謎の男、パンタロン
アンデラートに戻ったアスフェン達は多数の避難民を見て驚きを隠せなかった。
「よく、避難が間に合ったな……」
「危機意識を普段から高める訓練をおこなっていますから」
バーミックスとユスナが歩いてくる。
「お前達、あの魔人どもについて何か知ってるか?」
アスフェンが首をふる。
「俺達は郊外の城に行っていた。まあ、いざこざはあったが……」
「レグルスとケラスターゼは?」
「レグルスは連れ去られた。ケラスターゼは……知らん」
「知らん?」
「人格が変わってから何処かへ行ってしまった」
バーミックスがため息をつく。
「嘘つくのはよくないぜ、ここから魔人の戦いは観測できた。全滅しちまったが偵察部隊からの情報も上がってきてる。『ケラスターゼらしき人物が魔人、黒い未確認生物と交戦している』ってな」
「暴走したのかしら?なにか力を押さえていたとか……」
ユスナが尋ねる。
「いいえ、いたって普通の冒険者。まあ、A級はあったと思うけど……」
「あの、あのお姉ちゃんは!」
チュンチュンがアリスの手をぎゅっと握って声を振り絞る。
「もうあのお姉ちゃんじゃないの……」
ユスナがしゃがんでチュンチュンに目線を合わせる。
「それはどう言うことなのかな?」
「私は吸血鬼なの、あ!悪い吸血鬼じゃないよ!」
「あなたの目を見れば分かるわ」
「それでね、私は良い魔族だからね、魔王様の気配を感じたんだよ」
ユスナとバーミックスとアリスが驚く。
「ま、魔王!?」
「おいおい、なんだって人間が魔王になるんだよ……」
「うっそ、信じられない」
「ほんとだよ!魔王様のスキルに『相伝』って言うのがあるんだけど……」
「そいつが発動したって言うのか?」
アスフェンが尋ねる。
「た、多分……」
チュンチュンが肩を落とす。
魔族としては主の復活を喜ぶべきなのであろう。
しかし、失ったものが多いチュンチュンには無理だった。
いま自分が出来ること、自分にしか出来ないことをやろうと決心する。
「まず、レグルスを助けないと」
「そうね、あの子どこ行ったのかしら」
「『並なる均一世界』って聞いたことあるか?」
「なんだそれ」
「聞いたこと無いわ」
バーミックスとユスナが首をふる。
「そりゃそうだろう!」
大きな声が響く。
声の主は黒い装甲服に身を包んでいる。
「そいつは俺達『特殊作戦部隊』が極秘に調査してる代物だからな」
髭を生やしたガタイの良いおっちゃんが白い歯を覗かせて言う。
「あ、あなたは……」
バーミックスとユスナが後ずさりする。
「ん?俺はパンタロン・グリムフォルム、国王の弟さ、ハハハッ!」




