カンティーナ事変(9)
なにかがぶつかる音が響き渡る。
魔王の高笑いも響き渡る。
ビル郡が切り裂かれていく。
化け物と魔王が目にも止まらない攻防を繰り広げる。
二人がビルに突っ込む。
化け物がラッシュを繰り出す。
魔王がそれを受け止める。
あまりの衝撃にビルが崩れ出す。
魔王も攻撃の間を縫って斬撃を放つ。
ビルが完全に崩れる。
魔王が化け物を蹴り飛ばし、『虎』を放つ。
無数の斬撃が化け物をバラバラにする。
トドメと言わんばかりの斬撃が繰り出される。
「『龍』」
再生を始めた化け物の身体を、へばりついた建物ごと切断する。
「あの鐘の音は聞こえるのか……?」
魔王が信号機に座りながら待つ。
鐘の音が響き渡った。
巨大な塔がグラリと傾く。
化け物が塔を振り回し、魔王に向けてぶん投げる。
魔王は避けもせず飛んできた塔に指を向ける。
一瞬で塔が瓦礫に姿を変える。
瓦礫が降り注ぎ街に傷をつける。
瓦礫を足掛かりにして化け物が猛スピードで近付いていく。
魔王が『虎』で両断しようとしたが、表面に傷がつくだけだった。
『ん?』
魔王が眉をひそめる。
化け物が地面に突っ込み地面にクレーターができた。
魔王が隣のビルに飛び移って駆け上がる。
化け物も追う。
魔王がチラリと振り返る。
『どうしたものか、斬撃の効きが悪くなったようだ』
化け物が足元に迫る。
「フハハ!」
魔王が無数の斬撃を化け物に浴びせる。
化け物が下に落ちていく。
『あぁ、思い出した。サルプルモギの能力……!』
鐘の音が響き、化け物の傷が再生する。
魔王が不敵な笑みを浮かべる。
『こいつの能力は全事象の上書き!理不尽極まる最強の能力!』
化け物が飛び上がり魔王に手を伸ばす。
『倒し方はただ一つ……』
化け物が半透明な結界に包まれる。
ビル郡が一瞬で細切れにされる。
魔王が張った結界の中は彼自身の魔力で満たされている。
魔力を斬撃に変換し、化け物に絶え間なく浴びせる。
この技はクローバーがアスフェンに対して使った手の攻撃と原理は同じであるが、魔王の場合は結界を閉じずとも魔力で空間を満たすことができる。
長い歴史のなかで誰一人として成し得なかった神業、それを成し得た元人間。
それこそが魔王が魔王足る所以である。
しかし、今回は『虎』と『龍』が実質無効化されていること、魔王の仮初の肉体の強度等を鑑みて結界を閉じる判断を下した。
いま化け物に『虎』『龍』そして新たに『亀』と『蛇』の四種の斬撃が浴びせられている。
この化け物の唯一の破り方、初見の技にて上書きされる前に屠る。
しかし、無情に鐘は鳴り響く。
化け物、サルプルモギの再生が終わろうとしていた。
化け物が魔王の方に歩いていく。
周りを飛び交う瓦礫が赤く光って熔け出す。
魔王から膨大な熱が放たれている。
弓の如く構え、焔を引く。
「『朱雀』」
焔の矢がはぜる。
全てが灰になる。
火柱が立ち上る。
それもヨアンの時とは比べ物にならない程の火柱が。
この攻撃によってカンティーナ東部の半分が更地になった。
あの化け物は塵一つ残さず消え去った。
「さて、終わったな」
魔王が飛行魔法で飛び上がる。
そのままかつての居城に飛んで行く。
『肉体を再構築せねばな、身体が壊れかけた。復元魔法が使用できなかったら死んでいたな』




