勇者アリス・サイファー
レビュー、感想頂けるとありがたの極みです!
「あら、タイミングが合わなかったかしら」
フュートレックが首をかしげて尋ねる。
「いや、そういう訳じゃないんだが」
「じゃあ良いじゃない」
「……」
アスフェンがそっぽを向く。
「あ、あの、もしかして妖精女王のフュートレック様ですか!?」
若い女の子達がフュートレックの周りに集まる。
「ほんもの始めてみた……」
「僕もです……」
ケラスターゼとアダマスが唖然とする。
「若い子ども達がいっぱいね、こっちまで若くなれちゃいそう」
フュートレックが微笑む。
しかしすぐに真顔に戻る。
「アスフェン、話があるの。それも重要な」
アスフェンが溜め息をつく。
「わかった。スタイル・ワンに行こう。こんなとこで話せる内容じゃないんだろ?」
⭐⭐⭐
テーブル席に座ったケラスターゼとレグルスがカウンター席で会話しているアスフェンとフュートレックをジーッと見つめる。
「なんの話してるんだろ」
「結婚とか?」
「まさか、なにか事件が起こったんでしょ」
ケラスターゼがレグルスを見る。
「そういえばレグルスはコールレートでなにしてたの?」
レグルスが怪訝な顔で尋ねる。
「なにって、村を助けて欲しいという旨を……」
「ホントに?」
「え?」
「コールレートはここからめちゃくちゃ遠いのよ。あの村からコールレートまでもまあまあ遠いし」
「……」
「アスフェンが居るところで言ったらとんでもないことになるわよ、秘密にしといたげるから」
ケラスターゼがウインクする。
レグルスが深い溜め息をつく。
「実を言うと私は逃避行を繰り返しています」
「誰から?」
「ボルギリッド領主からです」
「うっそ、そんなとこから逃げ出してきたの?」
ケラスターゼが驚く。
ボルギリッド領主はオーディナリーを含む四つの街からなる領地を治める権力者だ。
世界的に撤廃の動きが進んでいる奴隷制を進んで取り入れている。
あまり良い噂を聞かない人間だ。
「アスフェンがこの事聞いたらどうなるか……」
ケラスターゼが苦笑いしながらアスフェンを見る。
アスフェンがこちらを睨んでいる。
「なんか言ったか?」
ケラスターゼとレグルスが慌てて首を振る。
「とにかく絶対バレないようにしなきゃ」
「はい」
一方、アスフェンたちは。
「ブリエッタは元気?」
「ピンピンしてるよ」
「そう、後で挨拶に行かなきゃ」
「おい、要件はなんだよ」
「二つの大きな勢力が魔王の封印を解こうと画策している」
「……は?」
「一つは私たちが破った魔王軍幹部や『十人星輝将』の子息や副官たち。もう一つは『並なる均一世界』と呼ばれる組織よ。私が調査した限り、幹部クラスは少数。ざっと三、四人。『十人星輝将』より少し弱いぐらいね」
「デュラハンのとこのガキは倒したぞ」
「あなたとブリエッタを狙ったのかしら」
「多分な」
「このまま、魔王が復活すれば……」
「またあんな胸糞悪いことが起きるってか?」
「恐らくね。それに、あなたが連れてる二人」
フュートレックがケラスターゼとレグルスを顎で示す。
「あの子達に私たちがやったことを受け継いで行って欲しい」
「あいつらに魔王討伐を?」
フュートレックが頷く。
「いつまでも私たちがやるわけにはいかないでしょ。とくに人間のあなたたちは衰えがある」
「お前は老いてますますだしな」
「でもあの二人、いやケラスターゼの取り巻きもいるな……だけじゃ魔王どころか『十人星輝将』すら倒せないだろ」
「そこが問題なのよ。私たちが手助けするのは……」
そのとき、スタイル・ワンの扉が勢いよく開かれる。
金髪の女が立っている。
「あら、元気良いわね」
フュートレックが微笑む。
「なんだ、この運の悪さ……!」
アスフェンが震える。
金髪の女が高らかに言う。
「私は勇者アリス・サイファー、魔王を倒し、この世に平和をもたらす者だ!」
毎度短くてごめんなさい