恋は盲目level100
「……え?」
一同が困惑する。
「なにか質問が?」
パンタロンが首をかしげる。
「いやいや、どうして国王の弟が特殊作戦部隊にいるんですか!そもそも言っちゃいけないこといっぱい言ってますよ!」
ユスナが慌てる。
しかしパンタロンが大口を開けて笑う。
「ハッハッハ!お前らが誰かなんてとっくに調べてる。歓迎するぜ、英雄」
パンタロンがアスフェンに手を差し出す。
「そんなことまで知ってるのか……」
アスフェンが手を握る。
アリス以外は状況が掴めないようだ。
「こんなところで立ち話もなんだ、指揮所で話そうや。案内するぜ」
⭐⭐⭐
「ほーん、お前達も『並なる均一世界』についての情報は知っていたわけだ。それにアスフェンとアリスはそいつらとの交戦経験がある」
アスフェン達はアンデラートの中にある指揮所の円卓に座っていた。
「幹部は多分全員倒した、もしくは倒されたと思う」
「あのケラスターゼとか言う姉ちゃんがぶっ倒した魔人が二名、アスフェンが一名か。アジトの場所は?」
「そこは掴んでない。フュートレックから情報を受け取る手筈になってたんだが……」
「……フュートレックだと?」
パンタロンが険しい表情をする。
「妖精女王と知り合いなのか……?」
バーミックスが唖然とする。
この妙に歳食った新入生、凄い経歴を持っているらしい。
「何で『並なる均一世界』の調査が極秘でされてるか分かるか?それも凄腕の『特殊作戦部隊』に」
パンタロンが尋ねる。
「なにか知られては不味いことがあるから?それとも団体の思想が危険だとか……」
ユスナが思い付いたことを口にする。
パンタロンが頷く。
「ま、及第点と言ったところだな」
パンタロンが立ち上がる。
「思想だけなら問題ない、荒唐無稽な思想だからな。問題はそれを誰が提唱しているかだ」
「そんなにヤバイやつか?」
「ヤバイなんてもんじゃない。そいつじゃなけりゃ『並なる均一世界』なんてとっくに潰してる」
「……世界に多大な影響を持つやつか……」
『そもそもの話、何でフュートレックは俺に『並なる均一世界』のことを話したんだ?そんな地下組織があることを知れたのなら、その組織を追っている『特殊作戦部隊』の存在に気付いていたはずだ。あの時、クーティという魔人を倒したあとにフュートレックは『オーディナリー』にやって来た。タイミングを見計らったかのように。他にも思い当たる節はある。まさかとは思うが……』
「……フュートレックか?」
アスフェンの一言に指揮所に緊張が走る。
「まさか!」
「世界最高の魔術師が?」
「そりゃ下手に動けないわけね」
パンタロンが頷く。
「『並なる均一世界』を潰そうとしたら絶対にフュートレックと戦うことになる。そんなことになったら世界がいくつあっても足らねえし、非現実的だ。だから俺達は慎重に戦力を削っていく算段を立てていたんだが……」
「色々あって私の計画はおじゃんになっちゃったわ」
風か吹き荒ぶ。
「お、お前は!」
パンタロンが携帯武器を構える。
「どう言うことだ、フュートレック」
アスフェンが肉包丁を握る。
アリスも剣を抜く。
「ごめんなさい、『並なる均一世界』は私が作った組織よ」
「やっぱりか」
「ええ、魔王を利用して全てが平らな世界を作ることを目標に掲げてやって来た。でもその目標を達成するための最重要なピースは失われてしまった」
「何でそんなことしようとしたんだ」
「……好きだから」
フュートレックが呟く。
「なに?」
「あなたの事が大好きだから」
アスフェンが唖然とする。
「お前の部下の魔人のせいで仲間が死にかけたんだぞ、冗談はよせ」
フュートレックがアスフェンに抱きつく。
「あなたには真実しか伝えてないわ。あなたは変わってしまった。自分の心を深淵に沈めてしまった。魔王を倒し、世界を救った私の英雄は暗く、うだつの上がらない男に変わった。私が恋い焦がれたのは自信と力に溢れ、仲間想いの英雄よ。あの時のあなたよ」
フュートレックの締め付けが強くなっていく。
「あなたと一緒に平らな世界を見てみたかったのよ。私の遊びに付き合ってくれるのはあなたしかいないと思ったの」
「歪んでやがる」
パンタロンが吐き捨てる。
フュートレックが睨む。
「貴様に何がわかる」
「分かるさ、一人の男を振り向かせるために男の大切な仲間を傷つけたんだろ?大切な男が大切にしているものを壊しておいてそれはないぜ」
「貴様……言わせておけばぬけぬけと……!」
「それは愛とは言えないぜ、お前がアスフェンにかけた呪いだよ」
フュートレックが魔力を解放する。
窓と壁が吹き飛び、吹きっさらしになる。
「お前はアスフェンを一つも知らない!怒った顔も笑った顔も泣いた顔も!私のアスフェンが好きなものは全部全部全部私だけが知ってる!」
パンタロン達が思わず後ずさりする。
「おい、アリス!」
「精々死なないようにするわ!」
二人が戦闘態勢に移行する。
「ねえ、アスフェン。これからどうする?あなたが好きだったもの全部用意してあげるわ。二人の新しい旅立ちのパーティーをしましょ」
「ブリエッタは呼ぶのか?」
アスフェンが一言尋ねる。
フュートレックの表情が固くなる。
「駄目よ、私達の蜜月を邪魔するものは許されないわ」
「じゃあ……」
アスフェンがフュートレックを突き飛ばす。
「お前一人でやってろよ。俺はお前を殺す」




