「アリスちゃん、私も『アリス』になったの。アリス同士仲良くしたいけど、無理そうだね。だって生き残れるのは七人中一人だけなんだよ。だからアリスちゃん、私のために死んで?」
「話長い。」
アリスは女の子が動き出す前に『アリス』の目に白いバラの茎を刺しました。『アリス』は目をおさえてもだ苦しみだしました。その時白いバラは赤く染まってしまいました。
「あのね、こういうのは早く殺らないと。お勧めは目。目なら強い武器がなくても簡単に敵を無効化出来るから。」
アリスは『アリス』の持っていたナイフを奪い取ると『アリス』の足を刺しました。何度も、何度も繰り返し同じところを刺しました。
「んー、このナイフだと切り落とすことは出来ないかな。」
アリスは這って逃げようとする『アリス』の足をもう一度刺し、腕を刺しました。
「ねぇ、うさぎ。これって完全に殺さないとだめ?」
「はい。ですが、生かすも殺すも貴方様の自由です。何があっても貴方様の責任ですので。」
アリスはうさぎの話を聞いて少し考えるそぶりをみせました。
「ねぇ、あなたは生きたい?」
アリスは『アリス』に問いかけました。『アリス』は首を縦に振りました。
「分かった。いいよ。元友達のよしみで助けてあげる。うさぎ、車いすとかある?」
「はい、ありますよ。」
うさぎが手をたたくと突然目の前に車いすが現れました。うさぎはその車いすに女の子を乗せ、固定しました。女の子の目は虚ろでピクリとも動きません。生きているのかも怪しいほどです。そんな女の子を乗せた車いすを押しながらアリスとうさぎは歩きだしました。
「あーあ、赤くなっちゃった。」
アリスは赤く染まったバラをいつの間にか茜色に染まった空に掲げ、赤いバラを捨てました。
「私、赤色嫌いなんだよね」