穏やかな日常……?
やっとこさ完結だ
小鳥囀ずる穏やかな昼下がり。
「う、うう……」
ケラスターゼが目を覚ます。
「ふえあ~、なんかやな夢見たな……」
ケラスターゼがあくびをしながら起き上がる。
「あれ、ここ『スタイル・ワン』の寮じゃん。何で?オベリスクに行ってたのに」
ケラスターゼが扉を開いて登録所に向かう。
その足でbar『テルヴィング』のスツールに座る。
「とびきりシャキッとするやつもらえる?頭がボワボワしてて……」
ケラスターゼがエリトリアに頼むと同時にエリトリアが振り返って絶叫する。
「ケラスターゼさん~!」
「ひっ、何よ急に!」
ケラスターゼが驚いてスツールから落っこちる。
「よ、良かった~」
エリトリアが涙を流す。
『スタイル・ワン』の扉が勢い良く開いてアダマスとウォミェイが駆け込んでくる。
「魂が!戻ってきた!」
「心配かけさせやがって、バカヤロウ!」
二人も涙を流してケラスターゼに抱きつく。
騒ぎを聞き付けて集まってきた人々もケラスターゼに気付くと、嬉し涙を流して狂喜乱舞する。
「戻ってきた!」
「おめでとさん!」
「ケラスターゼの姉ちゃんが生き返った!」
ケラスターゼはもう何がなんだか分からない。
まるで悪い夢でも見ている気分だ。
『……なにこれ』
良く見ると知らない冒険者が二人此方をまじまじと見つめていた。
『誰あれ知らん。やっぱり夢か』
「「ケラスターゼ!!」」
一際大きな声がケラスターゼの耳に飛び込んでくる。
「あ、レグルス!それにアリスも!ちょっと説明してよ、どうなって……うぐ」
アリスとレグルスがアダマス達を押し退けてケラスターゼに抱きつく。
「良かった……!」
「どんだけ……心配したと……!」
「ちょ、説明してよ!」
ケラスターゼが目を白黒させる。
アスフェンとブリエッタが駆け込んでくる。
「マジかマジか!」
「ホントに戻ってきた……」
ブリエッタが大笑いしてアスフェンの背中をバシバシ叩く。
「あ、アスフェンとブリエッタさんも……って腕どうしたんですか?」
ケラスターゼがブリエッタの腕に気がつく。
「これは……後で話す」
ブリエッタが苦笑いする。
ここで言うには少々重すぎるだろう。
「いっぱい話したい事があるんだよ」
アスフェンがbarを顎で示す。
「皆で話そうぜ」
⭐⭐⭐
アスフェンはことの顛末を包み隠さずケラスターゼに語った。
ケラスターゼが魔王に乗っ取られたこと、カンティーナ東部を半壊させたこと。フュートレックが死んだこと。
ケラスターゼの顔が曇る。
「私のせいで……」
「仕方ないさ、死人もまあ、少なかったし」
ブリエッタがフォローする。
「でも私、ブリエッタさんの腕を切り落としちゃったし」
「魔王がやったことなんだけどなあ」
ブリエッタが頭をかく。
「....私、旅に出ようかな」
ケラスターゼがポツリと呟く。
「え?」
「たくさん迷惑かけたし、罪滅ぼしじゃないけど、困ってる人を助けて助けて助けまくる。私が生きてていいって思えるまでずっと助け続けたい」
アスフェンが頷く。
「好きにしてくれ。レグルスはチュンチュンのところへ行くし、アリスもアンデラートの教員になるらしいぞ。俺もこの街で好きに生きていく。己を縛るのは己だけで良い」
そんなことを言っていると、イザベラとベルフェゴールが呼びに来た。
「宴の準備が出来たぞ!」
「今日は全部忘れて飲み明かせ!」
アスフェン達が立ち上がる。
外からバルクとパンタロンがばか騒ぎしている声が聴こえてくる。
『まさか魔王を二回も倒すことになるなんてな。何はともあれ、これで俺の穏やかな日常が帰ってくるぅ~!』
皆がアスフェン達を温かく迎え入れる。
⭐⭐⭐
十五年後、皆はそれぞれの生活を送っていた。
宴のあと、ケラスターゼは言っていた通り旅に出た。
彼女は生涯人々を助け続け、いつしかアスフェンと同じ英雄と呼ばれるようになったが、それはまた別の話である。
レグルスもチュンチュンの城で仲良く暮らしているようだ。
アリスも教員として優秀な冒険者の育成に励んでいるようだ。
パンタロンと結婚したらしいが、噂に過ぎない。
アスフェンはというと……。
「げっ、お前らまた来たのか」
アスフェンが嫌そうな顔をする。
「ふん、今日こそお前を倒して英雄になってやる!」
別の女冒険者に絡まれていた。
『あの時と全く同じだな』
アスフェンがニヤッと笑う。
「英雄になるなら俺じゃなくてケラスターゼを倒さなきゃな」
そう言ってまた歩きだす。
「あんたを倒すことに意味があるんだよぉ~!」
彼の穏やかな生活はまた必要以上に煩わしくなるようだ。
この度完結を迎えることが出来ました。
アスフェンたちの戦いを読んでくださった方々に感謝します。




