炎と氷(2)
レイピアをたった一振。
それだけで大聖堂を埋め尽くすほどの氷が発生する。
『攻撃範囲バグってるでしょ!剥き出しの左腕が冷える~』
アリスも負けじと剣を振る。
炎が氷を溶かし尽くす。
聖堂の床がびしょ濡れになる。
『身体強化魔法がスキルにも適応されてる。私の『絶対高温』がこいつと張り合えるぐらいに底上げされてるんだ』
「炎天斬!」
アリスがカマルの間合いに入り込む。
「鈍い」
カマルがアリスの剣を弾く。
「お前の真似をしてやろう、『氷之輪舞曲』」
全てを凍らせる冷気が輪となってアリスに襲いかかる。
「くっ」
アリスが後ろに飛び退く。
カマルが追従する。
大聖堂の中を赤と青の軌跡が駆け巡る。
「スピードだけはいっちょまえだな」
カマルがアリスと打ち合う。
「褒めるところはそこだけかしら!」
アリスが技を繰り出す。
「陽炎放蕩」
緩急のある剣戟をカマルが見極める。
『太刀筋が読みにくい……二本、三本と増えていく』
カマルの後ろにも炎がゆらめきだす。
『やはりこいつは……』
カマルが床を浸す水を氷に変化させてアリスを攻撃する。
『マジか、こいつやけくそになったか』
氷を切り裂きながら後ろに跳びすさる。
ありとあらゆる方向から氷が迫る。
「鑪!」
炎が床を嘗める。
「水を蒸発させたか……だが、それは悪手だなぁ!」
カマルが飛び上がる。
アリスが警戒する。
カマルが水蒸気を凍らせて氷柱を造り出す。
「アイスフォール!」
氷柱がアリスの元に降り注ぐ。
「うおお!」
アリスが気合いで全部弾く。
「気炎万丈!」
今度はアリスが飛び上がってカマルに斬りかかる。
「ふん」
カマルが水蒸気を凍らせて足場を造って回避する。
足場は炎の熱ですぐに溶けてしまう。
「はあああああ!」
アリスが剣を振り下ろす。
剣の切っ先がカマルの胸をかする。
「私はかつて炎を使う転生者と戦ったことがある。十五年ほど前だな」
カマルがレイピアを構える。
『突きが来る』
アリスが防御の構えをとる。
アリスは何も見えていなかったのだ。
カマルのレイピアは既にアリスの心臓を貫いていた。
「奴の姿がお前に重なる。娘かどうかは知らんが、そいつがつけた傷は今も俺を焼き続けている。この恨み、今晴らさせてもらったぞ」
「あ、か……」
アリスが下に落ちていく。
身体が凍り付いていく。
『炎を使う転生者としては弱かった……いや、あんなもの、そうそう生まれてなるものか』
カマルが氷像と化したアリスを見下ろす。
『お前は成れなかったようだな、《爆炎の権化ノリオ・アヤメヤ》に』




