一人目
ある小さな町に『アリス』というやんちゃでお茶目な女の子がいました。アリスはいつも町の人にいたずらをしては怒られていました。そんなある日、アリスは今日もいたずらを仕掛けようと模索していました。そしてアリスは思いついたのです。
「町の子供を一人行方不明者に仕立て上げて町中をパニックに陥れよう。」
アリスは早速計画を立て、巧みな話術で町の女の子を一人森の奥において来たのです。アリスは森を出る直前、急に走りだし息を切らしながら町の大人に駆け寄り言うのです。
「森の中に狼がいた。私は逃げるのに必死で一緒にいた子と逸れてしまったの!」
アリスは演技が上手でした。大人達はアリスの演技に騙され、狩り用の銃を持ち急いで森の中に入ってい行きました。アリスは家に帰され、母親の作った暖かいスープを飲みながらほくそ笑むのです。そしてまた考えるのです。次のいたずらを。おいて来た女の子が本当に行方不明になってしまったことを知らないまま。
アリスがそれを知ったのは次の日でした。
「アリス、昨日森のどこら辺を歩いていたんだい?」
町の大人が朝早くにアリス宅を訪ねてきました。
「えっと、少し奥の花畑までよ。なにかあったの?」
「昨日自分で言ったじゃないか、狼がでたと。アリスと一緒だった女の子がまだ見つかっていないんだ!」
アリスは驚愕しました。アリスはここまで大事になると思いませんでした。流石のアリスもこれには罪悪感を感じずには居られませんでした。アリスは大人達を押しのけ、森へと走りました。後ろからはアリスを止める声が聞こえてきましたが、アリスは止まりませんでした。アリスは森へ入り、女の子を探しました。アリスは女の子の名前を呼びながら森中を走り回りました。
「こっちだよ。」
どこからか男の子の声が聞こえてきました。アリスは驚き、振り向きました。だけど何処にも人の姿はおろか、影すら見えません。
「どこ、?」
アリスは問いかけましたが、返事は返ってきませんでした。アリスは怒りました。呼んでおいて姿を見せないなど失礼だ、と。アリスは怒りにまかせて森の奥へと進んで行きました。
「きゃぁぁぁ!」
アリスは穴に気がつかずそのまま落ちてしまいました。その穴はとても深く、アリスは穴の中を滑り落ちていきました。
「いったぁーい!なんなの、この穴!深すぎでしょ。」
アリスはようやく穴の底まで辿り着きました。アリスは文句を垂れながらもスカートについた泥を払い落しました。
「よくおいでくださいました。アリス様。」
アリスが顔を上げると目の前には謎の男の子が深々と頭を下げていました。
「貴方はだれ?なんで私の名前を知っているの?」
アリスは不審者を見るような目つきで男の子に問いかけました。
「申し遅れました。私は、そうですね。うさぎとでもお呼びください。」
男の子は自分を『うさぎ』と名乗りました。うさぎは見た目こそ10歳くらいの男の子ですが喋り方は年上の人と話している様でした。
「私は貴方様のここでの生活をサポートさせていただきます。」
「生活?私はここで生活する気は一切ないけど。私、早く家に帰って暖かいホットミルクを飲むの。」
アリスは女の子のことなど忘れてしまっていました。アリスは落ちてきた穴を見上げ、上へ戻る方法を考えました。
「いいえ、貴方様にはここで生活していただきます。七人目のアリスとして。」
アリスはうさぎの言葉に引っかかり、うさぎに向きなおりました。
「七人の私?おかしなこと言わないで。私は私1人よ。」
アリスは馬鹿にしたように言いました。
「いいえ、貴方様が七人居るということではありません。『アリス』と言う方が貴方様含め七人居るのです。」
「へぇ、そうなのね。でも私がここで生活することとそれは関係ないはずよ。」
アリスは話が見えない、とでも言うように顔を傾けた。
「いいえ、関係大有りです。ここにはアリスが七人います。ですがこの世界にアリスは七人も要りません。」
うさぎは手をたたきました。その瞬間、暗かった穴の中が視界が開け、明るくなりました。土の天井だと思っていたところが、広く何処までも広がる青空となり、さっきまで土だった地面が青々とした芝生が広がっていました。
「なに、ここ、」
突然のことにアリスは驚き、後づ去りました。アリスは気が付いてしまいました。アリスの落ちてきた穴が消えてしまったことに。アリスは絶望しました。帰り道が消えたことに。
「貴方様にはこの『終わりの国』で殺し合いをしていただきます。最後の一人になるまで。」
「えっ、、」
うさぎはアリスの戸惑いを気にすることなく、そのまま続ける。
「この国は『不思議の国のアリス』と言う物語が終わった後の世界です。だけど物語は繰り返します。そして、次の主人公を決めるために、『アリス』同士で殺し合っていただくのです。」
こうして、この『終わりの国』での『アリス』達による『アリス』殺しが始まるのでした。