戦況反転
「虎」
魔王が斬撃を放つ。
アスフェンとブリエッタが縦横無尽に駆け回って斬撃を避ける。
『こいつら、俺の斬撃が視認できているのか?だとすれば十五年前に戦った勇者どもの子孫の可能性があるな。俺の斬撃を見切ることが出来たのは奴らだけだった。そいつらの子孫ならば納得はできる。カマルめ、不安材料を排除せずに何をしておったのだ』
魔王がアスフェンに殴りかかる。
アスフェンが完璧に受け止める。
『体術においても的確な防御で俺の攻撃を受け止め、そこから反撃に転じる余裕さえある。あの勇者どもが俺の戦いを一言一句違わずに伝えてもどこかでボロは出るだろう。今のところこの俺と互角だ。それにこの二人、妙に歳をくっている。それでいてこの動き。まさか……!』
魔王が高笑いする。
「フハハハハ!そうか、お前らか!十五年前に俺を打ち倒した勇者どもは!」
「気付いたみたいだな」
「こいつ、あげてくるぞ」
アスフェンとブリエッタが警戒する。
「これはこれはとんだ失礼を、勇者ご一行様。遊びはこれで終わりにしよう。何もかもかなぐり捨てた最高の殺し合いを」
魔王がスピードをあげる。
「速い!」
「ちっ!」
『昔の俺を褒めてやりたいよ』
アスフェンが魔王を引き付ける。
ブリエッタが後ろから仕掛けるが、魔王は難なく片腕で受け止める。
「残念賞だ」
魔王が斬撃を放つ。
掴まれた腕が切断される。
血が溢れだす。
「そうかな?」
ブリエッタが残された腕で渾身の一打を繰り出す。
拳が魔王の脇腹にめり込む。
「ぐっ……!」
魔王が呻き声をあげる。
蒼い閃光が炸裂する。
『蒼蒼!』
魔王がぶっ飛んで建物に叩きつけられる。
『片腕を失ってなお、蒼蒼を決めた!痛みに怯まない人間など、いてたまるか』
魔王が立ち上がりながらペッと血を吐き出す。
「今のは堪えたぞ、さっきの二人は目に焼き付けただろうな」
魔王がバルクとチュンチュンの方をチラ見する。
二人は情けなくひっくり返っている。
「……まあいい。続きを始めようか」
アスフェンが尋ねる。
「まだいけるか?」
ブリエッタが余裕綽々で答える。
「おう、余裕だぜ!」
『片腕がやられたのは痛すぎる。もう無理はさせられない』
アスフェンがブリエッタの腕を見る。
レグルス達はただ見ているだけしかできない。
割り込めば死に至る。
その確信が全員の脚をすくませる。




